耳の聴こえない絵描き
ソルト/Shiori Ueda
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相方・翠(すい)が永眠し、土葬され、
100日が過ぎた。
翌日から綴っている「いつか未来で」も105話に。
ひとつの区切りとして次の話を綴ります。
「やがて骨となるまで」
相方・翠にガンが発覚した、きっかけから語るよ。
2018年1月4日
Sal Terrae サール・テッラエ は本当は別の場所で、
2018年5月に行われる予定だったんだ。
そのときに翠と話して決めたことが、
「翠は生命のまんだらを描く」
「ソルトは死のまんだらを描く」
わたしがそのとき決めた、
死のまんだらの名が 《 やがて骨となるまで 》
その数日後、翠が言った。
「実はおなかがおかしい。不正出血が続いている」
「でも、閉経かもしれないし様子を見る」
わたしは、
「5月に Sal Terrae をするのだから、何かあってはいけない。今から病院にいって」と伝えた。
その後の翠からの返事は
「ガンだった」
そこからめまぐるしい日々が始まり、
5月の Sal Terrae 企画は延期になり、
そして夏、告げられた
「余命3カ月」
その夏に翠は
2018年11月に「個展(~満ち満ちて・光~)をする」ことを決めて。
「個展」に向けて前向きに闘病していく中、
脳に腫瘍(ガン)が及び
まんだらを描けなくなり、記憶がなくなり、心が壊れて
わたしと、もうひとり、福岡で翠のサポートをしてくれていた「さあらさん」は、話し合って…
こう決めた。
「さあらさんは”友人やすみん”として山口泰美を看取る」
「ソルトは”相方・翠”として山口泰美の最後の幻想まんだらの展示をする」
そう、わたしたちは、翠が生きられる可能性は全く考えなかった。
ほんのわずかも、希望を持たなかった。
冷たいことであるかもしれない。
けれども、わたしたちは「生きることは苦しい」ということを知っているから。
苦しみ悶える苦悶の死を迎えるよりも
穏やかに安らかに悔いのない死を。
2018年11月の「幻想まんだら~満ち満ちて・光~」の時には
すでに翠はこの世にいないだろうという想いを隠して、展示に向けて動いていたんだ。
とてもつらいよ。
ただひとつの救いは、なにもしらない周りのひとたちが、懸命に翠の回復を祈ってくれていたこと。
それらのあらゆる奇跡が、祈りが重なって、
展示案内(2018年11月、無事終了しました)
レポート
翠は記憶をわずかに戻し、心を戻し、
展示会で共に立つことができた。
本当に奇跡だよ・・・
そして2018年12月30日、眠るように穏やかに死に
12月31日、ムスリム(イスラム教徒)として土葬された。
そう、闘病のさなか、翠はイスラムの神に帰依したんだ。
ゆっくりと土の中で骨になり、大地に溶けていく。
奇しくも…かな
そこに、わたしの《やがて骨となるまで》と重いが重なった。
「紡ぎ紡いでわたしはうたう。歌いたい。曼荼羅の歌を」と翠はいつも言っていた。
だから、わたしは叫ぼう
わたしたちの紡いだ歌を見てくれ、わたしたちの咲かせた万の華、幻想まんだらを見てくれって。
見てほしい、「生きたい」と「死にたい」とが重なる、生命のうたを。
2019年4月21日
(文/ソルト)