㈱江藤から多村組までは車で20分程度だ。
しかし、年度末である3月のこの時期は10分くらいはさばを読んで出ないといけない。
今走っている道路は市街地のメイン道路で道路脇にはガソリンスタンドや本屋、そば屋など各店舗が一応並ぶ。
しかし都会と違って高層ビルはない。
せいぜい2階建てだ。どの店舗もそろそろペンキを塗ってせめて外観だけでも小奇麗にすることをお勧めしたいくらいだ。
3階建て以上でペンキの塗替えの心配がない店舗と言えばフランチャイズのスーツ屋かファーストフード店くらいのモノだ。
既存の店舗も元気がないが建築の工事も元気がない。
新築の工事現場がメイン道路を走ってみても見当たらない。
そうこう走っているうちにさばを読まなければいけない理由に車を止められた。
立て看板のおじぎをしている土木作業員の絵の下にこう書かれている。
【電柱埋設の工事をしております。ご協力お願い致します。】
建築工事はないが土木工事はある。
年度末恒例、土木工事による道路規制だ。
確かに最近、電柱の地中への埋設工事で街の景観が少しすっきりした気がする。
しかし半年前ここは
【水道管老朽化による配管取替え工事】
をしていた。
去年の年度末は
【アスファルト老朽化によるアスファルト張替工事】
をしていた。
水道管が腐って水道水が腐食したり、配管から漏れたりしたら困る。
アスファルトもガタガタよりも新しいほうが快適だろうし車の耐久性とも関係ある気がする。
しかし、
「何で3回の工事で3回も穴掘って3回も穴埋めるんじゃ!1回掘って、配管やり直して電柱埋めて穴埋めてアスファルト敷けや!2回分の穴掘り代と穴埋め代は公務員の給料から天引きしとけ!管理しちょる部署が違うとかいう言い訳はおととい来やがれ!!」
と車内で喚いてみた。
現場で作業している人には当然聞こえない。
聞こえても困る。
この人たちには無駄で効率の悪い工事予定は関係ない。
ただ国や県や市、または国土交通省や水道局、建築課などからダラダラと流された仕事を貰えた場合のみこなすだけだ。
道路工事の先頭で、旗振りをしているおじさんは、ニット帽を被った上にヘルメットをのせている。ジャンバーもモコモコしていて、中にも相当着込んでいるようだ。
吐く息が白い。
しかし、こちらの車内も、エアコンが故障しているので、吐く息が白い。
同情なんかしていられない。
そんなことを思いつつ車を走らせると、メイン道路から1本入って住宅街を少し抜け多村組の事務所に着いた。