先日の胆管ガン手術での術中迅速で。
胆管の切除断端が手術室から病理に提出されてきた。
胆管ガンであるから,肝臓と十二指腸の間の胆管のどこかにガンが存在する。
それを取り残しの無いように,少し余裕を持って切除する。
但し,余裕を持ちすぎてたくさん切るのもよくない。
必要且つ十分な範囲を切除するのが外科医の腕の見せ所。
そんな時に威力を発揮するのが術中迅速。
外科医がだいたいこの辺だったら大丈夫(=ガンがいない)と思われる辺りの組織を少し切り取る。
それを「術中迅速検体」(たとえば胆管断端)として,病理に提出する。
病理では,その検体を急速に凍結して切片を作製し,顕微鏡で覗く。
その結果,ガン細胞がいなければ,そこを断端として切除範囲を決めればよい。
ガン細胞がいるのなら,もう少し広い切除範囲が必要ということになる。
ちなみに術中迅速に要する時間(検体提出から顕微鏡で覗いた結果報告まで)は約20分ほど。
こんな時間の拘束の中,よくやってるよ自分!(誰もしてくれないので,自分で褒めてみました)。
っで,今回は胆管の断端。
実はこの胆管という組織では,ガンかどうかがとても分かりにくい場合がある。
ガンか良性かが分からんとはどういうこっちゃ?もっと勉強せいっ!と叱られるかもしれない。
しかし分からんもんは分からんし,「良悪の鑑別が困難な場合がある」などと教科書にも書いてある。
ある意味,胆管断端の術中迅速は「病理医泣かせ」とも言える。
どこの世界にもそのような「実務者しかわからない事情」がある。
今回の胆管断端も,ご多分に漏れず炎症がひどくって分かりにくい。
ぱっと見は,炎症でよく分からんけどガンはなさそう。
しかし検体の端っこに変な細胞の塊が1ヶあった。
ん~~~どうしよう・・・・・
気になる細胞集塊。
でも見れば見るほど悪く(=悪性に)見える。
念のためもう数枚切片を作ってもらったが,やっぱり変な細胞がいる。
インターホンで外科医に聞いてみても,提出検体はガン本体の近くでけっこう怪しい(=断端にガンいるかも?)らしい。
結局「断端にガン細胞あり」ということで拡大切除になった。
後日に検体を固定しなおして作製した切片にもガンが確認できて,やれやれである。
それにしても,うっかりすると見逃してしまうような小さなガン細胞の塊。
よくもまあ「あれ?」って思えたなぁというような頼りない,でもやっかいな存在。
自分の経験の中でも一・二を争うようなファインプレーだったのかもしれん。
こんな「超美技」をした時は病理医冥利に尽きる。
自分の場合は,周囲の目が無いのを確認してから軽く「ガッツポーズ」をする。
でもそれだけ。
たとえ「超美技」をしようとも,それを提示し共感しあう場所や文化がない。
一般に「褒められない=感謝されない」環境が病理にはあるような気がする。
少しは「褒められ感謝される」ことがあったほうがいいんじゃなかろうか?
そんなもんを求めるのはまちがっとる!とどなたかに叱られそうであるが・・・・・
慣れていないのでくすぐったいが,「こんな細胞をよくガンと診断できたねぇ~スゴイ」と言われてみたい。
別に「珍プレー好プレー」みたく,みのもんたの解説付で紹介してもらいたいとは思わんが・・・・・