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『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

「風の歌を聴け」からの熱心な読者が多かろう村上春樹氏。

ご多分にもれず,自分もそこそこの読者だ。

但し,文庫になってからでないと本を買わないという,不熱心さがあるが・・・

しかし,不熱心だが年季は入っている。

手元にある文庫「風の歌を聴け」は,昭和57年7月15日第1刷。

売るつもりなどないが,ひょっとしてそろそろ高くなるかもしれん。

ところで,それ以前,つまり「風の歌を聴け」以前からの彼の信奉者だと言ったら,どうだろう?

そんなヒトは,そう多くは居ないだろう。



おまえは彼(=村上氏)の幼馴染か?知り合いか?と問われる人がいそうだが,そうではない。

それははるか昔の話。

村上氏がまだ小説家として知られていないほどの昔。

自分がおそらく小中学生時代だから,今から30年以上も前になる。

当時の自分は,FMラジオから流れる「ロック」という音楽にあこがれが強かった。

たとえば,山本さゆり嬢とか渋谷陽一氏の「軽音楽をあなたに」はエアーチェック必須のプログラム。

そのために,自分は「FMレコパル」という雑誌を購読していた。

簡単に言えばこの雑誌はFMラジオ情報誌であり,これから先2週間分のプログラムが掲載されている。

っで,これをしこしこと読んで,好きなプログラムを録音のうえ楽しむワケだ。



そんな「FMレコパル」には,FMプログラム表の他に,おもしろい企画が盛りだくさんだった。

その一つに,「私の100枚」というような題で,その道の通な人にその道のレコード名盤100枚を紹介してもらおうという企画があった。

そこに,村上氏は出ていたハズだ。

・・・っと言っても,記憶はあいまい,確かめる術もなし。

まぁ嘘が入っているかもしれん(ちらっと思ったが,違う雑誌の可能性もある?月刊誌だったか?)が,まぁ誰も真偽はあまり分からないだろうから,自分の記憶のままに続ける。

