マジすか学園外伝・Sの遺恨 第百十一話 高柳明音凶刃編⑥ | ガツキーブログ

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主にマジすか学園の二次創作を更新しています。48G・坂道Gが大好きで、よかったら気軽に読んでください。

 






「…はーあ。」






一人の男がカップ麺、お茶のペットボトル、おにぎりが入っているコンビニの袋を持って路地をため息をつきながら歩いていた。






「いつになったら戻れんだろ…」






男の名前は若田。抜暮南警察署の刑事で現在自宅謹慎処分中である。






自宅謹慎と言えど謹慎が解けるまでずっと自宅にいなければならないわけではない。






食料品や生活品などの買い物程度なら外出しても良い。だがいつ連絡が来るかわからないので常に携帯電話やスマホを持っていなくてはならない。






若田「でも復帰できても当分デスクワークだよなぁ…その前に警部補に怒鳴られるだろうなぁ…」






早く謹慎が解けないかと思ってはいるが、解けたら解けた時のことで不安を感じながら愚痴を溢す。






コンビニから自宅であるマンションに到着すると階段を上る。五階建てのマンションで若田は三階に住んでいる。






若田「さて、明日は復帰の連絡があることを祈りながら今日も晩飯を食いますか。」






自宅謹慎中の生活を受け入れながらも、明日にでもの復帰を望みながら自分の部屋の鍵を開け中に入る。






玄関で靴を脱ぎ電気を点ける。部屋の真ん中に置いてあるテーブルにコンビニの袋と財布とスマホを置く。






若田「さてと…」






カップ麺を食べようとしてお湯を沸かそうと体の向きを変えると、袋と一緒に置いたスマホが鳴る。






若田「ん?」






その音に気づきスマホの方へ体を向け手に取る。画面を操作すると一件のメールが届いていた。






若田「…あ、警部補からだ。」






上司であり、コンビを組んでいる高橋警部補からメールが届いていた。






【ちゃんと大人しくしてるか?お前は考え込み過ぎたり熱くなったりすると視野が狭まるからな。まぁこれを機にちゃんと頭を冷やせ。


謹慎が解けて戻って来たら色々覚悟しろよ?現場に復帰できたら飲みにでも行こう。】






短いながらも高橋からのメールに若田は思わず嬉しさに頬を緩める。






若田「警部補…ガラにもないことしちゃってんだから。」






高橋がこういったメールを送って来ることは珍しいようで、若田は滅多にない高橋からの気遣いに笑顔になり、スマホをテーブルに置き上機嫌で再度お湯を沸かそうとする。






その時だった。






―――ガンッ!!!






若田「っ!?」






突然ドアに何かが思いっきりぶつかったような音が聞こえ、若田はビクッと驚く。






若田「な、なんだなんだ?」






玄関で靴を履き、ドアを開けるとドアの前には誰もいない。






若田「?……」






今度は両隣の部屋のドアを左右見渡す。すると階段がある右側の方に顔を向けると、黒のモッズコートを羽織り、フードを深く被る高柳が二つ隣の部屋のドアの前に立っていた。






若田(……誰だアイツ?あんな奴このマンションに住んでたっけ?)






