一青(ひとつあを)白鳥(ひとと)考(Ⅴ) | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

そう考えると、「一青(ひとつあを)」が見えて来る。「一青(ひとつあを)」とは、「白だけ」、「純白」、「真っ白」の意であることは、だれが考えても判ることである。これが枕詞であれば、完璧である。

 どういうことかと言うと、枕詞「一青(ひとつあを)」は、「白鳥(ひとと)」掛かる枕詞だと言うことである。もともと、枕詞は四文字か五文字の、特定の語に掛かる修辞である。万葉時代に流行った修辞だから、相当古い。

 枕詞「一青(ひとつあを)」に近い枕詞として、枕詞「飛鳥(とぶとり)の」がある。枕詞「飛鳥(とぶとり)の」は、「あすか」に掛かる枕詞として知られる。逆に、「飛鳥」と書いて「あすか」と読む。これは枕詞を理解していない限り、読むことはできない。

 判るように、枕詞は難しい。しかし、枕詞を研究していると、枕詞が何とも知的で合理的な表現であることに驚く。私が小さい頃、捕まえた鳥は間違いなく白い鳥であった。それを私たちは「ひとと」と呼んでいた。それがどういうことを意味するかも知らなかった。「ひとと」が白い鳥を意味するのであれば、納得できる話である。

 神鳥前川(しとどまえかわ)神社が白鳥前川神社であることも、これで説明できる。歌手の一青窈(ひととよう)さんの名も、「一青(ひとつあを)白鳥(ひとと)」であれば、十分理解される。なかなか枕詞は面白い。

 参考までに。掲載した写真は、三重県鈴鹿市石薬師の白鳥陵と三重県亀山市田村町の能褒野陵である。すぐ近くに存在する二つの御陵だが、ともに日本武尊の御陵だとする。日本武尊は死んだ後、白鳥となって飛び立ったとされる。それで白鳥陵と言う。能褒野は、此処の地名である。

 

枕詞「一青(ひとつあを)」など、笑止千万、聞いたことも無いとおっしゃるかもしれない。しかし、日向国には、現在でも、ふんだんに各所に枕詞を目にすることができる。残念ながら、そういうことは枕詞を学習している者にしか理解されない。かの谷川健一でさえ理解していないのが枕詞なのだから。

○諸県盆地に存在する『にゃんにゃんほー』と言う遊びから、「ひとと」と言う鳥について考えることとなった。、「ひとと」と言う鳥が私たちに教えてくれるものは大きい。この『一青(ひとつあを)白鳥(ひとと)」も、そうした学習成果のひとつである。