当時の村上氏は,ジャズ喫茶のオーナー。

なので,ジャズの名盤100枚を紹介していた。



そこで紹介されていたレコードのいくつかが,実は今,自分の手元にある。

たとえば,スタンゲッツが最も好いと書いてあったので,すぐに買いに行った。

キースジャレットが素晴らしいとのことで,さっそく手に入れた。

マイルスもロリンズもソニークラークも,言われるままに買ってきた。

その勧めにしたがって買ってきたレコードの数,およそ20枚ほど(素直やなぁ…)。

当時のお小遣いのすべてを注いでいたので,自分的にはけっこうな入れ込みようではある。

こう書くと盲信しているように聞こえるかもしれんが,そうではない。

「私の100枚」を読んで,買って,聴いて,いいなぁって思って,また読んで,買って,聴いて,これもいいなぁって思って・・・・・

これの繰り返しなので,そこに激しい共感はあったワケだ。

要は,自分は30年ほど前に,すでに村上氏のジャズ名盤の「目利き」をかなり信奉していたことになる。

30年前でっせ~。

誰にも負けんやろな(って,勝ってどーする?)。
大先輩先生と酒を飲んだ。

70歳をそろそろ越えんとする先生は,
非常勤の身分ではあるが,
未だに現役で顕微鏡を覗いている。

自分などの若輩と酒を酌み交わしていただける,
ジェントルなお人柄だ。

それに,
ここが違うところなんだが,
今でも勉強を欠かさない。

日進月歩であるところの,
いろんな取扱いや規約や分類やルールを,
貪欲に吸収しようとされる。

お歳をとられると,
まぁそこそこで・・・とか,
まぁそれなりに・・・となって,
これまでの知識の蓄積で診断しようとされる先生が少なくない。

言いにくいところではあるが,
いやまぁ一般論として。

こうなると,
どんなエライ先生だったとしても,
少し厄介なことが出てくる。

ルールが新しく変わると,
今までの「常識」では通用しないことがある。

すると,
完全なる誤診ではないんだが,
何かが足りない診断になってしまう。

情報不足で,不備がある。

こんなことが重なると,
そのエライ先生の「看板」は,
風に吹かれて飛んで行きそうになる。



大先輩先生の「看板」は,
この辺りでは最も歴史があって重々しい老舗のそれだ。

いつもなら
「オイ,シノ君,あのガンは普通でええんか?」とか
「あの診断じゃ足りんやろ」とか,
本質をズバッとついて,
こっちがドキッとするようなことを言われる。

