『しのゼミ』 -70ページ目

『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

検査技師G君が突然辞めたいと言ってきた.


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・・・・・・・・・・・・なぜ??????

??????????????

??????????????

理由がまったくわからない.




いや・・・・・

思い当たる節はいくつかある.

細胞検査士試験の連続失敗.

細胞診重視の雰囲気.

手塩にかけて育てた後輩Yさんの退職.

中間管理職(=シノ)とのコミュニケーション不足.

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とにかく全力で阻止するつもりだが,

G君の意思はかなり固そう.

何を言っても,どのように言っても,何度言っても・・・

何を聞いても,どうすればと聞いても,何度聞いても・・・

G君の固く閉じた心を開くことができそうにない.

とりあえず,この件はしばらく保留ということに無理やりしておいた.



そこにいるのが当然と思っていたヒトが居なくなる理由が,

どうも自分の失態であったらしいという衝撃の現実.

もっとも信頼していたヒトの一人に,

突然愛想尽かしの言葉を言われた傷心.



こんなことは,いろいろ見聞きしてきたものの,

こんなに深く,こんなにズタズタに,こんなに底なしに,

消沈するとは思っていなかった.




完全にリーダー失格だな,こりゃあ.
病理に提出されてくる手術や生検の検体には,その検体が何で誰のものかを事細かく説明する「病理検査伝票」というものがついてくる.

その伝票には,具体的に「いつ頃からどうなって,こうしたらそうなって,ほんでもってああなって・・・結局手術となりました.病理検索をお願いします云々」という患者情報(いわゆる臨床所見)が書いてある.

たとえば(今日取り上げるケースは)「3週間前,夕食後に悪心と胃痛を自覚し,その後改善せず,当院を受診.本日内視鏡となる・・・」などとなる.

こんな言い回しというか言葉づかいは,医療現場にいれば自然に覚えてしまう類のもの.

まぁ決まり切った言い方っちゅうか,定型句っちゅうか,画一的っちゅうか,事務的っちゅうか,つまらんっちゅうか・・・.

そんなことよりも,いかに簡潔に効率よく必要且つ十分な情報を伝えるか・・・という「情報伝達性」に重点が置かれる.



さて,今日の検鏡した病理伝票の所見に,こんなんがあった.胃内視鏡を受けた患者さんのもので,提出医は「大柴(仮名)クリニック」とある.大学病院からちょっと離れた所にある開業医さんのようだ.



「臨床所見:3 weeks ago, after dinner に nausea and stomachache を complained.
その後 improve せず, my clinic を consult.today endoscopy となる」


これって・・・

なかなかfunnyでfunckyでridiculousでcrazyで・・・

・・・しかも,「ルー」である.

「ルー」ってカレーのじゃなし・・・・・・あの「大柴・ルー」である.

管理人の記憶が正しければ.この大柴クリニックからの伝票の所見は,少なくとも7-8年ほど前から「ルー語」で書かれてある.

・・・・・なんだこの時代の先進性は?・・・・・というより時代を越えたカルト的エンシュージアズムか?・・・.

特に「today endoscopyとなる」の「today」の位置に,居心地の悪さと半端さとカワユサを感じる.

すべてを鑑みての結論はただ一つ.

大柴クリニックの医師は,単に天然ルーなんだろう.



妄想をさらに膨らませると,この大柴医師は患者さんとの面談をどうしているんだろう?

「・・・イエスタディにラボに出したブラッド・テストでは,アンフォーチュネットリーだけどリザルトがグッドでなかった・・・」などというルー語による説明があるんだろうか?

今度風邪をひいたら試しに診てもらおうっと.

