記憶とこだわり | 『しのゼミ』

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日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

某内科先生から電話。


「あの~,先日に病理結果をもらった○○さんの生検なんですけど・・・」

「○○さんって・・・どんなヒトやったっけ・・・」

「胃と十二指腸の生検で両方ともにガンが出てて・・・」

「あぁ,あのヒトか・・・あの胃の組織はこうこうでこうなってて・・・」


患者○○さんの病理報告に関しての問い合わせ。

たとえば臨床像が微妙だったり治療方針が迷うような際に,参考としてよく病理のコメントを求められる。

こんなふうにいきなり聞かれても,簡単な顕微鏡所見であれば,意外にけっこう覚えているもんだ。

最近のものでしかも悪性だったらば,なぜかしら頭の片隅にその顕微鏡像の断片が残っている。




病理検体の受け付け作業をするT技師。

彼には驚くべき才能がある。

それは何かというと・・・・・

ここ数日以内に受け付けた病理検体の「患者さんの名前」をほとんど覚えている。

ちなみに,受け付け検体数は一日30件以上あるので,つまりは30人以上。

まぁけっこうな数と言っていい。

試しに,「△△さんの検体って,いつ頃提出されたっけ?」と彼に聞いてみる。

すると,「△△さんですか?・・・・・確か三日前の大腸の生検材料にあったような気が・・・」

「信じられん・・・よくもまぁ名前まで覚えとるなぁ」

「まぁ,クセで覚えてしまうみたいで・・・」

こんなふうに病理検体の提出日や種類などが素早く分かる。

まさに「短期メモリー機能」付き技師。

こんな彼に任せとけば,病理検体の取り違えなんて起こらんような気にもなってくる。




完全におっさん領域な年齢の主任さん(♂)。

実はもうすぐ「おじいさん領域」になりそうなんだが,服装は小綺麗だしけっこうおしゃれなタイプ。

自分と一回りは年齢が違うはずだが,そんなことを感じさせない若々しさがある。

そんな主任さん,立場柄,職場内の異変を目ざとくキャッチする。

その視点というか感受性というか目の付け所がおもしろい。

実は秘書さんの髪型が変わった(らしい)んだが,それに早速気付いた主任さん。


「おっ・・・いいね,その髪型」。

「えへ・・・ありがとうございます」

「ちょっと前によくかけてたメガネがよく似合うんちゃう?」

「あぁ,あの黒縁の?」

「イヤ,そっちじゃなくってワインレッドみたいな色の・・・」

「あぁ,あっちの方ですか・・・」


秘書さんのメガネの色なんて・・・・・覚えとらんなぁ。

自分にとってはほとんど気にかけたことのない世界。

そんな主任さんの気配りもあってか,秘書さんの機嫌は今日もよい。




このように病理って細かい記憶がよくないと勤まらへんねん・・・って言いたいとこやけど,

多分これって,記憶の良し悪しということではない。

要はこだわりのあることは,なぜかしらけっこう覚えてんねん,人間って。

それが,結局はそのヒトの「人となり」を作っていくことになるわけで。

そやから,良いこだわりを持ちたいもんだ。