送別会シーズンである.
この年度替わりで,我が大学病院病理では多くの人が入れ替わるため,出ていくヒトのためのサヨナラ飲み会が行われている.
病理部関係では,この3月末で10名中4名が何らかの異動となる.
しかもそのメンツが,今まで部内で中心的に結構がんばってくれていたヒト達であったりするわけで,
今年ほど劇的に変わる年を経験するのははじめてである.
さて,自分は医学部卒業から4年前までず~~っと病理講座に所属していた.
それから大学病院病理部に配置換えになった.
これって,ひじょ~~~に微妙な位置関係にあるのであって,
大学にいるのであるから,いまだに大学に残っている立派な一員なのであるが,
しかし病理講座を離れて病院病理部に移ったのであるから,講座からすでに離れたヒトに分類されるわけであって,
所属しているようで,お客さんであるという,と~~っても中途半端な立場である.
まぁ気にしなければどーってことないことなのかもしれん.
っで,以前に所属していた病理講座の送別会の話になるワケで,
誘われると嫌いじゃないのでホイホイ出席してしまう.
これまでどうりにワイワイしているつもりでも,
なんかちゃうなぁ・・・って感じる自分がいる.
送別会も終わりに近づくと,
これまで仕切ってきた飲み会に口出しできなくなった感覚,
二次会に行くぞって,言いだしっぺになれない感覚,
誘われないから,さみしいけど帰ろうっていう感覚,
いちおう声をかけてもらったけど,「ちょっと今日は・・・」と言ってしまい素直になれない感覚,
そういうイヤな現実を無理やり鮮明に突きつけられた感覚.
病理講座に在籍している時には,まったくわからなかった感覚である.
たとえば飲み会終了時.
先輩のA先生は一次会でお帰りなんだなぁ・・・お見送りでもするか・・・ってくらいに思っていた.
「二次会行かれますか?」の声かけをどれだけしていたであろう?
今になってわかる.
「二次会行きませんか?くらい言えよ~」と心の中で叫ぶ「A先生」は必ずいた(ハズ).
そこまで気使いができていなかっただけ.
そんな不遜な後輩たちに愛想を尽かし(たかどうかは知らないが),
次回からは遠慮しようとなる(のは当たり前).
こんなことが,多かれ少なかれおそらく繰り返されてきたであろう.
今後も,多かれ少なかれ残念だけど繰り返されるであろう.
年を重ねてそれなりのポストに移ったり,中心となって頑張ってきたところから異動になったり,自分が築いてきたと思っていたものから外されたりすると,必ず通らなければならない感覚なのかもしれない.
要は,それをどのように自分で解釈してアクションするか・・・っちゅうことか?
自分から再び輪に入っていくか・・・,黙って退場するか・・・,じ~っと静かにやり過ごすか・・・.
結局は自分が決めること・・・っちゅうことか?
先日に,西日本大病理の教授であるボス先生のところに,県会議員の某先生から電話があったそうな.
曰く,「〇〇病院に,病理医を派遣してほしい.」
ハハハハハッ・・・まいったなぁ・・・フウ~・・・.
たとえ議員の先生であろうと,県知事であろうと,国会議員であろうと,衆議院議長であろうと,内閣官房庁長官であろうと,福田首相であろうと・・・
どんなえらいヒトの依頼であろうと,無理なもんは無理なんじゃあ~.
まぁ事情を知ればわかるだろう,これは圧倒的に無理な相談なのだ.
病理の現状を語れば・・・・,驚きを通り越して,あきらめも通過して,自虐の域を超え・・・・・・,いまや「自爆テロ的な絶望的境地」に近づいている.
問題の根本は,そもそも病理医の絶対数が足りないということ.
医師数の少なさなら,病理医はどこにも負けない.
小児科にも,産婦人科にも,麻酔科にも,放射線科にも・・・・・・.
地方の県になると,県内に病理医が20~30名くらいしかいない(いや,もっと少ないかもしれん).
人口20万人規模の都市で,だいたい2~3名といったところか(ひょっとすると,いないかもしれん).
