「信 三則 その一」 | 『しのゼミ』

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日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

「信を人に取ること難し。人は口を信ぜずして躬を信じ,躬を信ぜずして心を信ず。是を以て難し。」

『人から信用を得るのは難しい。いくらうまいことをいっても,人は言葉を信用しないで,その人の行いを信用する。いや,本当は行いを信ぜずに,心を信ずるものだ。心を人に示すことは難しいのであるから,信を人に得ることは難しいことだ。』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>

▼ クレーマー・クレーマー

病理診断のクレーム処理は自分の仕事。

クレーマーは病院内の医師。

たとえばあれが書いてないだの,これも診て欲しいだの,それはどういう意味だの,予想されていたものとは程遠いだの,もう少し詳しくコメントしてだの,別の可能性はないのかだの・・・・・

そういったクレームが均すと3~4件/1週間程度あるが,たまに一日に数件重なるとさすがにストレスを感じる。

できればクレームなど聞きたくはないが・・・・・これも仕事だ。

ならばその処理は,自分の信頼性をワンランクアップするチャンスと考えることにしている。

実際には信頼性が上がるワケではないかもしれんが,こうすると精神衛生上は良い。



▼ 何かにすがりたい・・・

後輩のアミ先生が,臨床科某先生のクレームに辟易だ。

その某先生が受け持つ患者の大腸生検が,よくわからない変化に見える。

っで「よく分かりません」という病理報告をしたのが気に入らないらしい。

アミに対して,せめて鑑別疾患(可能性のある病気)だけでも挙げてくれと食い下がっている。

そのプレパラートをアミと一緒にもう一度検鏡するも,皆目見当がつかない。

「難かしいなぁ・・・やっぱわからんわ」

「私にも当然ムリです・・・あと,お願いできないでしょうか?シノ先生」

「ちゃんと向こう(臨床医)には丁寧に説明したんか?」

「しました,電話でですけど・・・・・」

「丁寧に説明すれば,普通は分かってくれるもんや」

「そりゃあ,シノ先生くらいベテランで肩書きがあったら・・・」

肩書きで病理診断ができるもんでもないと思うけど・・・・・



▼ 何の工夫もないシノ流クレーム処理法

しょうがないので,クレーマーであるところの臨床医を呼び出す。

彼らの考えを聞き,一緒に検鏡して病理側の考えを述べる。

顕微鏡で診てどこまではわかるのか,どこからがわからないのか・・・・・

自分なりに正直に丁寧に説明する。

すると,クレーマーは納得して帰って行く。

・・・なにも珍しいことをしたワケではない。

どの業界もやるべきことは共通するように思える。



▼ 王道は?

誰もが人から認められたい。

そして,信用・信頼されたいと思う。

出世したり中堅と呼ばれるような年齢になれば,自然にそうなると思っていたが・・・

けれども実際はそんなもんでもない。

まるで砂の上の楼閣なる「信頼性」。

ヘタすると築き上げてきた信用が一瞬にして跡形もなく崩れたりする。

さりとて信頼は一日にして成らず。

とにかく「言行一致,真心添えて」し続けることが王道か。

反対に見れば,悪い態度やうっかり失言に対する「信用」は根強いので気をつけよう。