真面目な顔をして「・・・バイザウェイ・・・」などと言われたら,笑い死してしまうかもしれん・・・
「緊しく此の志を立てて以て之を求めば,薪を搬び水を運ぶと雖も,亦是れ学に在る所なり.況や書を読み理を窮むるをや.志の立たざれば,終日読書に従事するとも,亦唯だ是れ閑事のみ.故に学を為すは志を立つるより尚なるは莫し.」

『(聖賢たらんと)志を立て,これを求めれば,たとえ,薪を運び,水を運んでも,そこには学問の道はあって,真理を自得することができるものだ.まして,本を読み,物事の道理を窮めようと専念するからには,目的を達せないはずがない.しかし,志が立っていなければ,一日中本を読んでいても,それはむだ事に過ぎない.だから,学問をして,聖賢になろうとするには,志を立てるより大切なことはない.』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>
人生の諸事はすべて,目標というか目的を持つのが重要である.

その前提として,目標目的はよいものでなければならない.

あるべき姿に向かい,理想とされているものに近づくようなものが好ましい.

また,目標目的も持つことは,そのモチベーションを保っていく上でも重要である.

地道な努力を継続するには,多大かつ絶え間ないエネルギーがいる.

公明で大きな目標目的は,その供給源になってくれる.
現在病理にまわってきてくれている研修医Sさんと飲みに行った.

Sさんはとある文系大学を卒業し,しばらくして西日本大医学部に入学を果たし,学生時代に知り合ったサラリーマンと結婚し,現在は西日本大病院研修医のリーダーを勤める・・・というけっこう波乱で華麗な経歴を持つ.

パッと見は,旦那がいるような雰囲気というか,所帯じみた感じが微塵もない.

むしろ,出来は悪いが愛想上手で憎めない・・・というような,要領よくソツ無し的学生キャラといったらいいか.

しかし経歴からも察することができるが,けっこう苦労人である.

自分も経歴的に似たところがあるため,なんとなく相通じるところがある.

それに,自分と世代的にそんなに離れていないため,昔話が通じる.

単純に話していておもしろい.


今の西日本大の研修のこと,Sさんの選んだ臨床科のこと,お互いの身の上話・・・


たらふく飲んだうえに,久し振りに時を忘れて語ってしまった.

彼女は,これからの西日本大を担う「うるさ型お姉系」先生になるであろう.

いろんな面での今後の活躍が楽しみである.

こんなおもしろい若手との出会いがあるのも,大学教官のいいところである.
今日はノコさんのいる病院へ外勤.

ついでに,ノコさんに早速この病院における求人の具合を聞いてみた.


「・・・ノコさん,ちょっと聞きたいんやけど・・・検査でヒト探していない?」

「はぁ・・・探してるとは聞いてませんけど・・・」

「うちの若手のYさんが,事情が狂って職にあぶれてしまったので,いい就職口を探しとるんやけど・・・」

「そうですか・・・大変ですね」

「非常勤やパートも空きはないの?」

「はぁ・・・・・うちも赤字なんで・・・」


なんと,ノコさんの病院も経営が苦しく,赤字なんだそうだ.

そのために,検査も人減らしのターゲットになっていて,この3月で1~2人がやめさせられるんじゃないか・・・というもっぱらの噂.

真っ先に狙われてるのが,この3月で契約が切れる検査部非常勤パートのポジションで,おそらく補充はないだろう・・と言われているようだ.

そのパート職員さんは契約切れで「ハイ,さようなら」となるワケだが,これからどうするんだろうか・・・とのこと.


う~ん,どこもかしこも非常に厳しい環境であり,「病理の常勤」などは夢のまた夢に思えてくる.

とりあえず時間がないので,この4月からは私たち大学の病理の研究費で雇用する「パートタイム技術補佐員」になる手続きを進めることにしたが・・・.

このポジションは診療ではなく医学研究に従事する「研究助手」さん用のもの.

よって,日中は検査業務に専念できず,研究を手伝ってもらわなければならぬ.

なので,彼女にとってはあくまで当面の「腰掛け」に過ぎないだろう.


この直面している状況は,Yさんがツイテいないとか,この地方の状況が特殊ということではなく,どうも今の日本社会の縮図に思えてならない.

いわゆる「格差社会」ってやつ?

これって,医療のような特殊な分野には関係ないと思っていたが・・・・・少なくとも地方の病院は着実に蝕まれているように見える.