どさりと重い鞄のなかは‥



誰かから誰かへの



メッセージ メッセージ メッセージ‥



仕分けが終わるまで



郵便屋さんの仕事は終わらない



となりのまちのあの人へ
みんなの思い、配ります








この店を一言で言い表すのは難しい



フライパンやらソーセージやらが



突如 壁からぷらぷらぶら下がり



ノコギリやロープ、タイヤまであって



いっけん関係のないものどうしが



店主のもと絶妙な調和を保つ



古い木の床はぎしぎしと軋み



握られすぎたドアの取っ手は取れかけ



流れてきたたくさんの時間



何にも逆らわず朽ちていくことで



むしろ豊かになるような



さあ 途切れない物語を語ろう



この店にしか語れぬ物語
たくさんの村人たちの記憶







空の色味、風のにおい



陽ざしのさしこみかた



木々の新芽のふくらみ



山のむこうの気配



今日はそこかしこに春を感じる



すべてのものが動きだす
みんなはじまりに備えてる







ねぇ
みんなは
忘れられない夢を見たことある?




わたしはまさしく今朝見たの
ひときわ目立つ大きな美しいお屋敷



住人のわたしは
絨毯をひかれた階段を駆け上がって



華やかな音楽が流れる舞踏会の舞台へ



豪華なシャンデリアと天井画のしたで
わたしはゆったりと優雅なお辞儀



ドレスなんて着たこともないのに
着心地や衣擦れの音まで感じていた



目がさめて窓の外を見ると



舞踏会の部屋から見えたお屋敷と噴水



思わずはだしのまま外に飛びたすと
そこにはいつもの小さなお庭…


次はいつあのお屋敷に行けるのかしら
そのときはあの方と
ワルツを踊りましょう










外がこんなにまぶしいのは



夜通し降り続けた雪が



村一帯を一晩で覆い尽くしたから



じつに美しくさわやかな朝



今日の夕方にはこの教会で



特別なミサが行われる



伸びやかなオルガンにあわせて
歌えよ、聖なる日の賛美歌を



「異国の果ての小さな町に



汝は静かに横たわり



深き眠りの中



星は静かに流れゆく



暗闇に輝く常しえの光



今宵 希望も畏れも汝の下に」