○立春詩の案内を続けている。今回案内するのは、王安石の『漁家傲・隔岸桃花紅未半』詞である。
【原文】
漁家傲·隔岸桃花紅未半
王安石
隔岸桃花紅未半。
枝頭已有蜂兒亂。
惆悵武陵人不管。
清夢斷。
亭亭佇立春宵短。
【書き下し文】
漁家傲·隔岸桃花紅未半
王安石
岸を隔てたる桃花、紅の未だ半ばならず。
枝頭に已に有り、蜂の兒の亂るる。
惆悵す、武陵の人の管せざるを。
清夢は斷たる。
亭亭として佇む、立春の宵の短かきに。
【我が儘勝手な私訳】
川の向こうに桃の花がたくさん咲いていて、それはまだ五分咲きにもなっていない。
それなのに、桃の花には、もうたくさんの蜂や蝶が乱れ集まっている。
恨み嘆かわしいのは、それが武陵の人の管理する桃源郷ではないことだ。
桃花源の理想郷の夢は絶たれた。
茫然として佇み立っているだけである、それ程、春の夜は、華やかで儚くて短い。