前回の研究会での「自閉症スペクトラム症の認知行動療法・ACAT(エーキャット)」に続いて、今回も主に思春期から成人までの自閉症スペクトラム症への認知行動療法について、主催者である千田の希望で参加いただいた方と討論をさせていただきました。
参加者:公認心理師、シニア産業カウンセラー、教諭、作業療法士の方々。
ACATのやり方については、前回お話をしたのでざっくりとしか書きませんが、思春期以降の方を対象に、個人が持つASDの特性を明らかにして、それに絡んだ認知的・行動的問題に気付いて、その心理的不適応と社会的不適応に対して認知行動療法を用いて生活をしやすくする方法。
さて、前回もそうだったのですが、個人的な不適応感に対しては、特性を理解して問題解決方法を用いることで、特性を持ちながらの適応方法を考え出せるとは思います。ACATでは「自分でできる工夫」となっている。
問題となるのは「周りの人からの配慮」の計画で周りの人に配慮を要請するという行動である。
ただし、小学校や中学校、高等学校、大学校という学生の時は、参加者の教諭も言っていましたが、社会的にもそのような動きになってきているために「周りの人に配慮を要請するという行動」は少しずつではあるが学校という社会ではできるような流れになっている。
問題は社会人となったときの企業の対応である。社会人となって障害者雇用で入社したなら問題はないが、一般社員として勤めた場合である。
個人の得意分野や特性と合う職種であれば、問題なく働けるであろうし実際に問題なく勤められている方もたくさんおられます。
問題は合わない場合。
会社に対して「合理的配慮」を求めることはできるのかというと「建前はできる」でも実際は、発達障害についての知識を持ち合わせていない人々が多く、理解者となりえる人が少なすぎるので「できない」そのために悩まれている方がたくさんおられる。
もちろん、当研究会メンバーもそうであるが、セラピストとしては、合理的配慮に対して肯定的ではある。
また、千田は数年前から企業からのメンタルヘルス研修の依頼があったときには、発達障害について理解していただけるように講義で説明をするようにしている。
自閉症スペクトラム症ではない社員にも個性や特性があるわけですから、その方々と同様に個性や特性として理解してもらえれば、使う側の企業としてもメリットが大きいことも伝えるようにしている。
また、千田が考えていることは、ASDにしてもADHDにしても、乳幼児期、学童期、思春期以降大学生までそして、社会人というように単発的にそれぞれが対応する施設なりプログラムはあるが、それでは、現在のところこの問題は解決しないのではないか。
乳幼児期から成人(会社勤め)まで、継続しての長いスパンを考えたアプローチや関わり(本人・親・セラピストのチーム)を行うプログラムが必要であろうと考え、どのようなシステムが良いかを現在考え中である。
リスタ・カウンセリング・ルームでは、思春期以降のASDの方に対してACATを行っております。
千田 恵吾