不妊とは、妊娠を望んでいる健康な男女が子供を設けるために性交渉を行っているにもかかわらず一定期間妊娠しないことを言います。一定期間とは、日本産婦人科学会では「1年間というのが一般的である」と定義しております。
不妊の原因は、女性側、男性側、または両方ともにあったり、両方ともに原因がない場合もあります。割合としては、女性側と男性側ほぼ同数程度いることも分かっております。
また、不妊のカップルは10組に1組と言われていますが、年々そろそろ子供を作ろうと考える年齢が高くなってきており、現在では7組に1組や6組に1組ともいわれております。
女性側の原因としては、排卵因子、卵管因子、頸管因子、免疫因子、子宮因子がございます。
男性側の原因としては、造精機能障害、精路通過障害、性機能障害がございます。
また、男女ともに加齢によって妊娠する力、妊娠させる力(妊孕性)が低下することがわかっております。女性は30歳を過ぎると自然妊娠する確率が減り、35歳を過ぎると一気に低下し始めます。理由としては、加齢により子宮内膜症などの合併症状が増えることと、卵子の質の低下が妊孕性の低下の原因と考えられております。
男性の場合は、35歳過ぎぐらいから徐々に精子の質の低下が起こります。
また、それとは逆に、女性の年齢が35歳を過ぎると流産の確率は確実にアップしてしまいます。
子どもを作ることについては、生理的なことや高齢出産(35歳以上)の場合のリスク等について、ゆっくりとじっくりとご夫婦で話し合いがなされるべきです。
では、その不妊症の方に鍼灸治療は何を目的に行っているのか。というお話をさせていただきます。
鍼灸師の立場(中国医学の立場、経絡治療の立場、現在医学の立場)によって違いがあるとは思いますが、わたくし(千田)は現在医学の立場で鍼灸治療を行っているのでその立場からのお話と思ってください。
鍼灸の目的は、大きくは2つ
①子宮と卵巣は血液から栄養を取っていますが、その血流をよくするということ。
②ストレスで交感神経緊張が続くと血液が子宮や卵巣に行かないのと女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が抑えられてしまいます。そうならないために交感神経緊張を解消するための全身のリラクゼーション(体調の調整)
子宮に血液がスムーズに行かないと着床時に必要な子宮内膜の増殖や肥厚に影響を及ぼしてしまいます。
また、卵巣は卵が育つ場所であり、血液がスムーズに来ないということは、育つための栄養が足りないとか、ない状態でよい卵が育たなくなります。
そこで、鍼治療では、
上脊髄性:四肢(手の肘から先と足の膝から先)の一定の場所への鍼刺激が脊髄(背骨の内)を通りそれが脳に伝わり、脳内では自律神経系と内分泌系、免疫系がネットワークでつながり、全身を調整をする。
脊髄性:体幹部ではデルマトーム上の皮膚刺激によって、自律神経に刺激が伝わりその支配領域の身体の調整を行う。
※デルマトームとは、脊髄には番号がついていて皮膚のどこを支配しているのかがわかっている。
この上脊髄性、脊髄性の生理的反応を利用して、どこを刺激すれば、脳内・全身の状態をよくし結果、正常なホルモン分泌を促すことができるのか、卵巣・子宮の血液が改善するのかということが、はじめはマウスでの研究から始まり、人での超音波を用いて子宮や卵巣の血流変化などについて国内外の学会や論文で発表をされ効果が証明されてきている。
治療期間としては、ワンクールとして3カ月~4カ月を一つの目安とされるのいいのではないかと思います。
この3カ月から4カ月というのは、月経後、卵胞期に入り排卵に向けて発育し始めるのが、二次卵胞で二次卵胞が成熟卵胞(排卵する卵胞)に育つのには90日以上の日数がかかります。この卵胞が育つ期間の卵巣内をいい環境にするということです。
治療回数は、1週間に1度から2度を目安にしてください。
鍼治療以外にも、日々行うリラクゼーションの指導などを行っている治療院がたくさんございます。
もう一つ大切なのが性生活です。タイミング法の場合などでは、排卵日にセックスをすることばかり考えて、性生活を楽しめていない方も多くおられます。
ただ、セックスの回数は多い方がいいというデータもあり、普段からセックスを楽しめる関係を作っていただきたい。
鍼治療で子宮や卵巣、脳や全身のいい状態を作っても、ストレスがあるとそれに負けてしまいます。
不妊ストレスとしては、Newton et ai.(1999)の不妊ストレスを測る尺度では「社会関係」「性関係」「人間関係」「子どものいない人生否定」「親になる欲求」の5因子で考えられ、抑うつや不安との関係があること示している。それ以外にも、神経質さ、強迫性、偏執的観念などが問題となったりします。
また、解決するために認知行動療法のプログラムなども開発されております。
これらの不妊ストレスについては、鍼灸同様に専門の一つであるので次回に書かせていただきます。
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