蒲田行進曲 | 小劇場クルーズ~この素晴らしき役者たち~

小劇場クルーズ~この素晴らしき役者たち~

最も身近で自由な表現方法である筈の演劇なのに、ごく一部の人々がその恩恵に浴しているだけの現状はとても寂しい。
人知れず才能と輝きを秘めた役者や深い感動をもたらす舞台が、星の瞬きのように次々と光っては消えを繰り返し永遠に忘れられるでは、本当に勿体ない。

ふれいやプロジェクト第5回公演『蒲田行進曲』(於:池袋・ シアターKASSAI、7月9日千穐楽)を観てきました。

 

東映京都撮影所は5年に1度の大作「新撰組」の撮影に沸いていた。

なんといってもその売りはダイナミックな『階段落ち』である。

主役を張る銀四郎の恋人であり、その子を身ごもった女優・水原小夏-

 

        … ~ … 

妻の腹の中にいるのが自らの子ではないと知りながら、夫となったヤスは大部屋として危険な役をこなしてお産の費用を出そうとする。

結婚してからも銀ちゃんに惚れ込んでいた小夏の心は、子供の父親として頑張るヤスへと次第に移って行く。が、そこに・・・
映画撮影所を舞台に、3人の男女の愛を描く。

                                                                                                    ~説明文より抜粋~

 

 

見所の一つである『階段落ち』をシアターKASSAIの狭小スペースでどう表現するのか!?

同じく小劇場で観た他所の公演は、よく創意工夫してコンパクトに舞台装置を創り上げてはいたが、規模を縮小して映画版をただなぞったに過ぎぬ物足りないものだった。

 

今回の公演は素舞台であってもS.E.と照明がとても効果的に舞台に奥行を与え、エンターテインメント作品としての世界観と吸引力が素晴らしかった。

役者の演技は熱さの中にも押し付けがましさが無く、出し引きが絶妙で心地よく魂を揺さぶって来る。

 

エアコンのきいた場内でボロボロ泣いて、上演後の明るくなったダブルコールで役者と目が合い気恥ずかしい思いを味わい、かけがえのない観劇体験に興奮しながら劇場を後にする。

 

 

何十万という人が蠢く池袋の只中で、あの終盤の十数分は間違いなくここが一番熱い場所だった。

 

暑い中片道2時間掛けて通うのには、出発間際まで躊躇しましたが高い前評判を信じて大汗かいて行った甲斐がありました。

                                                           滝汗

 

 

 

ヤスを演じた關根史明さんと小夏を演じた、演劇プロジェクト『ふれいやプロジェクト』主宰・倉地裕衣さん