映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」AI美空ひばりが何故ダメなのかの名回答 | 忍之閻魔帳

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▼映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」AI美空ひばりが何故ダメなのかの名回答

 

公開中■映画:男はつらいよ お帰り 寅さん

 

渥美清の代表作であり、国民的な人気を誇った

あのフーテンの寅が22年振りにスクリーン復帰した

映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」をようやく観ることが出来た。

同シリーズの生みの親である山田洋次監督が

第1作の公開から50周年を迎える今年に向けて復活を決意し、

「釣りバカ日誌」の監督としても知られる朝原雄三と共同脚本を執筆。

倍賞千恵子、浅丘ルリ子、吉岡秀隆、前田吟、夏木マリ、美保純、佐藤蛾次郎、

池脇千鶴、小林稔侍、笹野高史といった豪華な顔ぶれが集まった。

監督からの熱烈オファーを受けて女優復帰を果たした後藤久美子や

音楽界の寅さんを自称する桑田佳祐がおなじみの名曲を歌唱することも話題。

 

既に亡くなってしまった寅さんをどのようにしてスクリーンに復帰させるのか。

監督と交流のある横尾忠則が「旧作の出演シーンを繋げれば良い」と

進言したと主張しているが、私からすればそれは言いがかりというか

横尾氏の認識不足だろうと思っている。

というのも、48作目の撮影終了後の1996年に渥美清が亡くなった翌年、

49作目として公開された「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」は

満男(吉岡秀隆)の回想録という設定にして、過去の出演作から集められた映像を

再編集して完成させたものだからだ。

横尾氏は酒の席で「過去の作品からの映像を使えばいい」と言った後に

山田監督が押し黙って聞いていたと語っているが、

それは単純に「それもうやってるんだけど・・・」と思っていたのだと私は思っている。

目上の横尾氏に否定的な返事もできず困っていただけだろう。

 

さて本題。

 

AI美空ひばりの歌声を聞いて複雑な想いを抱いた私でも

この映画の中の渥美清は素直に受け入れることが出来た。

懐かしく思い出し、名調子を聞いているだけで涙が溢れてくる。

劇場はほどほどの客入りだったが、皆大いに笑い、大いに泣いていた。

運動会で大騒ぎし、メロンひとつで大喧嘩を繰り広げる面々の

下らないやり取りのひとつひとつが、

かけがえのないものだったのだと思わされる。

 

劇中に登場する人物の半数は既に亡くなっていて

少しセンチメンタルな気持ちになったりもしたのだが、

かつて共にスクリーンを彩った仲間達の想いを背負った

倍賞千恵子や浅丘ルリ子や前田吟ら現役俳優陣の芝居が

積み重ねた年月の重みを感させるだけでなく、

「泣いてばっかりいないで笑ってちょうだい。これは喜劇なんだから」と

語りかけているようで、そうだ寅さんは人情喜劇だったと思い直した。

寝ずの番で大宴会を繰り広げるような、楽しい気分で観れば良いのだと。

 

人情に厚い正義感で、美人には滅法弱く、単純でお調子者。

みんな寅さんが好きだったのよと、懐かしく語る面々。

思い出話に花を咲かせている間は、束の間その人を近くに感じることが出来る。

ディズニーアニメの「リメンバー・ミー」のように、

その人のことを誰かが覚えてさえいれば、その人は心の中で生きている。

欠けた風景を残像が埋めて、心の中が少し暖かくなる。

 

映画の後半では、歴代マドンナ達が次から次へと登場し

はじける笑顔をスクリーンに焼き付けて去ってゆく。

この映画は寅さん(渥美清)だけを偲んでいるわけではない。

俳優は出演した作品が上映される限りは死なない。

だって彼、彼女達は、あなたの胸の中で今も生き続けているでしょう?と

山田監督に語りかけられているようで、大原麗子や八千草薫らが

バトンタッチ形式で登場する終盤はずっと泣いていた。

ふとした瞬間に誰かが言った(どのマドンナだったかはわからなかった)

「ねえ、人って何で死ぬのかしらね」

この台詞を引っ張ってくるセンスに痺れる。

山田洋次はやはり天才だと思う。

 

寅さんの遺したドタバタした空気と四角い顔は

今も観客ひとりひとりの心に生きている。

寅さんの遺した数々の名台詞に励まされたり、

人生の教訓としている人も多いだろう。

受け継ぐとは、そういうものなのだ。

生前の音声データを掻き集めてフランケンシュタインのようにつぎはぎし

「人のようなもの」として完成した代物は、やはり「歌」にはならない。

AI美空ひばりには何が足らなかったのか。

何故不快感を覚える人が続出したのか。

その答えの全てが、本作にはある。

 

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シリーズ全作入りのBlu-rayボックスが無性に欲しくなった。

ジェームズ・ボンドは何人も変わっても

寅さんは渥美清ただひとり。

映画界の永久欠番として、改めてその偉大さを痛感した。

 

映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」は現在上映中。


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美空ひばりのAIに対しては様々な意見があろう。

あの滑らかな、しかしどこか違和感の残る歌声を聴いて

「本物のようだ」と喜ぶファンがいるなら、そのことまで責めるつもりはない。

しかし私はああいった企画は、できれば今回限りにして欲しいと思った。

故人の遺志は知る由も無いが、生前の美空ひばりが

どれほど歌を大切にしていたかを良く知っているからだ。

 

テクノロジーの進化は人類には不可欠で、

その恩恵を常日頃たっぷりと受けて暮らしている私だが

例えば今後、大瀧詠一の歌声をAIで再現しましたと言われたら

きっと今回どころではない勢いで怒ると思う。

つい先日、山下達郎がAI美空ひばりについて

「冒涜だ」と述べたとニュースになっていた。

正月の記事でAI大滝を例に出したばかりだったので、

「そりゃあ達郎はそうだよな」と嬉しくなった。