3年生の病理講義の始まるハズの時間。
講義担当でもない手ぶらの自分が,なぜか講義室の壇上にいる。
時間通りに集まった真面目な学生達が注視する中,マイクを持ってしゃべりはじめる。
なるべく申し訳なさそうに,
なるべく残念そうに,
なるべく丁重に,
「連絡が伝わっていなくって申し訳ない・・・」と謝罪する自分。
本来ならこの日の消化器病理の講義はアミ先生の担当だった。
今年から新しく教官の仲間入りをしたアミによる,上部消化器疾患の病理についての単発受け持ち講義。
ところが肝心な担当のアミが現在ツワリ中。
何時終わるとも知れぬ吐き気に苦しんでおり,今は講義どころではない。
ではこの講義をどうするか?
妊娠発覚後,一度はアミの担当講義を自分が代行しようと思ったが・・・・・
いかんせん範囲が広すぎるし,準備時間がほとんどない。
ムリして代行すると,病院業務が疎かになるし,自分の首が完全に絞まる。
ならばと早々に講義代行はあきらめて,他の方法を探る。
一番楽なのは,アミ分=休講。
事情が事情だけに,休講してしまっても許されるだろう。
講義していない部分が出てくるが,それは学生が自習で補えばいいだけのこと。
担当者がいないので,しょうがないやん・・・
しかしここで妙な教官魂が騒ぐ。
教官としてはいい加減なことはしたくない・・・
今度の自分担当の講義時間があるが,そこをうまく使えないか・・・
アミ分にまで少し踏み込んで講義することはできるか・・・
コーディネーターの先生に事情を説明して相談すると,「お好きにしていいですよ」とのこと。
結局,アミ分の講義は休講としてもらうが,何故かアミ分を背負いこもうとする自分。
っで,その(休講となった)当日になったわけだが。
休講となった時間に講義室近くを偶然通りすぎると,講義室に学生が集まっている。
あれ~おかしい・・・
学生を捕まえて聞いてみるも,今日の「病理休講」なんて聞いてないと言う。
ちょっと待ってよ・・・
コーディネーターの先生に電話してみるも,「病理休講」は通知済みなハズと言う。
え~そんなぁ・・・
どうやら「休講」の連絡がどこかで滞っているようで,学生には伝わっていないらしい。
はぁ~マイッタなぁ・・・
よくある事務連絡ミス。
ミスはミスとして,やっぱ学生には一言謝らねばならぬ。
しかし自分はやるべきコトは抜かりなくやった。
自分が謝らねばならぬ道理はない。
知らぬ顔して通り過ぎても,誰も文句は言わないだろう。
しかしこういう所でええカッコしーなサガが疼く。
関係者を代表して謝ってやったわ~的な安物正義漢。
「実はシノ先生っていい人やん!」って言われたい症候群。
っというワケで,講義室の壇上で自ら進んで謝罪する自分。
「今日の講義は休講にします!」
そう学生達に伝えると・・・
「ヒャー」とも「キャー」とも聞こえる歓声?が上がって,
パチパチと拍手が少々。
そう言えば「臨時休講」って,突然プレゼントをもらったようでうれしかったなぁ~。
そんな学生時代の記憶が蘇る。
皆の喜びの視線を浴びながら,ちょっと良い気分。
それも手伝ってか,「次週の講義にはアミ分もやります!」とカッコつけて余計なことを口走る自分。
こんな重荷を背負いこむことを繰り返して喜んでいる自分。
死ぬまで治らんサガ。