・・・・オレは頭が弱いから、何かを深く考え込むのは苦手なんだ。
でも、考えなきゃいけないのに、・・・・頭がパンクする。
マサトは、またODをした。今度は、ストックしていた分全部。致死量オーバー。
・・・・・オレは酷いね。病院にマサト連れて行くどころか、このままオレも一緒に逝くって、手首をバッサリ切った。
疲れた。本当に。・・・・頑張りたいよ。うん、でも、もう、よく解らない。
ぱっくり開いた傷口から血が溢れて、マサトのベットを汚した。
色んな感情が湧いては消え、湧いては消え。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・・・・・・・・・・・・
頭の中はその言葉でいっぱいになる。
気付いたら、病院。
手首には包帯が巻かれてて、・・・・・・・また、助けられた。
ふらふらしながら、ベットから降りて、廊下に出たら看護婦さんが、オレを個室に案内してくれた。
何となく、解る。・・・・・マサトが運ばれた部屋だ。
カーテンを右手で少しどけて、ベットに横たわるマサトを見た。
点滴二つが投与されてる。
・・・・・・・・生きてるの?
看護婦さんは胃に管を通して、薬を抜いたって言った。
オレは椅子に座って、マサトの寝顔を見る。
死んだみたいに、静か。
オレ達は、どうしたら、自由になれるかな。
死ねないし、・・・・・でも、もう一緒には生きてけないし。
オレはマサトが居ないと、ダメになる。
マサトは独りになると、死のうとする。
だから、一緒に居たのに。
静かに静かに、暮らしてたのに。
・・・・・・・・・・母さんは、今更になってオレを引き取ると、言い出した。
何処で調べたのか、マサトの家に来て、親父さんに、食って掛かる。
新しい、旦那さんと、・・・その間の子供?オレからしたら義理の弟。
母さんは、もう新しい家庭を持ったのなら、もういいだろ。
放っておいてよ。
どうせマサトの家が裕福だから、金目当てだろ。
もう、そーいう醜い姿でオレの前に現れないでよ。
あんたなんかもう要らないんだよ。
何で、そこまでしてオレの倖せとか、平穏を壊すんだ。
マサトのそばに居させてよ。お願いだから。
マサト独りぼっちなんだよ。
判んないだろ?あんたみたいな、自分の子供にまで自分のエゴを押し付けて痛めつけるヒトには。
そんな、痛みとか、・・・・・解るわけない。
お願い。お願いだから。
マサトのそばに居させて。・・・・・お願い。
邪魔しないで。静かに暮らしたいんだよ。
唯一の居場所は、マサトのあの黒い家具と、黒いカーテンで統一された、暗い部屋。
あの部屋は、本当に掛け替えのない、オレの大切な場所。
マサトの匂いが溢れてね、落ち着くんだ。
ねぇ、何処に行けばいいの?
マサトはオレが引き取られたら、施設に入れられる。
親父さんは面倒なんか見る気ないから。
・・・・・マサトの未来は、決められてる。
マサトの意思も何も関係なく。
完全看護で、体が完全に固まって動かなくなって、その生涯を終えるまで、・・・その施設で暮らすんだ。
マサトは、プライドが高い。
ヒトの世話になるのが大嫌いだ。・・・・でもヒトには世話焼き。
オレは、マサトに何をしてあげられたのかな・・・・?
まだオレは何一つ、満足するようなものを返せてないよ。
マサトとオレは、ずっと寝てないし。
・・・・・寝てる時間が勿体無いような、二人で居られる時間をちゃんと目で見て記憶しておきたい。
解らないよ。・・・・・君にはわからない。
オレがマサトの心の奥までは見えないように、君にも、・・・・・・解らないことはある。
だって他人だから。
友人だよ。大切な親友。・・・・でも他人だ。
マサトもオレもお互いは他人。
他人だから「他の人」だから、違う目線からお互いを見れるし。
自分の持ってない、多くのものを与えることが出来る。
そうやって、分かり合ってく。
たくさんの月日をかけて、ゆっくり。
マサトと出逢って、3年が経つ。
・・・・・・・マサトがそばに居たから、オレはちゃんと生きてこれたのに。
ずっと、そばに居たいのに。それだけなのに。
そんな願いも、叶えてくれないの?神様。
母さんの元に戻るのは嫌だ。
また虐待されたら、どうしよう。25にも成って、臆病で小さいし。
・・・・・・死ねたら、楽なのに。
許してくれない。
だったら、誰か殺してよ。
独りは嫌だ。
独りに戻るのは嫌だよ。
マサトの声とか、匂いとか、無いと・・・・・・ダメだよ。
怖いよ。
とても怖い。
・・・・・・オレは子供みたいに声を上げて、泣いた。
マサトは本当に死んでるみたい。
クリスマスなのに。
最後かもしれない、2人で過ごすクリスマス。
・・・・・奇跡くらい起こればいいのに。
小さくていいから、マサトを助けてあげて。
マサトは何も欲しがらない。
だからお金ばかり貯まる。
貯金なんか物凄いケタで。
使い道がない。
お金はあることはイイコトだけど、・・・・・・あると、オレの母さんみたいな人が寄って来る。
那未さんもユキちゃんもお金目当てじゃないのに。
オレ達が使わないから、その代わりに2人に使う。
・・・・・それでいいのになぁ。
オレはマサトが居てくれたら、それでいいのに。
どんな世界でも、マサトが隣に居てくれたらなぁ・・・・・・。
逃げれたらどんなに楽だろう。
2人で遠く遠くへ。
マサトの足も、いつか動かなくなるよ。
歩けなくなる。
表情も、消えるって。
時間は、止まらない。
マサトの中のメグミさんが変わらないように。
死んだ人だけが、永遠の時の中、静かに笑ってる。
メグミさんが、マサトを連れて逝ってしまうかも。
マサト、忘れないで。これだけは忘れないで欲しい。
マサトの居場所はオレだ。
弱いし、子供だけど、誰よりも想ってるし大切だ。マサトが一番。
だから。
早く、帰ろう?
あの部屋に帰ろう?
マサトが帰って来た時、ちゃんと笑えるようにするから。
「おかえり」って抱きしめてあげる。
何度でも。
何度でも。