身勝手な選択【53】 | 高橋秀之の小説

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この物語は

フィクションであり、登場人物等他

実在するものと一切関係ありません。


身勝手な選択【53】


第七章


 整形外科病棟の看護師下津知代が退職した翌週の月曜日、橋本は

回診のため病棟に行った。


 病棟師長が、見慣れない顔のピンク色の看護服を着た看護師に何か

説明している。


 「師長、どうしたの?」

 『あっ、先生、ちょうどいいわ。下津さんの代わりに小児科病棟から移っ

て来た佐伯由美さん、こちらは整形の橋本ドクター』


 佐伯と紹介された看護師が

 『佐伯です。よろしくお願い致します』と頭を下げる。

 「橋本です。頑張ってください」

     なるほど、小児科病棟向きだ、と橋本は佐伯看護師の顔を見て

思った。


 翌日の火曜日、橋本が回診に病棟に行くと一人の看護師が

 『先生、下の総合案内からお電話です』と受話器を差し出した。


 「はい、整形、橋本だ」

    先生に、お会いしたいという方がお見えです

 「来客って、男?女?」

    男性お二人です

 「男なら、スルーしたいがなー」

 受話器の向こうで、受付の女性が笑いを堪えているのがわかる

 「わかった、すぐ降りる」

    お願いします


 橋本が一階に降り、総合案内まで行くと二人の男が立っていた。

 きゅうり顔の男と眼鏡の男だ。

 「整形の橋本ですが」

 きゅうり顔が、警察手帳を示し

 「西淀川警察の内海です。こっちは西尾です」と名乗った。

 「警察?交通事故の患者のことで何か?」

 「いえいえ、わたしたちは丸尾誠子さんの事件を担当していましてね

丸尾誠子さん、ご存知ですよね?」

 「そりゃ、知っていますよ。一緒に仕事をしていましたから」

 「先生は、丸尾さんのことについて何かご存知ではありませんか?」

 きゅうり顔の男は、橋本に色々話しかけて来るが、眼鏡男はじっと橋

本の顔を見つめている。

 

 「さあー、一緒に仕事していたとはいっても、私生活までは。彼女美人

だから・・・・」

 「先生は、先週木曜日夜どうしておられました?」

 「木曜日?あー、アリバイ」


 橋本は、しばらく考えて

 「当直でした。断っておきますがドラマのように途中抜けたとかいう余裕

はありませんでしたから」と答えながら眼鏡男の顔を見た。

 眼鏡男は、橋本の視線に構うことなく、ずっと橋本を見つめている。

 「あー、その辺りは承知しております。調べが済んでいますんで」

    調べが済んでいる?じゃあ聞くなよ


 「ところで、先生の血液型は何です?」

 「血液型?O型だけど。どうして?」

 「いやいや、形式的にお尋ねしているだけです。先生は歯科の南先生を

知っておられますか?」

    どうして、南のことなど聞く?

 「南先生?知っているかと聞かれたなら、知っていますよ。同じ病院の医

師ですからね。その程度です。刑事さんも不思議な質問をされますな」
 「橋本先生は、南先生の血液型をご存知ではありませんか?」

 「どうして、僕が南君の血液型を知ってなきゃいけないのです。先ほどから

何です?血液型、血液型って」

 「いやあー、その実はね。彼女、丸尾誠子は暴行されていましてね」

 今まで、へらへら質問していたきゅうり顔が鋭い目つきで橋本を見つめた。


    誠子が暴行されていた?南の奴、殺す前にやったのか?・・・