『80-50問題』って、なに? ⑥ | SIS日記

SIS日記

NPO法人SIS(シス)スタッフによるリレー形式の日記です。
「こころが動いたこと」や「共有したいささやかな出来事」など
スタッフの「想い」を定期的に更新していきます。
どうぞお楽しみに!

「する・できる」支援の失敗  
 
 
 内閣府が、ひきこもり調査を行った結果を発表しました。朝日新聞にて報道された内容を転載します。
 
「40~64歳のひきこもり状態の人が全国に61・3万人いる。内閣府は29日、そんな推計を公表した。『中高年ひきこもり』の全国規模の数が明らかになるのは初めて。従来ひきこもりは青少年・若年期の問題と考えられてきたが、その長期化・高年齢化が課題となる状況が浮き彫りとなった。」
 
「〈ひきこもり〉 国が用いる定義では、仕事や学校などの社会参加を避けて家にいる状態が半年以上続くことを言う。」(朝日新聞デジタル版より)
 
 半年(6ヶ月)以上、社会参加していない状態をひきこもりと定義しているわけです。社会参加とは、会社や企業に所属して仕事をし、報酬を得て税金を納めていることをいいます。
 
 短く言うと、納税者たることを言います。学校も社会参加に組み入れられているのは、将来の納税者になっていくことを予定されているからです。
 
 『半年(6ヶ月)以上』という期限を言い始めたのは、精神科医の斉藤環氏です。その著書「社会的ひきこもり」(PHP新書)で、この期限(半年以上)にかかわる根拠が示されているわけではないし、示すこともできないでしょう。ただ、世間は、期限が示されて大騒ぎし、あたかも「半年以上」によって大変なことになるかのような印象だけが一人歩きしはじめました。その印象を、国(内閣府)も採用し、踏襲しているということです。
 
 つまり、納税者たる営為をして社会参加を「する・できる」という外面が基準になっているのであり、当事者の内面がどうあれ、一律に「ひきこもり」としてカウントされるのです。                    
 
 こういう「する・できる」の外面を基準にして『ひきこもり支援』が講じられるのですから、らちが開かないのは当然です。
 
 ヨットで外洋に連れ出し、海に放り投げて泳がせ、「お前には這い上がる力がある!」として恐怖の中で「する・できる」を覚醒させようとしたヨットスクールが「ひきこもり問題救世主」であるかのように喧伝された時代もありました。
 
 「お前は、ただ息をしているだけか!」と罵倒し、殴りつけ、その剣幕で圧倒し迫る塾施設が一時ひきこもり対応の寵児のごとくもてはやされました。
 
 それらの暴力的「引き出し屋」が退場した後に、ソフトな対応を売りとする施設やフリー・スペースが登場するのですが、「さぁ、少しずつステップを踏んで社会参加しようね」と、あらかじめ設定された「する・できる」を出口にしているだけです。
 
 かくして、ひきこもり「80-50問題」は、少し前には「70-40問題」だったし、また少し前には「60-30問題」だったのです。