琵琶湖 | 古代文化研究所:第2室

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ブログ「古代文化研究所」で、書き切れなかったものを書き継いでいます。

 

○2022年11月30日に、比叡山裳立山の紀貫之公墳にお参りして来た。帰り道、日吉神社と義仲寺にもお参りし、芭蕉の墓参りも済ませて来た。その際、これまで、気になっていることを取り上げて案内している。それが大津地名であり、近江地名である。

○これまで、ブログ『近江大津宮』で大津地名問題を取り上げ、『近江地名』で近江地名を問題にして来た。今回は、続けて、琵琶湖地名について、考えてみたい。

○琵琶湖は、なぜ、琵琶湖と言うのだろうか? 一般には、琵琶湖が琵琶の形をしているからと言われる。それが気になって仕方が無かった。

○ところが、インターネットで、ウィキペディアフリー百科事典の琵琶湖項目を見たら、驚くほど、丁寧で、詳細なのに、驚いた。ある意味、これ以上、詳しい説明は無いのではないかと言うくらいである。なかなか、こういう項目は少ない。

      琵琶湖

琵琶湖(びわこ)は、滋賀県にある日本最大面積と貯水量を持つ一級水系淀川水系」に属する一級河川である。国土交通大臣から委託を受けて滋賀県知事が管理を担う。湖沼水質保全特別措置法指定湖沼で、ラムサール条約登録湿地でもある。

古くは淡海・淡海の海・水海・近江の海・細波・におの海などとも呼ばれ、「びわ湖」「びわこ」と表記されることもあるほか、「Mother Lake」の愛称や「近畿の水瓶」の別称で呼ばれることもある。

約440万年前に形成された古代湖であり、40-100万年ほど前に現在の位置に移動してきた。内湖ないこを含む多様な地形や多数の固有種を含む豊かな生態系をもっているが、近現代の開発により失われたり減少したりした地形や種もある。古くから近畿地方の水運水利漁撈における役割を担い、近江八景などをとおして景勝地としても知られ、作品の題材となることも多いほか、環境保全活動も盛んにおこなわれている。

 

○その中に、琵琶湖の呼称項目が存在した。

      琵琶湖

【呼称】

古代の呼称

琵琶湖は元々、近淡海・淡海・淡海の海(あふみのうみ)・水海(すいかい)・近江の海・細波(さざなみ)・鳰の海(にほのうみ)などと呼ばれていた。

古事記』においては、その伊邪那岐の大神は、淡海多賀に坐すなり(上巻)や東の方追ひ廻りて近淡海国に到り(中巻)といった用字で現在の滋賀県のことを表している。同書における琵琶湖を指す記述としては中巻の

  いざ吾君あぎ 振熊が痛手追はずは 鳰鳥の 阿布美能宇美あふみのうみ かずきせなわ

という歌謡のみが挙げられる。一方『日本書紀』には

  淡海の海 瀬田の済に かずく鳥 目にし見えねば憤りしも

という歌謡をはじめとし、淡海の海淡海の表記が多数見られ、近淡海の用字はほとんど見られない。同書における近江の表記は、天智天皇5年に是の冬に宮都の鼠、近江に向きて移るとあるなど、奈良時代近江遷都以降に顕著に現れる。その後の『続日本紀』の717年(養老元年)の条には行至近江国 観望淡海とあり、近江を国名、淡海を琵琶湖と使い分けていたことが示唆される。(中略)

中近世の呼称

琵琶湖という呼称の最も古い用例は、木村 (2001, pp. 157f.) によると、室町時代明応年間(1492年 - 1501年)に活躍した僧侶景徐周麟漢詩集『翰林葫盧集』の中の七言絶句「湖上八景」における

  瀟湘八幅 其の図案ずるに 長命寺の前 天下に無し 

  一景新たに添う有声画 袖中に携えて琵琶湖へ去る

である。なお、琵琶湖を琵琶の形に喩えた例はこれよりも古く、比叡山延暦寺の僧侶光宗が1311年から1347年(応長元年から貞和3年)にかけて編述した『渓嵐拾葉集』に

  尋云。湖海是弁財天三摩耶形ナル方如何。答。凡水海ノ形ハ琵琶ノ相貌也。

との記述がある。周麟が琵琶湖の呼称を用いている漢詩はもう1つあるが、それに次いで古い琵琶湖の用例は江戸時代の儒学者伊藤仁斎による1645年(正保2年)の漢詩「過琵琶湖作」まで待たなければならない。(以下略)

 

○意外に、琵琶湖と言う呼称は新しいことがよく判る。それよりも、ウィキペディアフリー百科事典がこういう情報収集をしていることに、驚く。もうすでに、ウィキペディアフリー百科事典のレベルではない。余程の専門家の手になることは間違いない。

○お陰で、私たちは最高の情報を手に入れることができる。当古代文化研究所がここで話したかったことも、余すところなく掲載されているのに、驚く。この情報の凄いところは、その史料の豊富さであり、正確さである。

○結果、琵琶湖の呼称を使い出したのが僧侶であることを見逃してはなるまい。それが比叡山延暦寺の僧であり、臨済宗の僧であることは、至極、当然なことである。ここには比叡山延暦寺があり、三井寺が存在し、竹生島には、巌金山宝厳寺がある。

○琵琶湖が巌金山宝厳寺の弁才天信仰から命名されたことは、間違いあるまい。よく琵琶湖が琵琶の形状をしているから、琵琶湖だと言われるが、それは俗説に過ぎない。もともと琵琶湖周辺が信仰の深いところであることは、寺社の多さからも確認される。

○弁才天の持ち物が琵琶なのである。ある意味、弁才天を象徴するものが琵琶なのである。加えて、弁才天は水神信仰でもある。したがって、琵琶湖そのものが弁才天のものだと言うのが琵琶湖命名の真実である。当古代文化研究所では、そういうふうに判断する。