今日の外勤先の市中病院でのこと.ここの病院の熱心な病理技師さんのことは以前に書いた.
この病理技師ノコさんと世間話をしていたところ,「細胞診検査士」の話題に自然に移ったため,思い切ってもう一度ペップトークをかますことにした.
「細胞診検査士」の説明をもう一度しておくと,この資格は病理技師さんが持つべきと言うか,今後必要なと言うか,持ったほうがよいものである.
剥がしたり溜まったりした細胞を集めてきて,顕微鏡下にその中から「ガン細胞」を見つけるのが仕事となる.
「ガン細胞」と一言でいっても,数限りない種類がある.
それにたとえば同じ肺がんと名前が付いていても,それぞれの細胞はすべて微妙に違う.
たとえるなら,人間の顔は基本的に眼二つ・鼻一つ・口一つがついているが,それらが形作る顔つきはそれぞれのヒトで全く同じではなく微妙に違うことに似ているか・・・.
そんな細胞の集まりを丹念かつ緻密に見て,「ガン細胞」を見つけ出すには,それ相応の知識と経験が必要になる.
その知識があると保証し認定してくれる資格が「細胞診検査士」である.
この資格試験だが,それほど簡単な関門ではない.
けっこう真面目に勉強して,いろいろな細胞をけっこうがんばって顕微鏡で見ておかないと,合格は覚束ない.
技師さんは,日中は通常の病院業務をこなさなければならず,試験勉強となるとアフター5にしなければならない.
そういった勉強に専念できない環境もあって,合格までに何年も要するヒトは珍しくない.
さて,ノコさんはこの細胞診検査士の資格を持っていない.
なにせずっと一人でやってきたし,病院や技師長からの指示もなかったため,必要性を感じることなくしたがって試験を受けてこなかった.
今まではそれでよかったが,時代の流れや病院の性格が変わったこともあって,それがないと病理をやれなくなってきた(らしいが,詳しい理由は聞いていない).
「いまさら勉強できないし,もうそろそろ(病理を外される)かな・・・って思ってます」
それを聞いて何を宣っとるんじゃ~っとつい力が入り,試験を受けるために勉強せえっと説教してしまったのが2か月前.
しかし,その後ノコさんからのレスポンスはまったくなし.
・・・あんだけ言ったのに・・・
・・・やっぱウザいだけだったか・・・
残念だが力及ばずか,とほとんどあきらめていたのだが・・・
「あのなぁ,ノコさん.あんたは一歩前に進まなアカン!」
「・・・はぁ・・・」
「何も考えず,細胞診の勉強しますっと言いな!」
「・・・はぁ・・・」
「やる前に考えちゃアカン!やってから考えな」
「・・・はぁ・・・」
「やってみれば,細胞診って自分に合うな・・・とか,やっぱ自分好みじゃないわ・・・とか,こっちの勉強がしてみたい・・・とか,なにかが見つかるんや」
「・・・・・・・・」
「だから,とにかく何も考えずにやってみな」
「・・・・・・・・」
しばらく考えていたノコさんから,「・・・わかりました,実は悩んでいましたが決心しました,やってみます」という返事をもらった.
それにしてもこの説得の文句,どっかで読んだなぁ・・・と思ったら,先日の記事の内容そのもの.
少しはためになってるか・・・
一歩を踏み出そうかどうか迷っていたノコさん.
その背中をチョンと押してあげることができた.
とてもうれしかった.