計算すると,ひとりで数万~十数万人ほどの医療圏をカバーしていることになる.
どこそこの地方病院で,医師が引き揚げただの少なくなっただのと世間を賑わしている.
しかし,病理から見ればこれもうらやましく感じる.
引き揚げるつまり条件がまだましな場所があったり,開業するという選択肢があるからいいなぁ~って・・・
病理医は逃げ場がない.
全国津々浦々,どこに行っても少ない.
どこに行っても重宝がられ,したがってどこに行っても忙しくストレスフル・・・
話は戻って,いかんせん今回の相手は「県会議員先生」である.
「ポリティカルパワーは剣よりも強し」の先生である.
何かと日頃お世話になっている(かもしれん)先生である.
そんなえらい先生のたっての依頼である.
無下にしたり無視したりはできぬ.
かと言って,居もしないヒトは出せぬ.
無理して出せば,こちらに大穴が開く.
出すも地獄,出さぬも地獄・・・
う~~~ん,どうすればいいんじゃあ~~~.
断らざるを得んけど,断ってええんかなぁ・・・
断ってええかもしれんけど,なんか出来んかなぁ・・・
なんも出来んけど,なんかせにゃなぁ・・・
なんかせにゃならんけど,断らざるを得んなぁ・・・
こんな「ネガティブ堂々めぐり」をあちこちほっつき歩いて,いや~な気持ちのまんま,一時間ほどが経過してしまう.
あ~あ,もったいない.
煮詰まった現状打開のためには,アホな妄想をして気を紛らすといいかもしれん.
たとえば・・・
「県会議員に,交換条件として議会で“病理医保護条例”を作ってもらい,病理医の福利厚生をめ~っちゃくちゃよくしてもらう」とか,
「その条例によれば,病理医の通勤のためにリムジンタクシーが送迎に来る」とか,
「帰宅時に限って,タクシー内でビールを飲んでもよい」とか,
「そのビールの一杯目は,女性運転手さんについでもらうことができる」とか,
「途中にある吉野家で,牛丼の大盛りが普通盛りと同じ値段で食べられる」とか,
「毎日の昼食には,病院でフルコースが用意される」とか,
「フルコースのメニューは,けっして検食で代用しない」とか,
「病院内の最も豪勢な個室を,V.I.P. room(very important pathologistの部屋)として病理医専用使いたい放題にできる」とか,
「病理学会を一週間ハワイで開催し,日本から病理医み~~んなが居なくなって,病理医のありがたみを知らしめる」とか,
「病理以外のヒト達もマネをしだすとまずいので,表向きには開催地は鳥取・羽合(はわい)ということにしておく」とか,
・・・・・・・
・・・・・はぁ~ささやかやしクダランしムナシイ・・・・・ストレスたまっとるわ~.
曰く,「〇〇病院に,病理医を派遣してほしい.」
ハハハハハッ・・・まいったなぁ・・・フウ~・・・.
たとえ議員の先生であろうと,県知事であろうと,国会議員であろうと,衆議院議長であろうと,内閣官房庁長官であろうと,福田首相であろうと・・・
どんなえらいヒトの依頼であろうと,無理なもんは無理なんじゃあ~.
まぁ事情を知ればわかるだろう,これは圧倒的に無理な相談なのだ.
病理の現状を語れば・・・・,驚きを通り越して,あきらめも通過して,自虐の域を超え・・・・・・,いまや「自爆テロ的な絶望的境地」に近づいている.
問題の根本は,そもそも病理医の絶対数が足りないということ.
医師数の少なさなら,病理医はどこにも負けない.
小児科にも,産婦人科にも,麻酔科にも,放射線科にも・・・・・・.
地方の県になると,県内に病理医が20~30名くらいしかいない(いや,もっと少ないかもしれん).
人口20万人規模の都市で,だいたい2~3名といったところか(ひょっとすると,いないかもしれん).
計算すると,ひとりで数万~十数万人ほどの医療圏をカバーしていることになる.
どこそこの地方病院で,医師が引き揚げただの少なくなっただのと世間を賑わしている.
しかし,病理から見ればこれもうらやましく感じる.
