この物語は
フィクションであり、登場人物等他
実在するものと一切関係ありません。
身勝手な選択【54】
南の奴、ドジを踏みやがって、アシがついたらどうするんだ
否、もう警察は南に目をつけているのか?何故なんだ
橋本は二人の刑事が去った後、不安な思いを抱きながら病棟に
戻った。
ナースステーションに入るなり
『橋本先生、お電話です』と声がかかった。
「誰から?」
『総合案内からです』
「またかよ」
「はい、整形、橋本」
先生、またお客様です。女性の方です
「わかった、すぐ行く」
橋本が総合案内まで行くと、確かに女性が立っていた。しかし、男
と一緒だった。
女の方は、スラーとして目鼻立ちの整った綺麗な女、男は大柄で四
角い顔をして眼鏡をかけている。
こんな女性に見覚えは無いが、と考えながら
「整形の橋本ですが」と声をかけた。
その女は肩にかけられていたショルダーバッグから警察手帳を取り出
し示し
『和歌山県警新宮警察署の高杉と言います。こちらは石垣です』と名乗
った。
和歌山の警察?この女か、歯科を中心にかぎまわっていたという
のは?こんな女の来訪なら幾らでも受けてみたいが
「和歌山の警察の方がわたしに何を?」
『わたしたちは、ここの歯科衛生士の方の事件を調べていましてね』
「あー、そうですか」
しかし、どうして俺のところに来るんだ
『先生は、歯科衛生士の星野さんが殺された日に太地に来ておられま
したね』
女刑事は、しっかりと橋本を見つめた。
この女、何を言い出すんだ。何をどこまで知っていると言うんだ。
しかし、いま俺を見つめている、この女、綺麗な女だ。そういえば
今までの相手のジャンルに女刑事は無かったな、広げてみるのも
良いな。否、今そんなことを考えている場合じゃない、どのように
答えればいいのだ
この男、何を考えているのかしら、と思いながら高杉刑事は
『これを見ていただけますか』と、一枚の写真を橋本の前に差し出した。
「くじらのモニュメント?」
『そうですね。そうして、これが写真の一部を拡大したものです。ここに
写っている車は先生のお車ですね』と、高杉は橋本に一歩近づき顔を見
つめた。
いい香りのする女だ。そういうことか。しかし誰がこんな写真を撮っ
た?行っていないと答えないでよかった
「行ってましたよ。翌日病院の職員が太地で殺されたと聞いて、彼女も
太地に行っていたんだ、と思いました」
『先生は、どのような御用で太地の方に?わざわざ病院を休まれてまで
して。平日でしたよね、あの日は』
「刑事さんは、パソコンの取り扱いは得意ですか?」
『パソコンの取り扱いって、操作することですか?』
高杉が、両手でキーボードを叩く真似をしてみせる。
「そうそう」
『一応程々に』
「僕は、苦手でしてね。ところが最近カルテが電子化され、手書きでなくな
りました。患者さんの顔色やその他、拝見するよりもモニターと睨めっこです。
疲れましてね、気晴らしに太地まで、いるかショーを見に行きました」
『そうですか。でも、大阪の方からでしたら、太地まで行かれなくても白浜
でも、いるかショーをご覧になれますよね。わざわざ太地にまで行かなくても』
この女、じわじわ真綿で首を絞めるように攻め込んできやがる
今に見ていろよ、今度は俺がベッドの上で、あんたをじわじわ攻めてや
るから