西日の差し込む粉っぽい水車小屋で



汗を流しながら働いていた父親



手も服も粉だらけ



何十年もやってきた手の感覚で



いつも挽いたばかりの小麦と対
話していた



今となってはとても懐かしい



あの小さな小屋の空気



ぎっこんばったんという鈍い音



そして西日に照らされていた父の顔






(…つづきです…)

昔ながらの暮らしの美しさを



子供たちに伝えたい



リース飾りのひとつひとつ



クッキーの型のひとつひとつに



それぞれ込められた願いと



意味があることを



大きな焼き釜のある



村のはずれのパン屋まで



みんなでクッキーを運ぶころには



すっかり夕暮れ



今年もまた村のために



クッキーを焼くことができました



毎日がずっと紡がれていくこと



飾り気はなくとも揺らぐことのない
伝統が受け継がれていくこと



村人たちの願いはおなじなのです










今年もまた



迎えることができたこの季節



おばあさんのおばあさん



そのまたおばあさんのころから



受け継がれてきた古い風習



来るべき聖なる日のため



今日は村のみんなで力をあわせ



伝統の飾りクッキーを焼く日



なにかと村の集まりが多くなるこれから



美しく飾り付けのされた



集会所は人の出入りが多くなり



静かな慌ただしさに包まれてゆく

…つづく…








連なり生まれてくる



音のひと粒ひと粒に



可憐な冬の妖精が腰かけて



弾みながら高く舞い



ふんわりおりてまた舞い上がる



透き通った冬の日差しに憧れて



列をなして窓から飛び立った



優しい旋律 丘を越え



はるか山々の白いいただきへ


冬の空気のなかでは



なぜ光は細かくきらめくの



揺らめきながらまたたいて



空気の純度を強調する



光が冬の情景の輪郭を描き出す



夜になり



気温はこんなに下がっているのに



不思議なほど
かぎりなく温かい冬の情景