民法演習① H27‐27 | 森永の小部屋 

森永の小部屋 

主に教室受講生に対して書いているブログです。このブログに掲載していることは、TACの公式見解ではなく、森永個人の主観に基づくものです。また、記事は万全を期しておりますが、万が一不利益を被られたとしても責任は負わない旨ご了承ください。

受講生の皆様、お疲れ様です。

 

今日は、民法の演習を通して、一回目~二回目の講義で伝えたかったことを。

 

受かる人はこのような勉強をして、受からない人はこのような勉強をするとか、そんな話をしたと思います。今回の記事で、そのイメージを掴んでください。

 

過去問H27‐27

 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

はい、答えはいいのですが、注目してほしいのは肢ウです。これこそ、本試験で合否をわけるタイプの問題です。高確率で合格するためには、このような問題に強くなることが必要です。

 

さて、基礎知識を確認しますと、被補助人には同意が必要とされる場面がありました。補助開始の審判ですね。これに対し、被保佐人には、保佐開始の審判の際に同意は不要でしたね。はい、ここまでは基礎知識です。

 

多くの独学生や、キーワードの暗記しかしていない受験生は

 

被補助人→同意

被保佐人→同意不要

 

というキーワードしか押さえていませんし、このキーワードを使って反射で解いています。無意識的に。無意識だから、治すのはなかなか難しい

 

さて、被補助人の同意が必要、と講義で説明したのは、どのような「場面」だったでしょうか?

 

これは、被補助人に関する制度をスタートさせるかさせないか、という「補助開始」の場面ですね。そして、「保佐開始」の場面では被保佐人の同意は不要です。ここまではいいですね。

 

では、この知識とウが同じなのか違うのか、という点を意識しながらウを読んで見てください

 

 

はい、どうでしょうか。ウは被保佐人という制度をこれからスタートさせる、という保佐開始の話をしているでしょうか。違いますね。ウは、これから保佐開始を始めるかどうかに関する同意の話ではなく、代理権を付与するかどうか、という場面で同意がいるかどうかの話です

 

一回目の講義で言いましたが、法律の勉強は抽象的な文章を自ら具体化し、自分でしっかりと考えて推論をすることの繰り返しです。もう、これに尽きます。

 

現場でこのウに関する知識がスッキリと思い出せなかったとしても

 

「補助開始・保佐開始という単純な話ではない。被補助人の同意○、被保佐人の同意×という知識で解いていいかどうかわからないんだから、とりあえず保留して先に進んで、その他の肢で答えが出ないかどうかを検討しよう」

 

これが合格する人の思考です

 

しかし、点数が伸びない人は、「ウは×に間違いない!」と断定して先に進み、組合せを見ながら迷宮入りしてしまいます。

 

問題文を読んで場面を想定し、抽象的な文章を具体化する

 

基本テキスト・レジュメの知識で解く

 

わからないのに断定しない

 

この点が本当に出来ているのかどうか、今一度確認しましょう。

 

考えることもなく、それっぽいキーワードに飛びつくことの内容に。特に、テキストを読まずに問題演習を中心に学習している人に、このような傾向がみられます。

 

初学者の方は最初が大事。このような癖がつかないように。一回つくと、大事な場面で出てしまいます。勉強が忙しく、時間の制約が厳しい答練になる直前期になればなるほど出ます

 

一度このような思考がついてしまった方は、普段の問題演習のときから、場面を想定する癖をつけていく必要があります。そして、普段の基本テキスト・レジュメの読み込みから意識する必要があります。

 

たとえば、今回の話である、補助開始の場合の同意、保佐開始の場合の同意、代理権付与の際の同意に関しては、民法①のレジュメに記載されている内容です。今年は形式を少し変えましたが、昨年までのレジュメにも掲載していました。このような文章を読んではいるけど場面は想定していない、というような勉強をしていないでしょうか

 

今回の問題はとても良い問題だと思います。同じ話が出るとは限りませんが、試験委員がこのようなひっかけを用いていることを把握し、他の論点でこのようなひっかけ(違う場面であるにもかかわらず、基礎知識で飛びついてしまうような肢)が出されても対応できるように、自ら場面を想定する癖をつけてください。

 

では今日はここまで。お疲れ様でした。