セントラル動物病院・院長ブログ

セントラル動物病院・院長ブログ

犬猫の楽しい話題や飼い主さんが役に立つ飼育管理や健康管理の情報を発信します。

 

 糖尿病とは

食事中に含まれる炭水化物は、小腸で消化され、ブドウ糖となって血液中に吸収されます。

 

 血液中のブドウ糖は全身の細胞に取り込まれてエネルギー源として利用されます。

 

 ブドウ糖を細胞内に取り込むには膵臓から分泌されるインスリンの助けが必要です。

 インスリンが不足したり、効き目が悪くなると血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むことができなくなり糖尿病になります。 

 

  糖尿病は原因により主に二つの型に分けられます

 

1型糖尿病

 インスリンをつくる膵臓の細胞が何らかの原因でこわされることでインスリンがつくれなくなるタイプの糖尿病です。

 犬で多くみられる糖尿病です。

 

2型糖尿病

インスリンの効き目が悪くなるためにおこる糖尿病です。

猫で多くみられる糖尿病です。

 

レオンちゃん糖尿病・闘病記

 

 猫のレオンちゃんは、2年前(2021年6月)、飲水量と尿量の増加のために診察におとずれました。血液検査の結果、糖尿病と診断しました。

 

糖尿病の治療はインシュリンの注射と食事療法が基本となります。

 

 インシュリンの注射量が少ないと十分に血糖値を下げることができません。反対にインスリンの注射量が多すぎると血糖値が下がりすぎて(低血糖)命の危険にさらされます。

 

レオンちゃんは通常のインスリン用量では血糖値をうまくコントロールすることができない「インスリン抵抗性の糖尿病」でした。

 

 治療開始時には、インスリン注射による血糖値のコントロールが不安定で、「糖尿病性ケトアチドーシス」や「低血糖症」で命の危険にさらされたこともありました。

 

 

低血糖で緊急入院となりました。

低血糖症で緊急来院した時でも、目だけはしっかりしていました。

 

入院

 時々、入院してインスリン注射後の血糖値の変化をみるための検査(血糖曲線作成)をします。

 

 

 

 

レオンちゃんは、診察台の上でも平然としておりおとなしく採血させてくれます。


 入院ケージ内でも、レオンは、何のストレスもなく自分の家のように過ごしています。

 

入院室をセカンドハウスと思っているのかもしれません。

 

入院中のレオン

 

 

予防接種自宅での治療

自宅での皮下点滴、一時はこんなに痩せていました。

 

 

 糖尿病治療の成否は、飼い主様による自宅での治療管理にかかっています。

インスリン注射、脱水症を防ぐための 皮下点滴、手作り食など、飼い主さまの献身的な看護により、最近のレオンの体重は少しづつ増えてきました。

 

少しふっくらしてきました。

 

飼い主様による手作り食

 

 

血糖値チェック

 

 1週間に1回、血糖値と血清ケトン体検査のためにに来院します。

 

採血が終わると「ゴハン」を催促します。

レオンは診察台の上を食事場所と勘違いしているふしがあります。

 

ごはんは?

 

ごはん遅い!

食事を出すのが少しでも遅れるとニャア(遅い!)と文句をいいます。

 

 食事を準備するアシスタントの洋子さんは「レオンさま、少々お待ちを!」といいながらいつもの食事を準備します。

洋子さんは「レオン」のことを「レオンさま」とよんでいます。

 

 

 あっという間に食事を終えると、さっさとケージの中で帰りを待つのがいつものレオンさまです。

 

 

 インシュリン注射を開始して2年が経ちました。

 

レオンさまは、今年のお正月を元気でに迎えることができました。

 

 私たちは、病気になると落ち込んだり、イライラしたりすることがよくありますが、病気に負けることなく、いかなる時も自然体で生きているレオンさまの生き方に教えられることがたくさんあります。

 

 レオン様、お互いに来年のお正月も元気で迎えましょう!

