身勝手な選択【49】 | 高橋秀之の小説

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この物語は

フィクションであり、登場人物等他

実在するものと一切関係ありません。


身勝手な選択【49】


    迂闊だったな、つけられていたとは、と考えながら孝太郎は倫子

の話に耳を傾けていた。


 『朝は朝で大変、見失ってはいけないし、見つかってもいけないから。あ

なたたちはホテルに呼んで貰っていたタクシーに乗り込むし、ホテルの前

には客待ちのタクシーは無いし』

 倫子は、ここで一息いれた。


 『でも、行き先は駅だろうと思い、暫くして走ってきた空車に乗り込み後を

追ったの。駅に着くとあなただけが改札を通り抜けるところだった。あれ、彼

女は一緒に行かないのだ、と思って彼女の行動を見張っていたの。彼女は

駅前のみやげ物の店を数件回った後、喫茶店に入ったわ』

 倫子は、ワインを口にしながら孝太郎を見つめた。

 『わたしは考えたの。わたしが彼女と会ったのは、梅田の店で彼女があな

たと一緒にいたときに会っただけだと。わたし、あの頃と髪型を変えているし

サングラスをかければ気づかれないのでは、と思いサングラスをかけ、わた

しも喫茶店に入ったの』


    早く核心部分に触れてくれよ、思いながら孝太郎は倫子を見つめた。

 『わたしが店に入っていっても彼女はわたしに予想通り気づかなかった。わ

たしは飲み物をオーダーしたあと、コーヒーを飲みながら週刊誌を読んでいる

彼女を嫉妬の眼差しで眺め回していたわ。さぞかし昨夜はあなたに愛され続

けたのだろうなって思って』

 倫子が、くりっとした瞳で孝太郎を見つめ、孝太郎は思わずその視線から

目を逸らせた。


 『暫くすると、彼女は立ち上がってレジに向ったわ。電車に乗るんだと思い

わたしも後に続いた。彼女は既に乗車券を持っていたのか、そのまま改札口

に向ったわ。あなたが買ってあげていたの?』

 孝太郎は、否定的に首を横に振った。

 『わたしは、時間的に見て彼女が乗るのは新宮方面だろう、と思って、彼女

は何処まで行くのかわからないけど、わたしは勝浦までの乗車券を買い彼女

のいるホームまで行って、彼女の横に行ったわよ。わたし彼女を明るいところ

で間近に見たのは初めてだけど、彼女綺麗な肌をしているのよね。そうでしょ

う?』


 孝太郎は、戸惑いながら

 「そうですか?」と答えた。

 『何言ってるの、前の夜は彼女とぴったり肌を寄せ合っていたくせに。あっ端

たないことを口にしてしまったわ。でも、これはジエラシーよ。あなたの所為よ』

 倫子が、恥ずかしそうな表情を装いながら俯いた。


 『わたしは、彼女と同じ車両に乗って、新宮方面に向ったわ。席は離れていた

けどね』

 「倫子さん、まさかあなたが彼女を手にかけたんじゃないでしょうね?」

 『わたしが?あなたも失礼なことを言うわね。初めて会ったときにわたしは言っ

たでしょう。わたしはクリスチャンの母に育てられたって、そのわたしが人を殺す

ことなどないじゃないの』

 「クリスチャン、クリスチャンと倫子さんは言うけれど、世界を見てください。戦

争の大半は宗教戦争ですよ。わたしの知人なんかは、そのことを片手に聖書、

片手にピストルと批判していましたよ」

 『ふ~ん。確かにそうかもね、外国では。でも、今そんな宗教論争している場合

じゃないでしょう。しかし、わたしが彼女を殺したですって?』

 「いや、そういう意味じゃなくて。失礼しました」