耳成山 | 古代文化研究所:第2室

古代文化研究所:第2室

ブログ「古代文化研究所」で、書き切れなかったものを書き継いでいます。

◯前回、ブログの冒頭に、次のように書いた。

  ・今回の大和三山周遊で参考とした『近鉄てくてくマップ:大和三山回遊コース』

  に拠れば、橿原神宮前駅から畝傍山山頂までが2335m、次に香具山山頂まで

  が8191mとある。つまり、畝傍山山頂から香具山山頂までは、5856m歩

  いて来たことになる。

◯『近鉄てくてくマップ:大和三山回遊コース』によれば、香具山山頂が8191mであるのに対して、耳成山山頂は12642mとある。したがって、香具山から耳成山までは4451mもあることになる。歩いてみると判るのだが、結構な距離である。

◯ちなみに、『近鉄てくてくマップ:大和三山回遊コース』の全行程は約14キロとある。2022年12月19日に、当古代文化研究所は八回目の大和三山周遊を行ったが、朝8時30分に橿原神宮前駅を出発して、最後の耳成駅到着は14時21分だった。

◯つまり、5時間51分を要したことになる。のんびり歩いたとは言え、なかなかの距離数である。ただ、道は平坦で、大和三山も低い山だから、ほとんど登りは無い。畝傍山で110m、香具山で50m、耳成山で70mほど、登った程度である。

◯見える山は遠いと、よく言うが、まさに、大和三山がそうである。見えているだけに、なかなか辿り着かない。辛抱強く、ただただ歩くしかない。お陰でうんざりするほど、疲れた。

◯特に、耳成山は、平地に存在する山だから、余計によく見えるし、遠い。藤原宮跡から耳成山までは、およそ2kmなのだが、随分遠く感じた。畝傍山、香具山と登って来て、最後が耳成山だった。

◯耳成山の麓には、池があって、古池とあった。万葉歌碑が建っていて、次のようにあった。

    耳無の池し恨めし吾妹子が

      来つつ潜かば水は涸れなむ

          作者不詳

◯古池は、まるで小さな池である。とても人が溺れるような雰囲気は無い。ただ、この池は伝承に包まれている池である。

◯耳成山の登山口は、山口神社への参詣道となっていて、鳥居をくぐって中へ入る。その鳥居の脇に「名勝 大和三山 耳成山」の標柱があって、文部科学省の「名勝 大和三山 耳成山」案内板が設置してあった。

      名勝 大和三山 耳成山

            平成十七年七月十四日 文部科学省指定

 奈良盆地の南部に位置する、香具山(一五二・四m)、畝傍山(一九九・二m)、耳成山(一三九・七m)の三つの小高い山を総称し、大和三山と呼びます。。香具山は桜井市の多武峰から北西に延びた尾根が浸食により切り離され、小丘陵として残存したもので、畝傍山と耳成山は盆地から聳えるいわゆる死火山です。

 三つの山は古来、有力氏族の祖神など、この地方に住み着いた神々が鎮まる山として神聖視され、その山中や麓に天香具山神社、畝火山口坐神社、耳成山口神社などが祀られてきました。また、皇宮造営の好適地ともされ、特に藤原宮の造営に当たっては、東・西・北の三方にそれぞれ鍵山・畝傍山。耳成山が位置する立地が宮都を営むうえでの重要な条件にされたと考えられています。

 大和三山を詠んだ和歌は多く、重要な歌枕として鑑賞上の地位を確立したほか、近世の地誌、案内記、紀行文などでも紹介され、万葉世界を代表する名所として、広く知れわたるようになりました。

 耳成山は大和三山の中では最も低い山ですが、円錐状の整った秀麗な山容をしています。畝傍山と同じく瀬戸内火山帯に属する死火山で、浸食や盆地の陥没と堆積によって、現在の姿となりました。万葉集の中で耳成山が単独で詠まれる例はなく、他の二山とともに詠まれました。

      耳成山を詠んだ万葉歌

  香具山は 畝傍ををしと 耳梨と 相あらそひき

  神代より かくにあるらし 古昔も 然にあれこそ

  うつせみも 嬬をあらそふらしき

          中大兄皇子(巻一   一三)

          橿原市教育委員会  奈良森林管理事務所

◯なかなか立派な案内板だが、勉強不足は否めない。第一、大和三山を、「香具山・畝傍山・耳成山」と並べる時点で間違っている。大和三山は、古来「畝傍山・香具山・耳成山」と並べるに決まっている。何でも無いことだが、これには絶対に譲れない理由根拠が存在する。文部科学省ふぜいが勝手に改めることは許されない。まことに文化の無い話である。

◯また、耳成山には次の案内板も設置してあった。

      耳成山国有林

   ここは歴史的にも有名な大和三山の一つで、

  標高一三九・七mと三山の内で一番低く、死火

  山です。もとはもっと高い山でしたが、盆地の

  陥没で沈下し、山の頭部が地上に残された単調

  な円錐形で、人の顔にたとえれば耳が無いよう

  な山なので、耳無山⇒耳成山と呼ばれるように

  なったとも言われています。

    耳無の  山のくちなし  得てしがな

    おもひの色の 下染めにせむ

          古今和歌集 よみ人しらず

    奈良森林管理事務所

◯奈良県橿原市に存在する耳成山で、耳成山の名は、説明できない。それは、奈良県橿原市に存在する大和三山そのものがレプリカであって、本物の大和三山では無いからである。本物の大和三山は、日向国に存在する、次の山々になる。

  うねびやま=霧島山(1700m)
  かぐやま=桜島山(1111m)
  みみなしやま=開聞岳( 924m)

◯詳しい話は、次回にしたい。