引き揚げるつまり条件がまだましな場所があったり,開業するという選択肢があるからいいなぁ~って・・・
病理医は逃げ場がない.
全国津々浦々,どこに行っても少ない.
どこに行っても重宝がられ,したがってどこに行っても忙しくストレスフル・・・
話は戻って,いかんせん今回の相手は「県会議員先生」である.
「ポリティカルパワーは剣よりも強し」の先生である.
何かと日頃お世話になっている(かもしれん)先生である.
そんなえらい先生のたっての依頼である.
無下にしたり無視したりはできぬ.
かと言って,居もしないヒトは出せぬ.
無理して出せば,こちらに大穴が開く.
出すも地獄,出さぬも地獄・・・
う~~~ん,どうすればいいんじゃあ~~~.
断らざるを得んけど,断ってええんかなぁ・・・
断ってええかもしれんけど,なんか出来んかなぁ・・・
なんも出来んけど,なんかせにゃなぁ・・・
なんかせにゃならんけど,断らざるを得んなぁ・・・
こんな「ネガティブ堂々めぐり」をあちこちほっつき歩いて,いや~な気持ちのまんま,一時間ほどが経過してしまう.
あ~あ,もったいない.
煮詰まった現状打開のためには,アホな妄想をして気を紛らすといいかもしれん.
たとえば・・・
「県会議員に,交換条件として議会で“病理医保護条例”を作ってもらい,病理医の福利厚生をめ~っちゃくちゃよくしてもらう」とか,
「その条例によれば,病理医の通勤のためにリムジンタクシーが送迎に来る」とか,
「帰宅時に限って,タクシー内でビールを飲んでもよい」とか,
「そのビールの一杯目は,女性運転手さんについでもらうことができる」とか,
「途中にある吉野家で,牛丼の大盛りが普通盛りと同じ値段で食べられる」とか,
「毎日の昼食には,病院でフルコースが用意される」とか,
「フルコースのメニューは,けっして検食で代用しない」とか,
「病院内の最も豪勢な個室を,V.I.P. room(very important pathologistの部屋)として病理医専用使いたい放題にできる」とか,
「病理学会を一週間ハワイで開催し,日本から病理医み~~んなが居なくなって,病理医のありがたみを知らしめる」とか,
「病理以外のヒト達もマネをしだすとまずいので,表向きには開催地は鳥取・羽合(はわい)ということにしておく」とか,
・・・・・・・
・・・・・はぁ~ささやかやしクダランしムナシイ・・・・・ストレスたまっとるわ~.
図書館にて借りてきた『表現力があなたを変える』を読んだ.
タイトルの頭には「本を読もう 文章を書こう」とある.こういったタイトルというかフレーズには自分は極めて弱い.背表紙にこんな言葉があったら,必ず手に取らざるを得ない気持ちになる.手にとって置かないと,後々までずーーっと気になって後悔するであろう.そんな感じ.
読み進めてみると,著者の強烈な個性と毒々しいまでの情熱が感じられてくる.表現するには→考えなくてはならず→普段から学ぶ力を育くむような→教育体制や親子関係を作っていく必要があり→さらに日本人としてどうあるべきかやこれからの時代をどう生きるべきかという問題にまでつながっている,というような内容.タイトルからは,「30分で作文力が格段につく」なんていうもっとマイルドでビジネス新書的なものを想像していたが,本書はもっと重厚な現代教育論である.「現代教育に物申す―作文教育現場からの提言―」ってなタイトルの方が(センスないなー),本書の内容はよく表しているか?.
バッサリと切り捨てる手厳しい物言いに少したじろぐが,その奥にある深い思索と憂いと愛情を感じるため,素直になって読了できた.
問題を無責任に提起し煽りたてるマスコミ的論調でなく,長年の自らの実践による経験からの提言には動かしがたい説得力がある.
子ではなく親自身の生き方が問われているという件や,八割のすすめ(このアイデアは頂いておこうっと)などはきわめて新鮮!
答えがない出口の見えない現代教育問題だが,本書は少なくとも「作文教育」ならばという限定つきで答えを示すことができているかもしれない.
