「子宮筋腫 leiomyoma uteri」
子宮に発生する良性腫瘍で,成熟した平滑筋細胞の増殖から成る。
一般には割面は白っぽく固い塊を作る。
ホルモン感受性があり,閉経後は縮小する傾向がある。
▼ ありふれた病気です
筋腫は頻度が高い腫瘍で,女性4人に1人は持つという。
厳密に診断したとすれば,3人に1人程度の頻度になると言うヒトもいる。
確かに,子宮に偶然に筋腫を見る機会は多い。
あまりにありふれているので,自分などは筋腫があっても気にならないレベルになっている。
大半が良性の振る舞いをするため,症状や事情がない場合は手術になることは少ない。
▼ 大きくなります
これまで病理部に提出された手術検体の中で,サイズが最も大きなものは筋腫だろう。
筋腫はほとんどが良性で,悪性はまれにしか遭遇しない。
もしも悪性だったら,周囲に飛び散ったり(転移),重要な部位を食い破ったり(浸潤)する。
そうすると痛みとか出血とかを訴える,つまりは我慢できない「症状」が早く現れる。
そして大きなサイズになる前に,不幸にして命を落とすこともある。
しかし,一般的な筋腫は良性。
飛び散ったり噛みついたりはしない。
なので症状は現れにくく,たとえ現れても我慢できてしまう。
そんな筋腫もいちおう腫瘍の仲間。
放っておいたら,どこまでも大きくなる・・・・・
▼ しかもた~くさん
また多発することも多い筋腫。
大きなものから小さなものまで,筋腫が数えきれない場合もある。
先日の多発筋腫切りだし担当は若手K君。
多発の場合は,基本はいくつもある筋腫一つにつき最低一つは標本を作るように・・・との内規(自分たちの決めごと)がある。
でもこの担当ケースは無数多発例。
大きなものは3センチほどあるが,小さなものは2~3ミリ。
しかもけっこうな数である。
大きなものは標本にしやすいが,小さなものはどうするか?
こんな小さなものまでいちいち標本にしていたら大変だ。
それに,肉眼的にもとても悪性には思えない。
しかし,1筋腫1切片というやかましい内規がある。
どうすべきか・・・K君は悩む。
悩んだ末,K君がしたことは「馬鹿正直に全部作ってしまえ」法。
その結果,標本の数が全部で50枚ほどにもなってしまう(通常は20枚程度か)。
結局は上司(=シノ)にお小言を言われる。
「切りだしは,ケースバイケースで臨機応変に・・・」
・・・なんか納得できないK君。
▼ 入れ物が大変です
先日に提出された大~きな子宮筋腫。
30㎝ほどの径があり,オトナの頭大の大きさ。
重さにして2~3kgもありそうな巨大腫瘍。
これを手術で取り出した後,ホルマリンという固定液に浸けた状態で,病理部に提出される。
しかしあまりにもでかいので,ホルマリン漬けをするための入れ物がない。
ホルマリン固定のためには数種類のタッパーが用意されているが,その最大のものでもこの巨大腫瘍は入りきらない。
手持ちで最大のタッパーでも,ホルマリンをなみなみ入れたところで子宮筋腫の1/3程が液面から顔を出してしまう。
顔を出した筋腫部分はホルマリンの浸透が不十分で,病理から文句を言われるだろう。
ならば半分に切って入れたらどうか?
しかし下手に割を入れると病理に叱られる。
・・・どうしよう?
困りに困った若手医師クン。
でっかい筋腫が入るようなでぇ~っかい入れ物はないかなっと思案して・・・・・
思いついたのは「ミッペール」の箱。
ミッペール,つまり医療廃棄物入れの「ゴミ箱」。
このゴミ箱だったら,大きなものは50センチ四方ほどあって,でかい筋腫も余裕で入る。
しかもポリプロピレン製で頑丈,ホルマリンを入れた後でもゴミ箱としての再利用は可。
ナイス・アイディ~ア!
っと言うことで,でかいミッペールにホルマリンをなみなみと入れ,筋腫を浸して病理部へ持ち込む。
すると・・・・・
「〇△□!」
やっぱり叱られた。