自閉症は、体質? 障害? (3) | SIS日記

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NPO法人SIS(シス)スタッフによるリレー形式の日記です。
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「前を向く」の「前」って? (♯発達障碍)
 
 
   自閉症(自閉スペクトラム症・発達障碍)は、「体質」なのか、「障害」なのか。東田直樹さんの幼稚園時代の体験を元にして考えています。(1月30日、31日付けコラム参照)
 
 浸ってしまう。それは、私たちにも、身に覚えがあります。懐かしい気がします。しかし、おそらく私たちは、東田さんよりもずっと手前で引き返すようになって(して)いる気がします。そうでなければ、すぐに周りの「現実社会」との関係がギクシャクしてしまうことがわかっているからです。
 
 ギクシャクしてしまっても、「浸り」からなかなか引き返せ(さ)ない。こういう「体質」が関係しているのではないか。こういう仮説を持っています。
 
 話を進めましょう。
  東田さんが、幼稚園で、「前を向いてと指示されても、どこが前だか混乱します」の場面に戻って考えてみます。
 
 そもそも、『前』とは何でしょう。大自然のただ中なら、「前」も「後ろ」もありません。もしあるとすれば、それは人間が人工的に人為的に、「前」という基準をつくってつくって持ち込んでいるだけです。つまり、人間社会がつくった人工的・人為的な約束事のなかに、その基準があるだけです。
 
 東田さんが指示された「前を向いて」の『前』は、「ステージを向いて」とも「○○先生の方を向いて」とも言っていません。具体物を差していません。「前」という言葉だけです。幼稚園の教員は、「前」と言うだけで指示が通ると考えているのです。つまり、指示が完結する基準は、抽象的な「前」で良いと考えていることがうかがえます。
 
 もともと人工的・人為的な約束事である方向性を、抽象的な「前」ひとことで完結させようとする。これを基準にして、その時に「できない」と問題にするのは乱暴なことです。まして、「障害」だとラベリングするのは、どこかおかしいと思います。
 
 東田さんは、『前』という言葉は理解できています。「前を向いてと指示されても、どこが前だか混乱します」と書いているのが証拠です。「前」と言われてわかるけれども、咄嗟のことで、具体的にどこのことなのか確定しづらかったのでしょう。
 
 要するに、「浸り」からの切り替えが遅めで、抽象的な言葉から具体物を確定するのが遅めになる。「遅め」ということです。程度の差です。「先天的な脳障害」とは、違うと思います。
 
 「前を」と言われて脳内作業で把握し、自分の立ち位置から「前」なる指定位置を推測ならびに特定し、自らの身体を回転・移動させるという、電子ナビゲーション機器の如き一連の脳神経作業が必要とされます。ふつうの人でも、ウロウロすることがありそうです。
 
 おまけに、「前」は、たいがい、子どもが決めたものではないし、子どもの欲求から出たものではないのです。それに、遅れる子があるものだという予期や柔軟な対応(十分な人員配置をふくめ)などされないことが往々にしてあります。
 
 かんたんに決めつけずに、じっくり考えることが大事だと思います。(鮮)