 

           セントラル動物病院 院長 尾﨑 隆

 

 

朝夕すっかり涼しくなり過ごしやすい季節になりました。

夏の間、中断していた朝の散歩をはじめました。

 

今回は私の朝の散歩コースを紹介します。

 

当院の前の県道の西側には田畑が広がっています。

 

田んぼ沿いの道を少し歩くと左側に小さなみかん畑があります。

まだ青いですがきれいなみかんの実がたくさんついています。

 

 

みどり小学校の裏門の前のたんぼには「かかし」が立っています。

かわいい「かかし」さんです。

 

 

コガネグモが巣を作っていました。巣の白いモヤモヤは白帯といって獲物をおびきよせるためのものだそうです。

 

 たんぼ沿いの小道にはかわいい花が目を楽しませてくれます。

 

 

15分ほどの散歩コースですが美味しい空気を吸って毎日の散歩を楽しんでいます。 院長

 

 

 シロちゃん、オス、11才が「尿に血が混じり、辛そうにオシッコをするとのことで来院しました。

 

 このような症状は膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍などでよくみられる症状です。

 

 原因を調べるためにエコーで膀胱を検査すると膀胱の出口付近に腫瘍らしきものが確認できました。尿を遠心分離して詳しく調べると、赤血球や白血球に混じって腫瘍細胞が検出されました。エコー画像初見と細胞の形態から膀胱移行上皮癌と仮診断しました。

犬の膀胱腫瘍のエコー検査

(エコー検査と尿沈渣の細胞診)

 

  犬の膀胱腫瘍の多くは悪性で、中でも移行上皮癌が80%と最も多く発生する腫瘍です。腫瘍の発生部位や病理学的悪性度にもよりますが、一般的には根治は困難で、周囲リンパ節や他の臓器に転移することが多い悪性の腫瘍です。

 

 

 

犬の膀胱腫瘍のイラスト

 

 腫瘍が増殖し、尿管や尿道の出口を物理的に塞いでしまうと排尿困難や腎不全といった重篤な症状を引き起こします。

 

 治療を始める前に、飼い主様には腫瘍は手術による外科的切除が困難な部位に発生しているので、治療は抗がん剤や消炎鎮痛剤などの内服治療が主体となることを説明させていただきました。

 

 飼い主様は副作用の強い抗がん剤の使用はさけて、腫瘍の進行を遅らせるための消炎鎮痛剤と抗菌剤の内服を選択されました。

 

 

診断から約1年が経過した頃です。

「オシッコが3日間出なくて辛そうにしている」と飼い主様がシロちゃんを連れて来院しました。

 

シロちゃんのお腹は膀胱にたまった尿で大きくふくれて苦しそうでした。

 応急処置として膀胱内の尿を吸引除去するためにペニスの先から膀胱にカテーテルの挿入を試みましたがカテーテルは尿道の途中で止まって膀胱内に挿入することができませんでした。膀胱内の腫瘍で尿道が完全に閉塞してしまったようです。

 

 このままだと体内でつくられた老廃物を体外に排泄することができず尿毒症により死亡することは避けられません。

 

 膀胱腫瘍末期の延命治療の一つに膀胱腹壁瘻(ぼうこうふくへきろう)という手術法があります。この手術は膀胱をお腹の皮膚に縫いつけて皮膚に開口させて体外に尿を排泄させる方法です。

 これにより膀胱から皮膚に直接尿が出るために「尿やけ」による皮膚炎や膀胱内に細菌感染がおこりやすくなります。もちろん、飼い主さんは毎日オムツの交換をしていただくことになります。

 

 この手術により、腫瘍がどんどん大きくなって尿管が塞がってしまうまでの間はシロちゃんを苦痛なく延命させてあげることは可能です。

 

私は飼い主さんに延命治療としてこの手術を提案しました。

 

飼い主さんはしばらく考えていましたが最終的には手術することに同意してくれました。

 

すぐに、シロちゃんの緊急手術を開始しました。シロちゃんは麻酔がかけられ、最初に膀胱内に貯留した尿を抜き膀胱を小さくした後に膀胱を切開してお腹の皮膚に縫合固定しました。麻酔の覚醒も順調で無事手術を終えることができました。

 

10日後に抜糸が終わりました。

この部位からオシッコが体外に排泄されます。

 

手術をしてから4ケ月が経ちました。経過は良好です。

「病気であることを忘れるくらい元気です」と飼い主さん。

オムツ交換も随分と上手になりました。

 

シロちゃん! 美味しいものをたくさん食べて、優しいご家族の皆さまと大切な1日1日を楽しく過ごしてください。(院長)

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年6月7日

 

診察時間終了間際に子猫を抱えて女性が飛び込んできました。

 