なので
「う~ん,スイマセン」とか
「まったく,そーです」となって,
白旗降って完全降伏となる。

ところが,
今宵はいつもと様相が違う。

「こんな老人,いつまで顕微鏡覗けるかわからんからね」とか
「○○の親父さんが亡くなったのは,5年前やったか?」とか。

気のせいか,少ししんみりとした話題が多い。



宴が終わり解散になる。

「じゃあ少し歩いてくるか・・・」

大先輩先生は,
一人で近くを散策しながら帰ると言う。

「じゃあ失礼します」

駅に向かう乗り合いバスの中から,
会釈をする自分たち。

コーナーを回ろうとして,
後ろを振り返りつつ前を見る先輩先生。

一期一会。

ベタだが,
この言葉の重みをずっしりと感じる。



素行の悪い中一・長男いっ君が,
また中学校でやらかしたらしい。

今回の件は,
休み時間に悪友とのふざけ合いがエスカレートして,
いっ君が靴を取られたことに始まる。

取られた靴は,
何人もいる悪友から悪友へと手渡される。

「ほ~れっ」
「おまえ,返せよ」
「や~だね,ほ~れ」
「返せったら」的な
やり取りがあったかどうかは知らぬ。

そうして靴がゴミ箱にちょーど収まったタイミングで,
国語だかの先生が教室にやってくる。

「なんで靴がゴミ箱に・・・?おまえ,靴どーした?」
となったらしい。



ネガティブに見れば,
友人に靴を取られる
→その靴がゴミ箱に捨ててあるってのは,
典型的な「いじめ」のケース。

事実だけを並べると,
靴を取られたいっ君は,
いじめられ側。

どー見ても被害者だ。

少なくとも,
第一発見者である国語教師はそう思ったのかもしれん。

一方でポジティブに見れば,
なんだか「夕陽が丘の総理大臣」の一場面みたいだ。

さしずめいっ君は,
問題児グループにおける井上純一的な役割か。

アホなことや悪だくみは,
笑いさえ取れるなら率先してやるタイプなので困る。

何事も中心であることはいいことだが,
問題事の中心ってのはちょっとなぁ・・・・・



そんなケースが
国語の先生→担任の先生
へとリポ-トされ,
担任の先生の判断に委ねられる。

その結果,
靴を取った悪友に加えて,
いっ君の二人が担任の先生に呼び出される。

そうして悪友に加えて,
なぜかいっ君にも反省文が課せられる。

まぁ靴を取られるいっ君にも当然「播いた種」があるという,
先生の大岡裁きなのか。

あるいは,
悪すぎる日頃の素行の「ツケ」が溜まっていたという,
オオカミ少年的報いなのか。

真相はわからぬが,
とにかく反省文提出の期限が迫っている。

ちなみに今回の反省文は,
提出先が校長先生行き。

かなりの重罪に値する。



「はぁ~めんどくせ・・・お願いやから,一緒に反省文書いて~や,おかーさん」

傍目にはちょっと理不尽にも見える反省文。

最初は少し気の毒にも感じたが,
いっ君本人はどこまでも能天気だ。

って言うか,
本人も少しは悪かった以上は書かざるを得んと思っているようだ。

「これからはお笑いではなく,一生懸命勉学に励みます,おわり・・・・・っでええかなぁ?」

どこまでもフザケているこんな姿を見ていると,
この機会に大いに反省してもらわんと・・・と思えてくる。

まぁ自業自得やんなぁ,ホンマ。



自分が携わる病理なんて,
病院の片隅でちまちま仕事してると諸兄はお思いだろうが,
実は核問題を抱えている。

それは電子顕微鏡に使われる,
「酢酸ウラニル」の管理問題だ。

切片の染色試薬であるこの聞き慣れない物質は,
立派な核燃料物質。

つまり,
これを大量に集めたとして,
濃縮してちょちょいのちょいっ・・・
とすれば核兵器が出来上がる。

作ったことなどあるワケないが,
そんなに難しい技術ではないと聞く。



どの世界にも「流行り廃れ」はあるもんだ。

ちょっと昔の病理と言っても70年代頃だろうか,
電子顕微鏡がもてはやされた時代があった。

まぁどこもかしこもと言っては語弊があるが,
ウチのような片田舎の大学でも電子顕微鏡を使って研究していた程度には,
ポピュラーだったということだ。

なので,
その染色試薬である「酢酸ウラニル」も,
当然のことながら多くの研究室に置いてあった。

この危険物は普通の褐色の小瓶に入っており,
見た目は他の試薬と区別はつかない。

しかも昔のことなので,
今や聞くも恐ろしきこの核燃料物質が,
とてもイージーに手に入り,
イージーに扱われ,
イージーに捨てられていた
(かもしれない・・・,と保身のため付け加えておく)。

それが,
超微形態から分子生物学的手法へという,
研究手法における大きな「時代の流れ」に飲み込まれる。

自分たちの研究フィールドでも,
電子顕微鏡の活躍の場は,
メインステージからサブへと変わっていく。

それに連れて,
研究の手段としての電子顕微鏡は出番が少なくなり,
従って購入された酢酸ウラニルも使用量が減ってくる。

あまり使われない「実験試薬」は,
試薬棚の一番後ろに追いやられ,
その存在自体がだんだん忘れ去られる。

まるで,
一世を風靡したルーズソックスが,
今やタンスの奥のどこかに忘れ去られているように。

研究とは新たなる未知を追いかける作業である以上,
まぁしょーがない面もある。



そこへ降って湧いたように,
「酢酸ウラニル」は「核燃料物質」だからしっかり管理しなさい!
というお触れがお役所から出てくる。

事情はわかる。

おそらく,
20世紀末に起きた東海村の臨界被爆事故の影響がある。

それに不穏なるお隣がいるという,
国際的地理的な本邦の位置関係も大きいだろう。

なので,
自分たちの施設もお触れに従って,
しっかりと管理させてもらっている。

しかし,
この「核管理」の方向性には,
大いに問題があると言わねばならぬ。

今や,
これらの核燃料を使って自ら研究しているヒトは,
きわめて少数だ。

ハッキリ言えば,
現存の核燃料物質の「大半」が,
「前世代の使い残し」。

それは,
管理記録を見てみればわかる。

大半の研究室で,
酢酸ウラニル管理量の推移=増減無し
が続いている。

購入もしなければ,
使いもしない。

ならば,
そんな誰も使わない厄介なる物質は,
適正に処分すればよいと誰しも思う。

しかし,
それがなんとダメらしい。

いったいぜんたいそりゃどーいうこっちゃねん?



現状では,
法的にこの「核燃料物質」の最終処分法が定まっていない。

つまりは,
現存する「厄介モノ」は,
末端レベルで永久に管理して持ち続けろ!
ということだ。

これは科学技術担当の某省のお考えなので,
末端の我々としては従わざるを得ない。

結果として,
全国のあちこちの施設で,
この危険物管理に手を焼いている。

まぁそんな危険物を承知で購入した者の自己責任?
ってことなんだろう。

しかし,
この「危険物を永久に持ち続けなさい!?」っていう発想は,
どっからくるのだろう?

