天降付く天の香具山 | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

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○鹿児島湾は広くて奥が長い。それに火口湾であるから、途方もなく深い。グーグルアースで計測すると、最南端の大隅半島佐多岬から、最奥と思われる隼人町小浜までは、直線距離で82劼發△襦薩摩半島長崎鼻からでも、およそ65劼任△襦I?眇眇紊斑山あたりで、約16劼任△襦

○もっとも、鹿児島では誰も鹿児島湾とは呼ばない。鹿児島では専ら、錦江湾と呼ぶ。念の為に、国土地理院の地図検索で見たら、「鹿児島湾(錦江湾)」と表記している。一般的には「鹿児島湾」、地元では「錦江湾」だと言うことなのだろうか。

○その錦江湾の中に、ぽっかりと浮かんでいるのが桜島である。桜島の最高点は北岳の1117叩桜島には周回道路がある。その全長は約35辧どれほどの大きさの島か、判断していただけるのでは。

○その桜島の西側、海を隔てて鹿児島市が存在する。もっとも、現在は、行政区分上では、桜島は鹿児島市となっている。しかし、歴史的には、桜島は大隅国に存在した島であり、薩摩国の島ではない。

○鹿児島地名がどういうものであるかは、なかなか難しい問題である。当、古代文化研究所では、すでに鹿児島地名について、詳細な検証を加えている。詳しくは、本ブログ、
  ・書庫「鹿児島はなぜ鹿児島と言う?」:10個のブログ
を参照していただくしかない。

○結論だけ述べると、鹿児島とは桜島のことである。正式な呼称は、『かごしまのさくらじま』だったものと思われる。もちろん、『かごしまの』は、『さくらじま』に掛かる枕詞である。ちなみに、『かごしま』とは、「火を噴く島」の謂いである。まさに、桜島にピッタリの表現となっている。

○『かごしま』は、山でもある。だから、『かごしま』は『かごやま』でもある。、古事記や日本書紀では、天之真鹿兒矢(あめのまかこや)を、別に天之加久矢(あめのかくや)とも表記するから、『かごやま』は『かぐやま』でもあることが判る。つまり、鹿児島は、香具山であることが証明される。

○「かごしまのさくらじま」は、現在でも、普通に呼ばれる名である。もっとも、それは、「大地名+小地名」の感覚である。しかし、「かごしまのさくらじま」は、本来、古代から続いている由緒正しい呼称なのである。それほど、枕詞の言霊は現在でも威力を発揮している。

○奈良県を訪れると、『大和国中(やまとくんなか)』に、大和三山が存在する。古来、畝傍山・香具山・耳成山の三山を『大和三山』と呼んでいるが、それは大和三山のレプリカであって、真実の大和三山ではない。

○誰が何時、そういう恐ろしい造作をしたか。そのことも、実ははっきりしている。その方の御名は、神倭伊波礼琵古命(かむやまといわれひこのみこと)と申し上げる。つまり、初代天皇、神武天皇その人である。神様でなくては、こういう造作を為すことなど、到底、できない。

○大和三山、畝傍山・香具山・耳成山の中で、唯一『天の香具山』と、『天の』が冠せられる山が香具山である。それはどうしてか。それは、香具山が海中に存在する山だからなのである。現在は『天の香具山』と表記するから、意味を失っているけれども、本来、『海の香具山』であった。もちろん、『海』は『あま』と読む。

○別に、『天の香具山』には、特別の枕詞が存在する。それは『天降付く』である。

   嵋鑈媾検彜三  257)
     鴨足人の香久山の歌一首         鴨足人香久山歌一首
   天降りつく  天の芳來山        天降付   天之芳來山
   霞立つ    春に至れば        霞立    春尓至婆
   松風に    池波立ちて        松風尓   池浪立而
           (以下略)
  ◆嵋鑈媾検彜三  260)
    或る本の歌に云ふ             或本歌云
   天降りつく  神の香具山        天降就   神乃香山
   打ち靡く   春さり来れば       打靡    春去來者
   櫻花     木の暗茂に        櫻花    木暗茂
   松風に    池波あがり        松風丹   池浪飈
           (以下略)

○枕詞『天降付く』も、なかなか難しい枕詞である。単純に、天から降って来たと解するのが一般的であるが、多分、そうではあるまい。漢字に騙されてはならない。表記『天降付く』は、あくまで、当て字に過ぎない。

○それに、枕詞『天降付く』が、『天の香具山』にのみ掛かる枕詞であることを忘れてはなるまい。つまり、『天の香具山』にのみ、訪れる現象を表現したものと判断する。そして、それは途轍もなく神秘的な現象なのであろう。

○鹿児島を訪れ、桜島に関する様々な情報を手に入れることによって、『天降付く 天の香具山』が初めて解明される。それは、次のような話である。

○ある時期に、桜島の裾野に夕日が没する時期があって、それは何とも言えない美しい情景である。だから、その時期になると、その情景を撮るために、多くの写真家がやって来る。

○おそらく、『天降付く 天の香具山』の情景とは、これであろうと思われる。その情景を写す機会を窺っているのだが、なかなか時間がなくて、まだ撮れていない。

○鹿児島県霧島市には、天降川がある。何とも珍しい地名である。霧島山から錦江湾に流れ注ぐ川である。この川も東から西へ向かって流れている川である。そういう意味では、『天降』自体が西を意味する言葉なのかも知れない。

○船は錦江湾に入ってから、1時間以上走って、鹿児島港に入港する。その間、ずっと前方に桜島を眺めることが出来る。現代でさえそうである。昔はもっとその時間は長かったはずである。次第次第に桜島が大きくなる。その時間が何とも待ち遠しい。