○立春詩の案内を続けている。今回案内するのは、溫庭筠の『題望苑驛』詩である。
【原文】
題望苑驛
溫庭筠
弱柳千條杏一枝
半含春雨半垂絲
景陽寒井人難到
長樂晨鐘鳥自知
花影至今通博望
樹名從此號相思
分明十二樓前月
不向西陵照盛姫
【書き下し文】
望苑驛に題す
溫庭筠
弱柳は千條にして、杏は一枝、
半ば春雨を含み、半ば絲を垂る。
景陽の寒井は、人の到り難きも、
長樂の晨鐘は、鳥、自から知る。
花影は今に至るまで、博望に通じ、
樹の名は、此より相思ふを號す。
十二樓の前の月を分明すれば、
西陵に向かはず、盛姫を照らす。
【我が儘勝手な私訳】
柳樹はたくさんの枝を垂らしているが、杏の木は一本立っているだけである、
木々は春雨に打たれて、枝からは雨の滴が垂れている。
南京鶏鳴寺の景陽井を、人の訪れることはなかなか無くても、
四川長樂観の夜明けを告げる鐘の音は、鳥なら皆承知している。
望苑驛の花の見事さは、古今、誰もが知っており、
望苑驛の相思樹なら、東西、知らない者は居ない。
仙人が住む十二樓では、月と言うものは、
永遠に西に沈むことなく、美しい女性を照らし続けている。
○南京の鶏鳴寺には、2013年10月に訪れている。
・テーマ「六朝古都:南京」:ブログ『南京:鶏鳴寺』
https://ameblo.jp/sisiza1949/entry-12519964875.html?frm=theme
しかし、景陽井は見ていない。何とも、文化の無い話である。ちなみに、李商隠に「景陽井」詩がある。
○また、四川省遂宁市は、陳壽の故郷、南充を訪れた際、通過しただけで、降りてもいない。長樂観の話もよく知らない。何とも中国は広いし、奥が深い。