まさか・・・・・?

末端に管理責任を押し付けて任せて,
中央では方針決定を面倒なので先送る慎重に見極めている?

まさかまさか・・・・・?

昔のヒトの負の遺産の処分は,
次世代にお願いしましょう・・・
ってこと?

なんだか,
途方に暮れるのを通り越して,
下顎が外れて,
地面に届くまで伸び切ってしまいそうだ。



この核問題って,
いつになったら解決するのだろう?

今,
世界のあちこちで人類が向き合う核拡散問題よりは,
ずっと簡単に済むと思うけど。


近所のモールのフードコートにて。

ようやく空いた席に座って,
遅い昼食を取る父と二女みー(小二)。

うどんを食べ始めたみーが,
さっそく割り箸を床に落としてしまう。

みーは,
食事中に歩き回ったり,
箸を落としたりなど,
落ち着き無いこと甚だしい。

「何やってんねん・・・割り箸下さいって,貰って来い!」
とみーに言い渡す父。

このフードコートは完全なるセルフサービスで,
箸は店舗窓口に置いてある。

しょんぼりして,
うどん屋窓口まで割り箸を取りに行くみー。



帰りの遅いみーに痺れを切らし,
様子を見に行ってみる。

すると案の定,
みーは店先でもじもじしている。

はぁ~やっぱりなぁ・・・

みーは内弁慶。

ウチでは兄姉と同等なる態度だが,
それが外では別人になる。

そんなみーを見ていると,
幼少の自分に似ている気がする。

それに加えて,
三人兄弟の三番目という,
ある意味どーでもよく扱われがちであり,
且つ何もせずとも兄や姉がやってくれるという,
気楽なポジションに置かれている。

なので,
知らないヒトへ頼み事をしたり催促することなど,
あまり経験なく過ごしてきたと言っていい。

ここは何としても,
みーに箸をもらわせるべきかなぁ。

「頼んでみたの,みー?」

「・・・・・・・」

「ええか,大声で割り箸下さいって言わんと,お店のヒト,分からへんでぇ」

そう言い渡して,また一人にさせて置く。



しばらくすると,
みーはよそよそしくゆっくりと席へ戻って来る。

たぶん言い出せずに帰って来たか・・・

そう思っていたみーの右手には,
新しい割り箸が握られている。

「おっ,貰って来たか,えらいなぁ」
と言って褒めてやる。

「・・・・・・・」

みーは,無表情のままうどんを食べ出す。

「よく頼んだなぁ,えらいぞ,ん?」
としつこく褒めてみる。

「・・・・・・・」

不機嫌になったみーは,
父が何を言っても貝のように押し黙っている。

素直になれないみー。



帰宅して。

機嫌を直したみーは,
この出来事を母に報告したいと言い出す。

「お母さんに,割り箸もらえたって自慢したい!」

「おー,いいぞ」

「お母さん,褒めてくれるかなぁ?」

「ああ,きっと褒めてくれるでぇ」

しばらくして,
疲れた母が帰って来る。

「ただいま~」

「あっ,帰って来た」
と玄関に駆け出すみー。

「おかえりー,あのね今日ね・・・」
玄関からみーの意気込んだ大声が聞こえてくる。

「・・・モールでご飯食べてね,箸もらって来たよ,ねぇすごい?ねぇお母さん?」

しかし母は,
あまりにも性急なる拙いみーの説明に,
何事が起ったのかよく飲み込めない。

「よかったねぇ,ご飯食べて来たの?」

「うん,ご飯食べに行ったけど・・・・・・うぇ~~~ん

急に泣き出すみー。

どうやら期待が大きかった分,
ピンボケなる母の褒め言葉に落胆したようだ。

「うぇ~~~ん,ちっとも褒めてくれへぇ~ん,もっと褒めてぇ~」

母の前では素直すぎるみー。