しの的読後感:勉強させていただきましたorz
こんなヒトにお薦め:子を持つ親・教育に携わる人
表現力があなたを変える―本を読もう文章を書こう/宮川 俊彦

¥1,680
Amazon.co.jp
タイトルの頭には「本を読もう 文章を書こう」とある.こういったタイトルというかフレーズには自分は極めて弱い.背表紙にこんな言葉があったら,必ず手に取らざるを得ない気持ちになる.手にとって置かないと,後々までずーーっと気になって後悔するであろう.そんな感じ.
読み進めてみると,著者の強烈な個性と毒々しいまでの情熱が感じられてくる.表現するには→考えなくてはならず→普段から学ぶ力を育くむような→教育体制や親子関係を作っていく必要があり→さらに日本人としてどうあるべきかやこれからの時代をどう生きるべきかという問題にまでつながっている,というような内容.タイトルからは,「30分で作文力が格段につく」なんていうもっとマイルドでビジネス新書的なものを想像していたが,本書はもっと重厚な現代教育論である.「現代教育に物申す―作文教育現場からの提言―」ってなタイトルの方が(センスないなー),本書の内容はよく表しているか?.
バッサリと切り捨てる手厳しい物言いに少したじろぐが,その奥にある深い思索と憂いと愛情を感じるため,素直になって読了できた.
問題を無責任に提起し煽りたてるマスコミ的論調でなく,長年の自らの実践による経験からの提言には動かしがたい説得力がある.
子ではなく親自身の生き方が問われているという件や,八割のすすめ(このアイデアは頂いておこうっと)などはきわめて新鮮!
答えがない出口の見えない現代教育問題だが,本書は少なくとも「作文教育」ならばという限定つきで答えを示すことができているかもしれない.
しの的読後感:勉強させていただきましたorz
こんなヒトにお薦め:子を持つ親・教育に携わる人
表現力があなたを変える―本を読もう文章を書こう/宮川 俊彦

¥1,680
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「少年の時は当に老成の工夫を著すべし.老成の時は当に少年の志気を存すべし.」
『若い時は,経験を積んだ人のように,十分に考え,手落ちのないよう工夫するがよい.年をとってからは,若者の意気と気力を失わないようにするがよい.』
(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)
<しの訳>
何事もバランスが大切である.
若い時は,理想に燃えた高い志と満ち溢れるエネルギーがあるが,若気の至りで突っ走ったり周りが見えてなかったり後先を考える余裕がなかったりする.
老年には,経験から導かれる知恵と節度があるが,それらを現状を打破しさらなる理想郷へと近づける様な動きにつなげようとするエネルギーに欠けていたりする.
何歳になっても,若さと老年のいいところをバランスよく持ちたいものである.
最近では,若さを忘れたような「枯れた」意見がティーンエイジャーな んかから聞かれるし,子どもでもわかるようなマナー違反を平気でする年輩が多い様な気がする.
何事もバランスが大切である.
『若い時は,経験を積んだ人のように,十分に考え,手落ちのないよう工夫するがよい.年をとってからは,若者の意気と気力を失わないようにするがよい.』
(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)
<しの訳>
何事もバランスが大切である.
若い時は,理想に燃えた高い志と満ち溢れるエネルギーがあるが,若気の至りで突っ走ったり周りが見えてなかったり後先を考える余裕がなかったりする.
老年には,経験から導かれる知恵と節度があるが,それらを現状を打破しさらなる理想郷へと近づける様な動きにつなげようとするエネルギーに欠けていたりする.
何歳になっても,若さと老年のいいところをバランスよく持ちたいものである.
最近では,若さを忘れたような「枯れた」意見がティーンエイジャーな んかから聞かれるし,子どもでもわかるようなマナー違反を平気でする年輩が多い様な気がする.
何事もバランスが大切である.
この一週間は,「一緒に働くG技師が急に辞めたいと言い出した」事件が起こって,中間管理職シノは限りなく落ち込んでいた.
限りなーーーく・・・・
深ーーーく・・・
どーーーん底まで・・・・
G君とは4年間ほど一緒に仕事をしてきた.