若田は高柳の顔が良く見えず、こちらの方に向けて口角を上げている口元しか見えなかった。全く見かけたことのないその姿にどこか異様さを感じた。






高柳「………」






若田の方を向いているが特に何も言わないし、何もしてこない高柳。






若田「?……っ!」






若田は首を傾げドアを見ると、下の方に少し凹みがあるのを見つけた。






若田「なっ、お前がやったのか!?」






高柳「………」






大きな声で高柳に尋ねるが、高柳は何も言わない。






若田「俺は抜暮南警察署の刑事だ!お前がやったんなら器物損壊の罪だぞ!?」






高柳「………」






若田の言葉に高柳は何も反応しない。すると高柳の後ろから一人のOLの女性が帰宅してくる。






「……?」






通路のど真ん中に立っている高柳の後ろ姿を見て警戒はするが若田の部屋より奥の方の部屋のため高柳の右横を通り過ぎようとする。






高柳「っ。」






OLの女性が右横を通り過ぎた瞬間、高柳は右ポケットからナイフを取り出すとそのまま斜め上に振り抜く。






「きゃっ!!」






高柳のナイフの凶刃が女性の左腕に切り傷を負わせる。女性は驚きながら左腕から走る激痛に腕を抑えながら腰を抜かしてその場に尻もちをついてしまう。






若田「っ!?…おい!!」






若田は何が起こったのか理解出来ず一瞬時が止まったが、すぐに我に返り高柳に怒鳴りながら飛び出してくる。






高柳「ハハッ、」






高柳は笑いながら女性の血がついたナイフをしまい、その場から後ろを振り向き階段に向かって走り出す。






若田「おい待て!!」






高柳を追いかけたいが、左腕から流血している女性の安否を優先し駆け寄る。






若田「大丈夫ですか!?」






「は…はい……。」






女性は突然のことに気が動転していて、恐怖で体と声が震えていた。すると若田の部屋の左隣の部屋のドアが開く。






「……何かあったんですか?」






そこには一人の若い男性が出てきて、若田に何かあったのかと尋ねる。






若田「今すぐ救急車と警察を呼んで!」






「え…急にどうし、」






若田「いいから早く!!」






「は、はい!」






男性は若田の言うことに従い慌ててスマホを取り出す。






若田「あとこの人を頼む!警察が来るまで付き添っててくれ!あと傷を押さえる布かタオルを用意してくれ!」






「は、はい!」






男性は電話を掛けながら自分の部屋に戻る。






若田「すぐに救急車が来ます。警察も来ますから治療を受けた後事情を話してください。」






若田は女性にそう言うと、階段の方へと走り出す。勢いよく階段を下りながら高柳を追いかけようとする。






若田「ハァ…ハァ…」






一気に一回まで駆け下りてマンションの外に出る。もうすぐ夜になりそうで辺りが暗く見え辛くなってくるため急いで高柳を探す。






若田「あの女…一体どこの誰だ?……どこにいやがる…あ、」






すると路地の方で高柳がまるで若田が来るのを待っていたかのように立っているのを見つける。






高柳は若田が来たのを確認するとまた走り出す。






若田「この…待……」






この時若田は走り出そうとするが躊躇ってしまう。なぜなら若田は自宅謹慎中であるため、犯罪の現場を目撃したがこのまま追いかけ良いのかと迷ってしまう。






若田(このまま追いかけて良いのか?謹慎中なのに捕まえようとして良いのか?………でも、)






若田は意を決し高柳を追いかけるように走り出す。謹慎中でありながら単独で犯罪の現行犯を捕まえようとしたことが署に知られれば、もっと重い処分が下されるだろう。






だが自分の目の前で犯罪が起こり、その犯人が逃走を図っている。このまま謹慎中という理由で見逃せば、このまま見つからずまたどこかで犯罪を犯すのではないのかと考えてしまう。






若田(例え謹慎中でも…犯人が目の前にいるのを見逃すなんて…刑事失格ですよね?警部補。)






きっと高橋警部補でも同じことをしただろうと思いながら若田は高柳を追いかける。






若田(このまま追いかけても結果取り逃がすかもしれない…ならまだ黒いコートとジーンズ、身長が150センチ台ってことぐらいしかわからないからもっと奴の特徴を探れれば…)






自身で捕まえられれば上出来だが、捕まえられずとも後々早期に逮捕できる犯人の特徴を少しでも多く集めようという考えだった。






高柳が角を曲がるのが見えると、若田も曲がり角に差し掛かると曲がる。方向から見て街の方へと向かっているようだ。






若田(街には警察が巡回してる。奴がそこまで考えナシだったらこのまま他の警察官と出くわして捕まえることができるけど…頭回んなら裏路地に入るだろうな。)






若田の予想通り高柳は建物と建物の間に入り入り組んでいる裏路地に逃げ込んだ。











自宅謹慎中の若田刑事を狙った高柳の行動に挑発され若田は逃げる高柳を追いかける。



まだ高柳の名前などの正体を知らない若田は高柳の正体を掴むことができるのか?



次回の更新は金曜日です。