えっ、ウチの子の成績ですか?
まあ、中の下といったところかしら。
日頃の勉強時間ですか?
宿題ぐらいはやっているようだけど、あとはゲームとSNSばっかり。
もうちょっと、勉強に身を入れてくれるといいんですけど。
テスト週間になると、提出物っていうんですか、学校から指示されるやつ。
あれは一応提出してるみたいなんですけど、でも成績は相変わらずで。
中2の息子を持つ加賀谷美咲は訪れた塾の面談で担当者と話している。
はあ、1対1で教えてくれるんですね。
自習室完備で勉強し放題。
なら、ウチの子の成績も上がるかしら。
入会申込書にサインをしようとしたその瞬間、何かが脳裏をよぎった。
一度、主人とも相談して決めさせていただきます。
美咲はそう言って、部屋を出た。
家で相談することも必要だが、別の塾でも話を聞いてみようと思ったのだ。
どうやって勉強しているか、ですって?
別の塾での面談の最初の質問だった。
さあ、問題集をやっては答え合わせをしているみたいですが。
解きなおし、ですか?
やってないかもしれませんね。
そういう勉強の仕方では成績は上がらないと、そうおっしゃるわけですね。
教科書をじゅうぶん勉強した後に問題集に取り組む。
そして、問題をやった後の答え合わせでは、間違った問題や解らなかった問題に、すぐに答えを書き写してはダメ。
そういうできなかった問題を解きなおすことが勉強だと、そういうことですね。
美咲はなるほど、と思いながら、ふと疑問に思った。
こんなことを塾で教えていたら、生徒さん来なくなっちゃうんじゃないですか?
勉強の仕方さえわかれば、家で勉強できてしまうではないか、と思ったのだ。
えっ、塾は教えるだけが仕事ではないって、どういうことですか?
はあ、生徒さんの成績を上げることが仕事なんですね。
そのためには、勉強の仕方も教えるし、わからないところはその根底となっているところから丁寧に教える、そういうことが塾の仕事だと。
さらに、勉強習慣をつけるために、復習すれば必ずできる良質な宿題を出し、それを繰り返すうちに生徒さんが自信と実力をつける、それも塾の仕事だということですね。
だから、1対1でもそういう教え方ができなければ意味がない。
そして、自習室で勉強していても、そばに先生がいなければ質問できない。
最近は、生徒さんの成績を上げることに無関心で、形ばかり整える塾が多くなった、とおっしゃりたいわけですね。
美咲は先に訪れた塾のことを思い出していた。
塾っていってもいろいろあるのね。
今日のことを家に持ち帰って、家族会議を開こう。
そう思いながら歩く美咲の足取りは、家を出るときより軽くなっていた。
小さな決断、大きな未来→https://www.sinsuku.jp
レンヤ「勉強むずかしいな」
ブンタ「レンヤも塾に行くかぁ」
モンテ「いい塾を選ばなくちゃな」