カラオケの姉 1 | 白金家の座談会

白金家の座談会

ブログはもうほとんど書いてません。
現在は「小説家になろう」で活動してますので、新作が読みたい人はお手数ですが向こうで私の名前を探してみてください。
サイト中段のアンケートは時折覗きに行きます。

春休みも終わりの方に近づき、何か思い出づくりにと愛理姉が俺と一緒にカラオケを企画してくれた。予約を取った後愛理姉と店に入り、受付から部屋の番号が書かれた伝票をもらった。部屋に入って扉を閉めると密室という実感が湧いてきて、愛理姉と俺は顔を見合わせた後に少し恥ずかしそうな顔をした。

「……2人きり、だね」

「だな」

「そ、そうだ、ジュース取りに行こうよ」

 そう言って愛理姉は俺を引っ張って廊下へ出た。密室でなくなったため愛理姉は少し楽になったのか、ドリンクバーの所で俺に笑顔でコップを渡した。その天使のような微笑みで、語彙が貧弱かもしれないが、ドキッとした俺はコップを受け取るまでに少し戸惑ってしまった。コップを受け取るときに愛理姉の指と俺の指が触れ、それだけのことで恥ずかしくなってしまう。愛理姉もはっと息を呑んでいた。

「あ……将君はコーラ?」

「ゼロだけどな」

「私はカルピスだね」

 愛理姉は気を取り直して、とでも言うかのようにそう言い、自分のコップにカルピスを注ぐ。俺もその次にコーラを注ぎ、飲み物を入れた後愛理姉と一緒に部屋に戻った。

 ドアがカチャリと閉まり、俺と愛理姉は再び密室の中で二人きりになる。テーブルに座るとき、一応俺は愛理姉の向かいに座っていたが、今の感情がとても変だ、という事を理解するのにいくらか時間がかかってしまった。

 愛理姉は義理とはいえ姉。同じ屋根の下で住む義姉弟同士が恋愛に似た感情を持つことは通常はおかしいことなのだ。それなのに……愛理姉を見ると、そうなってしまう。

「……将君? 歌わないの?」

「あ、俺はいいよ。愛理姉から歌って」

「うん、じゃあ……」

 愛理姉は選曲のタッチパネルをペンでつついて曲を予約した。画面には「メルト」の三文字が出てきて、愛理姉は恥ずかしそうにマイクを持つ。脇をしめている姿が何とも愛らしく、しばらくぼうっと愛理姉に見とれていてしまった。いや、何を見とれているんだ、と自分を落ち着かせる。愛理姉とは恋愛はしてはいけないんだ。でもキスは……あれ。

「あーさー目が覚めてー、まぁーっさきにーおーもーいーうーかーぶー」

 愛理姉はか細い声をひょろひょろとさせながら歌っていた。自信がないのだ、とこちらもわかった。なんといったって、実際の所愛理姉と二人でカラオケに行ったのは初めてだったのだ。愛理姉が慌てるのも無理はない。かわいいから良しだけど。

 マイクを持つ指にも視線がいった。いつも通り白く滑らかなその指は大事そうにマイクを抱えていて、それでも弱く、気を抜けばマイクが落ちてしまいそうだった。マイクの先端に度々当たる愛理姉の口からは時折息が漏れ、その息と共にかわいらしい声がマイクによって部屋全体に響いていた。どうしようもなく興奮してしまい、これではいけないと何度も我に返るが、愛理姉のその姿は俺を誘っているようにしか見えなかった。ナニに。

「ぴーんーくーのーすかぁーとおはなーのぉかーみーかぁーざり」

 聴いているこちらが恥ずかしくなってくるような、そんな愛理姉の歌。それでも悪いという訳ではなく、愛理姉が恥ずかしがっていることが声越しに伝わってきてしまうのだ。彼女の溜め息と赤く染まる頬。つい、つい愛理姉を見てしまう。自分の姉さんに見とれていることが異常なことは分かってはいたが、止められない。

「きょうのぉー、わーたーしーはかぁー、わぁー、いーいーのーよー!」

 ぼわっと愛理姉の顔が真っ赤になった。サビを頑張って歌っている愛理姉を見ているとこちらは彼女を襲って、自分のものにしたくなるような衝動が湧いてきてしまう。ああ、愛理姉が愛しい。このままカラオケボックスで押し倒してめちゃくちゃにしてやりたい。抱き合ってキスをした後お互いの身体を触り合って、そして服を……え。

 駄目だ、落ち着くんだ。あぁ、いいよ愛理姉。その姿は俺を誘っているのか? 後ろからこっそり抱き着いてやってもいいんだ。二人きりだから俺だけのものにしてもいいんだぞ? あ、ちょっと待て、たんま、理性がぁぁぁぁ。

「……え、将君?」

 自分が抑えられなかった。愛理姉を後ろから抱いた俺はそのまま愛理姉をソファに押し倒し、その上から愛理姉を――