縛られる姉 1 | 白金家の座談会

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 眠かった。夜に居間でぼうっとしていると、隣で同じくぼうっとしていた理子姉がテレビのチャンネルをいろいろ変え始める。俺は寝たふりをしつつ、理子姉がどんな番組に興味があるのかを見ようとしていた。
「……うー、つまんないなぁ」
 地上波ではどうもいい番組はなかったようで、CSチャンネルをいろいろと見回り始めた。すると、何故この時間にやっているのかわからない姉弟モノのアニメに当たった。理子姉の指がそこで止まり、俺も薄目を開けながらそれを見ることにした。
 液晶の中で姉弟と見られる人物が絡み合っていた。弟が姉をロープで縛るシーンをやっている。姉の方は「こんなこと本当はしちゃいけないのに」と思いながら縛られることに喜びを感じているようだ。理子姉の反応はというと、何だかチャンネルを変える気配がないようで。それどころか食い入るように見ているようにも見える。
「あぅ……お姉ちゃんとしてこれは見ちゃダメな気がするけど……」
 不自然でないように起きようとした時、理子姉は飛び上がってテレビを消した。何だかこういう反応をしている理子姉が可愛いから、少しだけいじってやろう。
「あれ、テレビのリモコンは?」
「こ、これだけど……」
 理子姉が慌てたようにリモコンを隠したのを見逃さず、きちんと回収した。そして何事もなかったかのようにテレビをつける。例の姉弟アニメがまた液晶に映った。
「あれ、理子姉これ見てたの?」
「え、あ、ち、違うよぉ」
「へぇ、じゃあ他の人が見てたのかな」
 わざとチャンネルを変えず、理子姉と一緒にそのアニメを見ることにした。アニメの中で姉は縛られていて、何だかその事に快感を見出してしまったようだ。理子姉は指をくわえながらそのアニメを見ている。たまに俺が理子姉をちらと見ると、理子姉は「こんなアニメは見ちゃいけません」とでも言うように他の方に視線をずらした。
「理子姉、これ見たいの?」
「そ、そんなわけないじゃん、お姉ちゃんなんだから弟とこんなことしちゃいけないしっ」
 そうはいっても理子姉はそのアニメに釘づけだった。眠かったので理子姉の膝をまくらにさせてもらう。理子姉に抱き着くと、彼女は少しびくっとなった。やはりいつもと違って様子がおかしい。
 こっそり理子姉の顔を覗くと、アニメを見たまま顔を赤くして息を荒くしていた。


 次の日の朝から理子姉の様子はおかしかった。居間で古い雑誌などをビニールひもでまとめていると、後ろから見ていた理子姉が何だか物欲しそうにこちらを見つめてきた。洗濯物を畳んでいた愛理姉は理子姉の様子がおかしいことに気付いたらしい。
「理子姉、どうしたの?」
「あ、な、何でもないよ愛理」
「へんなのぉ」
 雑誌をひもで縛り終え、理子姉にも手伝ってもらってそれを玄関先へ運んだ。その途中も理子姉はひもに触ったりしていて、様子がいつもと違った。変だなぁ。
「あの、将君……」
「理子姉どうした?」
「あ……う、何でもない」
 いつもはいろいろと頼れる理子姉も今日は様子がおかしい。理子姉は俺と目を合わせるとすぐにそらしてしまった。わなわなと体も震えている。
 理子姉はすっと立ち上がると、脱兎のごとく自分の部屋へと走って行ってしまった。その姿を俺と愛理姉は見た後、お互い顔を見合わせた。
「将君、何かした?」
「いや、俺は何もしてないんだけどな……」
 昨日少しからかったことがよぎったが、それはないだろう、きっと。

 しばらくして廊下に出ると、理子姉が百合姉の部屋から出てきた。珍しいな、と首をかしげていると向こうが気づいたようで、少し慌てたように去っていく。それを見ていると、部屋からゆっくりと百合姉も出てきた。
「百合姉、理子姉はどうしたんだ?」
「こっちが聞きたいわよ。将、理子に何をしたの」
「俺は……」
 とりあえず、心の中で引っかかっていることは全て話した。主に例のテレビの事で少しからかった事だが。百合姉は小さなため息を吐くと、左手で俺の頭をぽんとする。殴られるかと思って身構えたが、それがかえって百合姉から笑われる要因となってしまった。
「その程度では殴らないわよ。ただ、将もなかなかやるようになったのね、て」
「なかなか?」
「フフ」
 百合姉はそう言うと、何か準備しなくてはいけないことがあるらしく、部屋へ戻っていった。俺は縛った雑誌を玄関に出さないといけないことを思い出し、居間に戻った。