「シノ先生,お邪魔してます」
「お~,Cさんやないか」
後輩のC先生が大学病院病理部に来ている。
Cさんは学生時代によく病理に遊びに来てくれた。
大学卒業後しばらく研究していたが,今や医師不足で有名な某臨床科の若手女性医師。
現在は市中病院でがんばっている。
そんなCさんが久しぶりに顔を見せてくれた。
しかし,こんな真昼間から一体どうしたんだろう?
「どうしたCさん,夏休みか?」
「いえ・・・・・ちょっと体調を崩しまして」
「体調って・・・・・ひょっとしてツワリか?相手は誰や?式はいつや?」
しかしCさん,会話の食い付きがいつもより悪い。
よくよく話を聞いてみると,どうやらデプレッションで休んでいるらしい。
デプレッション=鬱状態。
医師不足は,特に地方で深刻な問題になっている。
あまりの業務過多で,耐えきれずに去っていったり燃え尽きたり鬱になったり・・・・・
そんな話が周りに転がっていても不思議ではなくなった。
それにしても,まさか自分の知るCさんがその仲間入りをしようとは・・・・・
しかしCさんは一時の危機を乗り超えて,今はだいぶん復活しているようだ。
「うちの部長に言われたんです,これくらいならできるやろって」とCさん。
「要求キツイな」
「そんなら4時間睡眠で,やれるとこまでやったれって気になりまして・・・」
「ナポレオンやな」
「そうですよ,ナポレオンにでもなったるわって2か月半は4時間睡眠でがんばりましたが,それ以上は無理でした」
「そりゃそうやろ」
「あまりに腹がたって,精神科で診てもらった「鬱」の診断書を,部長に叩きつけてやりました」
「戦うねえ」
「やっぱり,ナポレオンみたいにはいきませんでした・・・」
「鬱になる前って,どうなるの?」と参考までに聞いてみる。
「だんだん判断力が鈍ってくるんです」とCさん。
「判断力か」
「今まで簡単に決めてたものが,決めれなくなったり判断ミスしたりします」
「自分も夕方の疲れ切った時はそうかもしれん・・・それから?」
「それから,真夜中に理由もなしに悲しくなって泣いてしまうんです」
「へえ~,それはないな」
「さすがに自分でもおかしいなって思いまして・・・」
「もう少し我慢してたら,引き返せなくなってたかもしれんな」
「そうですね・・・・・シノ先生は大丈夫ですか?」
う~~ん・・・もう少し持つかもしれん・・・・・