邪馬台国サミット2021:古事記の邪馬台国 | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

○中国の正史、「三国志」が編纂されたのは、三世紀だとされる。それに対し、日本最古の史書とされる「古事記」や「日本書紀」が編纂されたのは八世紀だと言う。両者の間には、五百年もの時代差がある。

○その「古事記」や「日本書紀」がどのように邪馬台国を記録しているか。これもまた気になるところである。2021年元旦のNHKの特別番組『邪馬台国サミット2021』は、そういうことに一切、言及しない。もっとも、出演者のほとんどが考古学者先生なのだから、それは当然と言えば、当然なのかも知れない。

○『邪馬台国サミット2021』では、まるで歴史に無関心な話ばかりが続けられた。邪馬台国も卑弥呼も日本の歴史の大事な一コマなのに。「三国志」の利点は、邪馬台国や卑弥呼が存在した三世紀に編纂されていると言うことである。つまり、同時代の著作になる。卑弥呼と陳壽は同時代の人なのである。

○もっと面白いのは、「日本書紀」に「三国志」が出現していることである。それは「日本書紀」巻第九、気長足姫尊の御代の記録にある、次の割注である。

  ・卅九年。:魏志云、明帝景初三年六月、倭女王遣大夫難升米等、詣郡、求詣天子朝獻。

   太守鄧夏遣吏將送詣京都也。

  ・卌年。:魏志云、正治元年遣建中校尉梯携等、奉詔書印綬、詣倭國也。

  ・卌三年。:魏志云、其四年、倭王復遣使大夫伊聲耆掖邪狗等八人上獻。

○つまり、「日本書紀」の時代、卑弥呼は神功皇后の時代の人と考えられていたことが判る。ある意味、卑弥呼を神功皇后になぞらえているのであろう。なかなか面白い説である。

○逆に言うと、「日本書紀」の説く通りなら、神功皇后は日向国の人であることになる。神功皇后が住吉神社に斎き祀られていることを考慮すれば、神功皇后は邪馬台国の人と言うより、投馬国の人である可能性が高い。そういう意味では、神功皇后は邪馬台国の人である卑弥呼に合致しない。

○「古事記」や「日本書紀」と卑弥呼の居た時代とには、五百年もの時代差がある。現代で言うなら、五百年前は戦国時代である。織田信長が生まれたのは1534年だとされる。まだ武士が丁髷を結い、刀を差していた時代となる。容易に想像もできない時代のことである。それが五百年の時代差である。

○まして、話は古代の話である。三世紀、日本には満足に文字すら無かった。どれだけ、時代が記憶されていたかさえ、定かでない。そういう時代に、中国では「三国志」が編纂されていたのである。文化のレベルは、話にもならないほど差があった。

○その点、「古事記」が案内する天孫降臨神話は、甚だ気になる。天孫降臨の尊は、彦火瓊々杵尊と申し上げる。彦火瓊々杵尊が天孫降臨なさった山は 竺紫日向之高千穂之久士布流多気だと言う。天孫降臨の世界山、竺紫日向之高千穂之久士布流多気が尋常の山で無いことだけは確かである。

○面白いことに、世の歴史学者先生や神話学者先生は、満足に、天孫降臨の世界山が何処であるかさえ、規定できない。何とも、不勉強な話である。もちろん、当古代文化研究所はでは、それが霧島山高千穂峰であることを証明済みである。天孫降臨の世界山は、霧島山高千穂峰以外ではあり得ない。

○そのことは、「古事記」と「日本書紀」を読むと、明らかになる。「古事記」と「日本書紀」の天孫降臨の世界山の全記録は、次のようになる。

  「古事記」    竺紫日向之高千穂之久士布流多気(つくしのひむかのたかちほのくじふるたけ)
  「日本書紀」本文 日向襲之高千穂峯(ひむかのそのたかちほのたけ)
              槵日二上天浮橋(くしひのふたがみのあまのうきはし)
       一書 筑紫の日向の高千穂の槵觸之峯(つくしのひむかのたかちほのくじふるのたけ)
       一書 日向の槵日の高千穂之峯(ひむかのくしひのたかちほのたけ)
       一書 日向襲之高千穂槵日二上峯天浮橋

                 (ひむかのそのたかちほのくしひのふたがみのたけのあまのうきはし)
       一書 日向の襲の高千穂の添山峯(ひむかのそのたかちほのそほりのやまのたけ)

○この記録は、全て、天孫降臨の世界山について、述べたものとなっている。つまり、この全記録に合致するところが天孫降臨の世界山なのである。そんな山は世界に二つと無い。それが霧島山高千穂峰である。

○日向国で最も高い山が霧島山高千穂峰である。何より、此処は中国本土に直結している。そのことを、天孫降臨なさった彦火瓊々杵尊は開口一番、次のように発言なさる。

  此処は韓国に向ひ、笠沙の御前を真来通りて、朝日の直刺す国、夕日の日照る国なり。

  故、此処は甚吉き地。

○だから、彦火瓊々杵尊は霧島山高千穂峰に天孫降臨なさったのである。「古事記」や「日本書紀」はそういうふうに読むものなのである。誰もそういうことを教えてくれない。

○前回、『邪馬台国サミット2021:邪馬台国の風景』で案内したように、霧島山は邪馬台国三山の筆頭なのである。

  ・うねびやま=霧島山(1700m)

  ・かぐやま=桜島山(1111m)

  ・みみなしやま=開聞岳(924m)

◎天孫降臨の世界山は、霧島山高千穂峰以外に考えられない。それは邪馬台国三山の筆頭ともなっている。ここから日本は始まったのである。日向国を探検すると、そういうことが判る。