身勝手な選択【51】 | 高橋秀之の小説

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作品の内容、人物の名前等すべてフィクションです。

この物語は

フィクションであり、登場人物等他

実在するものと一切関係ありません。


身勝手な選択【51】


    橋本だ、倫子の車の前に割り込んだというのは。不味いぞ橋本は

倫子に見られている、孝太郎は思った。


 孝太郎は動揺を隠しながら倫子に問いかけた。

 「で、それはいったい誰だったんです?」

 『慌てないの』

    いつまでも値打ちをつけ、じらしやがって


 『バスは上の方へと進んでいったわ』

 「それで?」

 孝太郎は苛々してきたので、話を前に進めるように促した。

 『彼女は梶取崎バス停で降りたと思われるわ。前の車がそのかなり手前

で停まっていたから』

 「それは、ちょっと可笑しいのじゃないのか、警察の話では不審なものは

目撃されていないっていうのに」

 『警察?あっ、そうか、あなたのところには警察が来ているのよね。そりゃ

そうよ、わたしの車なんかそこへ全然近づいていないもの。前の車の彼女

だって手馴れたものよ、尾行上手だったわ。たとえ誰かに見られたとしても、

誰もバスの彼女をつけているとは。それにしても静かな昼下がりだったわ

誰も通らなかったわ、猫一匹も。いや猫が一匹歩いていたっけ』

 「何だって。前の車の彼女って、割り込んできたのは男じゃないのか?」

 孝太郎は、驚いた表情で倫子を見た。


 『あなたって、不思議な人ね。どうして割り込んできたのが、バスの後を

つけだしたのが男って思うの?それも、警察からの情報?』

    後をつけていたのが橋本ではなく、女だというのなら誰だ。


 「じゃあ、その女性って誰なんです?」

 『後でって、言っているでしょう』

 

 倫子は、ワインがもう無くなっているのに気づき

 『ねえ、電話して』と言って、ワインのボトルを示した。


 孝太郎が、電話をして席に戻ると倫子は話始めた。

 『結構時間が過ぎたと思ったけど、前の車がゆっくり動き出したのよね。

多分、星野宏美が梶取崎を見た後歩き出したんだと思う。わたしも、前の

車に気づかれないように間隔を保ち後をつけた』


 ルームサービスがワインを届けに来たので、孝太郎は受け取りに行き

栓を抜いて、倫子のグラスに注いだ。


高橋秀之の小説-駐車場

 『わたしの車が、平見台園地と書かれた駐車場の横に辿り着いた

ときには、前の車はその駐車場に停められていた。わたしは素早く

そこを素通りしてかなり離れたところに車を停めて待ったわ。暫くす

ると、近所の人たちかしら、数人がわたしの車の横を歩いて通った

けど県営住宅の横だから、多分そこの住民だと思っていたでしょう

ね』

 倫子は、ワイングラスを口に近づけ、孝太郎にも自分で注いで飲む

ように促した


 『そのあと、直ぐよ。猛スピードでわたしの車の横をあの車が走り抜

けたのは』