子猫はトースターが倒れて下敷きになったとのことでした。

 

子猫の名前はルナちゃん、生後2ケ月、体重は800gの女の子です。

 

ルナちゃんは鼻と口から出血していて口の中の血液が気管の中に入って呼吸困難の状態でした。気管内の血液の吸引除去などの応急処置により呼吸は少し安定してきました。

 

 子猫の意識はなく、瞳孔反応や顔面の感覚などの脳神経検査の結果、脳幹部に障害があることが推察されました。

 

 


動物の意識障害の程度を知る方法としてコーマスケール(MGCS)法があります。

動物の運動反応、瞳孔反応、意識レベルを数値化して表したもので、点数が低いほど、意識障害が重いことを示しています。

健康な猫のコーマスケールは18点ですが、ルナちゃんのコーマスケールは9点でした。8点以下の場合の死亡率は50%といわれています。

 

ルナちゃんは横になったままでぐったりとしています。脳の深いところの障害ですから治療は内科治療が主体となります。

 

脳圧の上昇や脳内出血を少しでもおさえるために、子猫の頭部少し高くして酸素吸入を開始しました。脳浮腫や出血に対する治療も同時に行いました。

 

右目の顔面神経麻痺のため瞼を閉じることができません。眼球の乾燥を防ぐために3時間毎に眼軟膏の点眼が必要です。

 

この状態だと今夜は徹夜になりそうです。

 

2022年6月8日

ルナちゃんは頑張って一晩もちこたえてくれました。

 

心拍数と呼吸は安定していますが意識はほとんどありません。

 

右目は顔面神経麻痺のため瞼を閉じることができません。

瞳孔(黒目)は収縮したままです。

 

健康な猫ちゃんの瞳孔は明るい所では小さくなり、逆に暗いところでは大きくなります。ルナちゃんは部屋を暗くしても瞳孔は大きくなりませんでした。瞳孔を大きくするのは交感神経の作用です。交感神経は脳幹部からはじまり、脊髄、耳、眼球へ走行しています。この経路のどこかが障害されると瞳孔は小さいままの状態になります。

 

ルナちゃんの瞳孔収縮は頭部外傷による脳幹部の障害が原因と考えられました。

 

2022年6月9日

 

深夜2時、診察のため、眠い目をこすりながら保育器に近づき「ルナちゃん!」と声をかけると頭をすこし持ち上げ小さな声「ニャー」と返事をしてくれました。意識がもどったようです。

こんな小さな体で必死に生きようとしている姿に感動しました。

 

2022年6月10日

 胃チューブによる強制給餌や抱き上げるなどの刺激によりケイレン 発作が発現しました。

お薬により発作はコントロールできていますが少し心配です。

 

2022年6月11日

ケイレン 発作はおさまりました。左右の瞳孔の大きさにちがいがありますが顔の表情は随分しっかりしてきました。

 

2022年6月12日

ふらつきながら歩けるようになりました。転倒時に頭を打たないように保育器の周囲はタオルで囲っています。

 

体をささえてあげると、自分で食事ができるようになりました。

一生懸命食べてくれました。ガンバレ、ルナちゃんびっくり

 

2022年6月13日

飼い主様が面会にきました。泣きながら病院にかけこんできた飼い主様ですが今日は笑顔でルナちゃんを抱っこです。

ルナちゃんも気持ちよさそうですニコ

 

2022年6月14日

保育器のドアーを開けると外にでたがります。しっかりした表情にななってきました。

 

2022年6月15日

フラフラしながらの食事です。小脳の障害(前庭小脳)もあるようです。

 

2022年6月19日

1日4回、診察室内で歩行訓練です。

後少しで退院です。よく頑張ってくれました。

 

 
2022年6月23日
 
ルナちゃんは本日退院しました。
 
 
 

 

 

 

 

毎年この時期になると自宅の玄関横にツバメ達が子育てを始めます。

 

昨年は子ツバメの1羽が巣から落下しているのを発見しました。発育状態が悪く、羽ダニがたくさん寄生していました。子ツバメはフロントラインスプレーで羽ダニを駆除してもとの巣にもどしましたが、再度落下しているのを発見し、人工給餌をして無事巣立ちをさせました。

 

今年は4羽の雛が育っていますが右の2羽は発育が悪いようです。子ツバメの落下がないか毎日観察しています。