猫のフィラリア症 | セントラル動物病院・院長ブログ

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 今年もフィラリア予防の季節になりました。

フィラリアは犬の心臓内寄生虫と思われがちですが猫もフィラリアに感染します。

 

 猫の飼い主さんにフィラリア予防をおすすめすると、「フィラリアって犬の病気でしょう!」とか「猫もフィラリアの予防をしなければならないの?」などの言葉が返っています。 猫のフィラリア症はまだまだ認知度が低い病気です。

今回は猫のフィラリア症についてお話します。

 

 東京都および周辺地域での猫のフィラリア抗体保有状況の調査報告によると地域猫では11%,飼い猫では11.5%の猫がフィラリア抗体陽性であったと報告されています。つまり10頭に1頭に「フィラリア感染歴」が認められています(佐伯英治らによる地域猫および飼養猫の抗犬糸状虫抗体保有状況調査)。

 猫のフィラリア感染率は犬の感染率の10%といわれています。寄生数は少ないが突然死などの死亡率は犬より高いのが猫のフィラリア症の特徴です。

 

 猫のフィラリア症は犬のフィラリアが蚊の媒介により猫に感染します。猫は犬に較べてフィラリアに対する抵抗性が強く体内し侵入したフィラリア子虫に対して激しい免疫反応がおこり成虫にまで成長するのは1-10%といわれています(犬は75%)。

 

この免疫の攻撃をなんとかまぬがれた数匹のフィラリアが肺動脈内に寄生して成虫になることができます。フィラリアの心臓内寄生数は犬に較べると猫では1-3匹と極端に少ないのですが肺動脈内に侵入したしたフィラリア未成熟虫に対する過剰な免疫反応により肺の血管に激しい炎症性変化がおこり猫の喘息によく似た咳や呼吸困難などの症状が発現します(犬糸状虫随伴呼吸器疾患)。 フィラリア成虫の寿命は犬よりも短く2-4年です(犬は6-7年)。成虫が死滅すると肺動脈の閉塞や動脈血栓症などがおこり突然死することもあります。その他、嘔吐、呼吸困難、失明、神経症状など消化器疾患や神経疾患など他の病気でもよくみられる症状が発現します。

 フィラリアに感染していても無症状で経過する猫もいます。

Atokins et al .javma,2000改変

 

猫のフィラリア症の診断は難しい!

 犬のフィラリアは寄生数が多いので抗原検査や血液中のミクロフィラリア(フィラリアの子供)を検出することにより簡単に診断することができますが、猫の場合は寄生数が少ないので犬のフィラリア診断に使用される抗原検査やミクロフィラリア検査はほとんど役にたちません。

 まれに超音波検査で肺動脈内に寄生しているフィラリアを確認することができますが生前にフィラリア症を確定診断することは非常に難しいです。このことが猫フィラリア症が猫の飼い主さんに認知されていない原因の一つかもしれません。

 

フィラリア予防

 猫のフィラア症は予防できる病気ですので必ず予防してあげましょう!

猫のフィラリア症は感染すると突然死などがおこる怖い病気ですが月1回予防薬を皮膚に滴下するだけで簡単に予防できます。この薬はフィラリア予防だけでなくノミ、ダニ、回虫、鉤虫などにも効果があります。是非予防してあげてください。