神代三山陵の研究⑥ | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

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◯神代三山陵の最後に、神代三代の初代である彦火瓊々杵尊の御陵、可愛山陵の話をすることになる。明治七年の明治天皇の御裁可では、初代・彦火瓊々杵尊の御陵、可愛山陵は鹿児島県薩摩川内市の新田神社となっている。

◯彦火瓊々杵尊は、天照大神の孫に当たる。日向の高千穂峰に降臨した尊が彦火瓊々杵尊である。古来、天孫降臨の地がどこにあるかは、いろいろと論議されてきた。何しろ、日本歴史の出発点とも言うべき場所であるからして、その地を比定するのには、十分な検討が必要である。

◯「古事記」「日本書紀」の記録を整理すると、つぎのようになる。
  「古事記」    竺紫日向之高千穂之久士布流多気(つくしのひむかのたかちほのくじふるたけ)
  「日本書紀」本文 日向襲之高千穂峯(ひむかのそのたかちほのたけ)
           槵日二上天浮橋(くしひのふたがみのあまのうきはし)
       一書 |淹臚鋐?眄虔槵觸之峯(つくしのひむかのたかちほのくじふるのたけ)
       一書◆‘鋐槵日高千穂之峯(ひむかのくしひのたかちほのたけ)
       一書 日向襲之高千穂槵日二上峯天浮橋(ひむかのそのたかちほのくしひのふたがみの                           たけのあまのうきはし)
       一書ぁ‘鋐?映傾眄虔翕沙格?覆劼爐のそのたかちほのそほりのやまのたけ)

◯これらの記述にすべて共通する表現は、「日向」と「高千穂」の二点である。「日向」の表現は、他に「筑紫」の表現も見られることから、日向国であることは、間違いのないところであろう。問題は「高千穂」の表現と言うことになる。

◯現在のところ、天孫降臨の地としては、次の二カ所が有力視されている。
  ゝ楮蠍西臼杵郡高千穂町
  宮崎県都城市御池町と宮崎県西諸県郡高原町との境にある高千穂峯
他に、福岡県とする説もあるが、根拠が薄く、問題に出来ない。

◯これまで、この二説に関しては、多くの議論がなされてきているが、未だに決着をみていない。例えば、梅原猛氏は、「天皇家の"ふるさと"日向をゆく」において、次のように述べている。
   宣長が言うように、この問題は大変難しい。しかし今はいちおう、天孫降臨の場所を宮崎県西臼杵
  郡の高千穂と考え、日向神話への旅をはじめることにしよう。もちろん他日、天孫降臨の地を霧島と
  して、そこを原点にして、私のようにその物語の一貫性を検証しようとする人が出たとしてもまった
  く差し支えなく、むしろそれは望ましいことである。

◯それに対して、安本美典氏は、「邪馬台国は、その後どうなったか」において、次のようにのべている。
   このような立場(注:邪馬台国東遷説の立場)にたつとき、高千穂論争について、私は、江戸時代
  後期の国学者、本居宣長が、「古事記伝」のなかで述べている「折衷説」に賛成する。
   すなわち、本居宣長は、天孫邇邇芸の命は、はじめ、臼杵郡の高千穂の山に降り、そのあとで、霧
  島山に行ったのであるとする。(中略)
   本居宣長の没後の門人であることを自称した平田平田篤胤も、「古史伝」で、本居宣長の折衷説を
  とっている。
   明治時代の歴史地理学者、吉田東伍は、もともと、「高千穂の峯=霧島山」説を支持しているが、
  「倒叙日本史」(上古編)の中で、次のようにも述べ、本居宣長と同様の折衷説を説いている。

◯この点に関しては、二人とも、驚くほど、歯切れが悪い。これが、あれほど、大々的に自説を唱え、蕩々と自説を喧伝してきた人と同じ人の発言かと、疑いたくなるほどである。

◯それもそのはずで、おそらく、この二人は高千穂町でも、都城市でも、多くの関係機関や在地の研究者たちにお世話になっているのである。それを無視出来ないのである。お世話になるのは、お世話になるが、言いたいことは、しっかり言わせてもらうのが学者ではないか。二人の著作を読んで、そう感じるのは、私だけではあるまい。

◯もう、そろそろ高千穂論争には決着をつける時期にきているように、私には思えてならない。これ以上、この問題を引きずってみたところで、何も良いことはないような気がする。本居宣長と言う大学者を引き出して、お茶を濁すようなことは止めるべきである。真実は一つしかないのに、両方に良い顔をしておくのは、やはり好くない。

◯確かに、この問題は、現実の観光経済や観光行政をも引き込む大問題となる。一方に味方すれば、多大な敵を作ることを承知の上で、発言することを覚悟する必要がある。いい加減に発言することは、良くないが、やはり学問をするものは、誤魔化してはいけない。

◯話が長くなったので、一応ここで切って、次回に繋げたい。