この期間の西日本大病理部の技術的な部分を支え,今の水準まで引き上げてくれたのは,ほとんど彼の功績と言っていい.
彼には,技術を下支えする真面目さ・地道さがあり,その向上を図り更に新たな部分にチャレンジする研究心がある.
「・・・という疾患に出てくる△△が,〇〇染色でわかるみたいやけど・・・この染色ってできる?」と相談してみると,いつの間にやら染色が染めあがっている・・・.
「先日に・・・・・というミスが起きたけど,今後は・・・・・っという工夫をしていきましょう」というような問題提示ができる・・・.
その反面,もうちょっとなんとかなぁ・・・という面もあるにはある.
無口で頑固,真面目な堅物で,こうと決めたらなかなか曲げない・・・
今回,急にやめたいと言ってきてから,二人で何度もいろいろ話し合った.
話し合ってはじめて見えてきた経緯を,13時30分からの連続昼ドラ風にたとえて言えばこうだ.
・・・・・若女将シノが切り盛りする老舗「病理屋シノ」は,昔ながらのHE染色が自慢で,近隣でも「マズマズの味」との評判である.
そのHE染色を支えているのは,若き料理人G.
Gは一料理人でありながら,昔ながらのHE染色にこだわりと研究を重ねて,今日の「病理屋シノ」の味をどこにも負けぬものにしてくれた張本人.
その味を慕って近隣から足を運ぶリピーターが,「病理屋シノ」の経営をかろうじて支えてきたと言っていい.
しかし,昨今の景気低迷に加えて原油高やホルマリン問題が勃発して,若女将シノはその打開策というか対抗策として「細胞診重視路線」を掲げる.
この「トップダウン式」の路線変更に戸惑いながら,G君は「細胞診」風味の研究にも勤しむ.
しかし,HE染色味との両立はなかなか難しく,G君による細胞診風味の研究は年来の失敗を重ねる.
いかんせんHE染色の味を支えるだけでも大変な労力である.
それに加えて細胞診風味をも,「ほんものの味」にできるのか・・・・・
G君の自信は揺らぐ.
加えて,そんなG君の悩みを知らぬ板長や若女将からのプレッシャーが.いつ頃からか重荷に感じはじめる.
自分はHE染色が好きでやってきた・・・
細胞診風味もおもしろそうだが,ほんとにそうか?
そもそも細胞診風味の研究は,若女将と板長からの業務命令であって,自分の意思で初めたことではない.
果たして自分に合っているのか?
しかも細胞診風味は,HE染色に比べて責任の重さがさらに加わる.
自分はこんなプレッシャーに耐えて,やっていけるのか・・・?
そんな中,初めてG君は「退職」ということを意識しはじめる.
ある日,手塩にかけて育てた若手料理人見習いのYが,退職になる.
表向きの理由は「契約が切れた」であり,実際にそうなのだが,G君は素直にそう考えられない.
様々な憶測や根もない噂が耳に入ってくる.
Yに対する自分の教育方針が悪くって,彼女はクビなのか・・・
若女将や板長にはお世話になったが,もうこれ以上自分を偽ってここに残っても浮かばれない.
ここは退職して,心機一転やり直すしかない・・・・・
・・・・・こんな感じが,今回の顛末なようだ.
この一週間で今までのこと,これからのこと,いろいろ話し合った.
最初は頑なだったG君だが,ポツリポツリとしゃべってくれはじめて,最後には今後の部の方針に対する意見までを聞き出すことができた.
この一週間でのG君との会話時間は,今までの4年間を凌ぐほどであった.
そんな中で,今まで理解しているようでしていなかったお互いのことがだいぶん分かりあえた気がする.
最後は,若女将シノの必死の説得に料理人G君は折れて,もうしばらくHE染色を中心に頑張ってもらうことになった・・・・・・という,ちょっと前の連続ドラマにありがちで,ストーリー的にもう少しヒネリが欲しくってツマランが,でも何となくハッピーエンディングとなった.
とりあえず,よかった.
