核問題を病理から考える | 『しのゼミ』

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日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

自分が携わる病理なんて,
病院の片隅でちまちま仕事してると諸兄はお思いだろうが,
実は核問題を抱えている。

それは電子顕微鏡に使われる,
「酢酸ウラニル」の管理問題だ。

切片の染色試薬であるこの聞き慣れない物質は,
立派な核燃料物質。

つまり,
これを大量に集めたとして,
濃縮してちょちょいのちょいっ・・・
とすれば核兵器が出来上がる。

作ったことなどあるワケないが,
そんなに難しい技術ではないと聞く。



どの世界にも「流行り廃れ」はあるもんだ。

ちょっと昔の病理と言っても70年代頃だろうか,
電子顕微鏡がもてはやされた時代があった。

まぁどこもかしこもと言っては語弊があるが,
ウチのような片田舎の大学でも電子顕微鏡を使って研究していた程度には,
ポピュラーだったということだ。

なので,
その染色試薬である「酢酸ウラニル」も,
当然のことながら多くの研究室に置いてあった。

この危険物は普通の褐色の小瓶に入っており,
見た目は他の試薬と区別はつかない。

しかも昔のことなので,
今や聞くも恐ろしきこの核燃料物質が,
とてもイージーに手に入り,
イージーに扱われ,
イージーに捨てられていた
(かもしれない・・・,と保身のため付け加えておく)。

それが,
超微形態から分子生物学的手法へという,
研究手法における大きな「時代の流れ」に飲み込まれる。

自分たちの研究フィールドでも,
電子顕微鏡の活躍の場は,
メインステージからサブへと変わっていく。

それに連れて,
研究の手段としての電子顕微鏡は出番が少なくなり,
従って購入された酢酸ウラニルも使用量が減ってくる。

あまり使われない「実験試薬」は,
試薬棚の一番後ろに追いやられ,
その存在自体がだんだん忘れ去られる。

まるで,
一世を風靡したルーズソックスが,
今やタンスの奥のどこかに忘れ去られているように。

研究とは新たなる未知を追いかける作業である以上,
まぁしょーがない面もある。



そこへ降って湧いたように,
「酢酸ウラニル」は「核燃料物質」だからしっかり管理しなさい!
というお触れがお役所から出てくる。

事情はわかる。

おそらく,
20世紀末に起きた東海村の臨界被爆事故の影響がある。

それに不穏なるお隣がいるという,
国際的地理的な本邦の位置関係も大きいだろう。

なので,
自分たちの施設もお触れに従って,
しっかりと管理させてもらっている。

しかし,
この「核管理」の方向性には,
大いに問題があると言わねばならぬ。

今や,
これらの核燃料を使って自ら研究しているヒトは,
きわめて少数だ。

ハッキリ言えば,
現存の核燃料物質の「大半」が,
「前世代の使い残し」。

それは,
管理記録を見てみればわかる。

大半の研究室で,
酢酸ウラニル管理量の推移=増減無し
が続いている。

購入もしなければ,
使いもしない。

ならば,
そんな誰も使わない厄介なる物質は,
適正に処分すればよいと誰しも思う。

しかし,
それがなんとダメらしい。

いったいぜんたいそりゃどーいうこっちゃねん?



現状では,
法的にこの「核燃料物質」の最終処分法が定まっていない。

つまりは,
現存する「厄介モノ」は,
末端レベルで永久に管理して持ち続けろ!
ということだ。

これは科学技術担当の某省のお考えなので,
末端の我々としては従わざるを得ない。

結果として,
全国のあちこちの施設で,
この危険物管理に手を焼いている。

まぁそんな危険物を承知で購入した者の自己責任?
ってことなんだろう。

しかし,
この「危険物を永久に持ち続けなさい!?」っていう発想は,
どっからくるのだろう?

まさか・・・・・?

末端に管理責任を押し付けて任せて,
中央では方針決定を面倒なので先送る慎重に見極めている?

まさかまさか・・・・・?

昔のヒトの負の遺産の処分は,
次世代にお願いしましょう・・・
ってこと?

なんだか,
途方に暮れるのを通り越して,
下顎が外れて,
地面に届くまで伸び切ってしまいそうだ。



この核問題って,
いつになったら解決するのだろう?

今,
世界のあちこちで人類が向き合う核拡散問題よりは,
ずっと簡単に済むと思うけど。