普通に眠れる有り難さに感謝しながら目が覚めました。
翌朝、病室に気さくな中年女性の看護師さんが来て、これからの治療内容や1日のスケジュールの説明をしてくれました。
看護師：「○○さん、大変でしたねえ！では早速今後のスケジュールの説明をしますね。先生から聞いたと思うけど、糖尿病の治療は食事制限と運動療法、インスリン注射による治療がメインになります。まずは食事療法ですけど、あなたの身長と体重だと一日1,800～1,600キロカロリーの食事になります。そうねえ。結構肥えてらっしゃるから1,600キロカロリーにする？」
私：「は、はあ。それでいいです」。
看護師：「大丈夫？結構お腹減るわよ♡でも頑張らないと良くならないからね。運動療法はウォーキングが主体ですが、ナースステーションの前の広場にサイクリングマシンがあるから、暇さえあれば使って頂いて結構ですよ♡それと朝・昼・晩の食事の際にご自分で血糖値を測ってもらいます。指先から採血して特殊な機械で測定します。簡単ですから直に覚えますよ♡あとは食事の前にインスリン注射をご自身で打ってもらいますね。そうそう、1週間に３回、専門医による糖尿病の勉強があるので、１階の研修室で１時間ほど勉強してもらいますね♡どう？結構忙しいでしょ？」。
私：「そ、そうですね。」
看護師：「あらいけない！肝心な注意点を説明しなきゃね。糖尿病患者は高血糖だけと思われがちですけど、糖のコントロールが出来ないから、高血糖の反対に低血糖にもなるんですよ。低血糖は体の震えや冷や汗、めまいなどが起こるの。最悪、そのまま意識を失って倒れる人もいるのよ。だから、これらの症状が出た時にこのブドウ糖を渡しておきますね。低血糖の症状が出たら飲むようにしてね。特に外でウォーキングする際は十分注意してね♡」
私：「そんな症状もあるんですね」。
こうしておっかなびっくりの入院生活が始まりました。
運動は嫌いではなかったので良かったのですが、何が大変だったか言うと、食事療法とインスリン注射でした。
一日1,600キロカロリーの食事はマジで辛かった！
普段食べていた大盛り味噌ラーメン＆ライスの約1/3の程度の量。
1,600キロカロリーの食事はこんな感じ。
すぐにお腹が減ってしまい、胃がその量に慣れるまで、ある意味倒れそうでした。
1日に何度も屋上にあるレストランに行って、美味しそうな匂いを嗅ぎに行ってました。
ラーメン、カツ丼、エビフライ定食、ナポリタン、生姜焼き定食・・・どれも上手そう。
奪い取ってでも食べたくなる荒ぶる心を抑えるのに必死でした。
飢餓で苦しむ外国の人たちの気持ちを垣間見る事が出来た気分です。
普通に好きな物をいつでも食べられる幸せは、そうでなくなったときに初めてその有り難さに気付くのです。
私は不摂生していた頃を振り返り気付きました。
「あれだけ食ってりゃ死ぬわな」と。
インスリン注射は下腹の脂肪がたくさんある部分に自分で打つのですが、自分で自分の身体に針を入れる行為はある意味『切腹』に似た様な感覚がありました。
「昔のサムライすげーなあ。俺は針だけど、あの人たちは刀だもんなあ。すげー根性だ」なんて感心してました。
私はなんども躊躇しながらようやく覚悟を決めてズブリと打ちました。
「あうっ！」って感じで。
糖尿病の勉強会にもちゃんと出席し、食事の仕方や、運動するタイミング、糖尿病のメカニズムや恐ろしさなど、真剣に学びました。
そうこうしている内に1週間が過ぎ、入院生活にも慣れ始めてきました。
毎日測る体重は日に日に落ち、1週間で5㎏も減量する事が出来ました。
しかし、なかなか落ちないのが血糖値です。
毎回血糖値を測るたびに「まだ高い・・・」とがっかりしていました。
糖尿病の入院生活は5体満足なので、食事や運動の時間以外は結構ヒマです。
病院にある図書館に行って、糖尿病の専門雑誌が置いてあったので読み漁っていました。
とある日、いつものように屋上のレストランで美味しい匂いをぼけーっと嗅いでいると・・・降りてきました。
神が舞い降りて来ました！
「そうだ！この苦い失敗をこれからのセミナーに活かそう！せっかくヒマな時間がたっぷりあるんだもの！山ほどある医学書を参考に、専門医と一緒にプレゼン資料をパソコンで分かり易く作り、普段やっているお客様のリスクマネジメントを考える前に、健康な身体があってこそ良い仕事が出来るんだというコンセプトで行こう！」と。
ちなみにどこの神様が降りて来たかわかりませんが。
題して・・・『こうすれば、あなたもなれる糖尿病セミナー！』
少年週間サンデーばりに次回へつづく！
次回予告！
いよいよ糖尿病編最終回！糖尿病になったおかげで命の大切さを知る私！