限りなーーーく・・・・
深ーーーく・・・
どーーーん底まで・・・・
G君とは4年間ほど一緒に仕事をしてきた.
この期間の西日本大病理部の技術的な部分を支え,今の水準まで引き上げてくれたのは,ほとんど彼の功績と言っていい.
彼には,技術を下支えする真面目さ・地道さがあり,その向上を図り更に新たな部分にチャレンジする研究心がある.
「・・・という疾患に出てくる△△が,〇〇染色でわかるみたいやけど・・・この染色ってできる?」と相談してみると,いつの間にやら染色が染めあがっている・・・.
「先日に・・・・・というミスが起きたけど,今後は・・・・・っという工夫をしていきましょう」というような問題提示ができる・・・.
その反面,もうちょっとなんとかなぁ・・・という面もあるにはある.
無口で頑固,真面目な堅物で,こうと決めたらなかなか曲げない・・・
今回,急にやめたいと言ってきてから,二人で何度もいろいろ話し合った.
話し合ってはじめて見えてきた経緯を,13時30分からの連続昼ドラ風にたとえて言えばこうだ.
・・・・・若女将シノが切り盛りする老舗「病理屋シノ」は,昔ながらのHE染色が自慢で,近隣でも「マズマズの味」との評判である.
そのHE染色を支えているのは,若き料理人G.
Gは一料理人でありながら,昔ながらのHE染色にこだわりと研究を重ねて,今日の「病理屋シノ」の味をどこにも負けぬものにしてくれた張本人.
その味を慕って近隣から足を運ぶリピーターが,「病理屋シノ」の経営をかろうじて支えてきたと言っていい.
しかし,昨今の景気低迷に加えて原油高やホルマリン問題が勃発して,若女将シノはその打開策というか対抗策として「細胞診重視路線」を掲げる.
この「トップダウン式」の路線変更に戸惑いながら,G君は「細胞診」風味の研究にも勤しむ.
しかし,HE染色味との両立はなかなか難しく,G君による細胞診風味の研究は年来の失敗を重ねる.
いかんせんHE染色の味を支えるだけでも大変な労力である.
それに加えて細胞診風味をも,「ほんものの味」にできるのか・・・・・
G君の自信は揺らぐ.
加えて,そんなG君の悩みを知らぬ板長や若女将からのプレッシャーが.いつ頃からか重荷に感じはじめる.
自分はHE染色が好きでやってきた・・・
細胞診風味もおもしろそうだが,ほんとにそうか?
そもそも細胞診風味の研究は,若女将と板長からの業務命令であって,自分の意思で初めたことではない.
果たして自分に合っているのか?
しかも細胞診風味は,HE染色に比べて責任の重さがさらに加わる.
自分はこんなプレッシャーに耐えて,やっていけるのか・・・?
そんな中,初めてG君は「退職」ということを意識しはじめる.
ある日,手塩にかけて育てた若手料理人見習いのYが,退職になる.
表向きの理由は「契約が切れた」であり,実際にそうなのだが,G君は素直にそう考えられない.
様々な憶測や根もない噂が耳に入ってくる.
Yに対する自分の教育方針が悪くって,彼女はクビなのか・・・
若女将や板長にはお世話になったが,もうこれ以上自分を偽ってここに残っても浮かばれない.
ここは退職して,心機一転やり直すしかない・・・・・
・・・・・こんな感じが,今回の顛末なようだ.
この一週間で今までのこと,これからのこと,いろいろ話し合った.
最初は頑なだったG君だが,ポツリポツリとしゃべってくれはじめて,最後には今後の部の方針に対する意見までを聞き出すことができた.
この一週間でのG君との会話時間は,今までの4年間を凌ぐほどであった.
そんな中で,今まで理解しているようでしていなかったお互いのことがだいぶん分かりあえた気がする.
最後は,若女将シノの必死の説得に料理人G君は折れて,もうしばらくHE染色を中心に頑張ってもらうことになった・・・・・・という,ちょっと前の連続ドラマにありがちで,ストーリー的にもう少しヒネリが欲しくってツマランが,でも何となくハッピーエンディングとなった.
とりあえず,よかった.