映画「轢き逃げ -最高の最悪な日-」監修をつければ傑作になった可能性も | 忍之閻魔帳

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▼映画「轢き逃げ -最高の最悪な日-」監修をつければ傑作になった可能性も

 

公開中■:轢き逃げ 最高の最悪な日

 

「TAP THE LAST SHOW」で監督としての経歴をスタートさせた水谷豊が

脚本と監督を兼任した2作目「轢き逃げ -最高の最悪な日-」が公開中。

ひとりの女性が被害に遭った轢き逃げ事件にスポットをあて、

事故発生時に現場から逃走した加害者とその友人、

何の前触れもなく最愛の娘の命を奪われた被害者家族双方の心情を描く。

出演は中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、檀ふみ、毎熊克哉、岸部一徳。

水谷自身も被害者の父親役で出演している。

主題歌は、その声を聴いて水谷が即決したという手嶌葵の「こころをこめて」。

 

人間どこに才能が隠れているかは分からないので

水谷豊が監督と脚本を兼任することに対して色眼鏡はない。

むしろ、予告編が加害者と被害者それぞれの心理描写に力点を置いた

ヒューマンドラマのように作られていたので、傑作なのではとの予感もあった。

映画の中盤ぐらいまでは、芝居の付け方がやや大仰なことを除けば

予想していた通りで、期待値はゆるやかに上昇していたのだが…。

 

「シネマトゥデイ」に掲載された水谷のインタビューにこんなやり取りがある。

 

最後まで全部を決めて(脚本を)書いたわけではないんです。

だいたいストーリー上、大きく起きることのイメージがあり、

書き進めているうちに、別の世界が気になるんですね。

「さっき出てきた彼はどうなった?」「彼女は何をやっている?」

「その家族はどんなことを思っている?」……

そんなことを思いながら、どんどん進めていったんです。

 

この映画の展開がまさにこのままなのだ。

加害者とその友人のやり取りをメインにした序盤は

緊張感たっぷりのカメラワークも相まって

特に事故が発生するまでの数分感は正視出来ないほどリアルだった。

しかし、被害者側の夫婦に目を移し、加害者の社内の立ち位置と

人間関係に枝葉を伸ばしていくうちに、

物語の骨子がどこにあるのかがどんどん曖昧になっていってしまう。

 

謎解きの仕掛けとして敢えて観客を揺さぶっているわけではなく、

ドライビングテクニックに難のあるタクシーに乗せられたような

ダッチロールに求心力は低下し続け、

ヒューマンドラマと思わせていた中盤までの展開を

一気にひっくり返す(台無しにする)サイコサスペンスへと変貌した時点で

すっかり冷めてしまった。

被害者をいたわりつつ加害者にも寄り添って包み込もうとする

是枝監督作品のような包容力を期待した私が悪いのかも知れないが、

出来の悪いミステリーに着地してしまったのは残念でならない。

少しだけネタバレして書くと、

このオチ(真実)では警察は動きようがないのではないかと思う。

計画にランダム性が高過ぎるし、全てが意図した通りに進んだとして

それで何の罪に問えるのだろう。良く分からない。

ネタバレ終わり。

 

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テレビで連日報道されている事故現場のカフェに

まるでガイドブックでも見てやってきたかのように

楽しそうにやってくる女学生には違和感を覚えるし、

娘を亡くしたばかりの父親に、在りし日の娘の姿を見せようと

わーきゃーはしゃぎながら動画や写真を見せる職場の同僚も

無神経過ぎて腹立たしい。

若者の生態を掴み切れていないのか、時代錯誤を感じる場面が多い。

今時の若者の部屋にCDプレーヤーなどもう置いていないだろう。

昔良く聴いた曲を流すにしても、スマホで自前の音源を流すか、

YouTubeやSpotifyで検索するかのどれかだと思う。

さらに気になるのは、この曲が劇中で流れるタイミング。

このオチで映画を作るのであれば、この曲を大切にしているのは

加害者と結婚したばかりの嫁か、被害者自身か、被害者の母親あたりに

設定しておかなければメッセージと折り合いがつかないし、

何よりも「あ、あいつが好きな曲だ」とモヤモヤする。

 

脚本の不備はどれも些細なことで、

ちょっと指摘すれば簡単に修正が出来たものばかり。

水谷豊の持ってきた脚本にクレームは付けられなかったのかも知れないが

法的な部分も含めた監修が付いていれば格段に良くなったはず。

 

本の不備を補うように良い芝居をしていた

岸辺一徳と檀ふみのおかげで、映画としてまとまってはいる。

特に檀ふみのラストの表情は、自身の喪失感が埋まらないまま

未来ある若者の心理状態を察して手を差し伸べる母性の強さが出ていて

震えるほどの名演だった。

最後の最後に、それまで穏やかだった表情が曇り

ほんの一瞬冷徹に見えるところまで含めての演技ならば

このシーンだけでもアカデミー助演女優賞モノである。

 

粗ばかりあげてきたが、2作目の監督作品にしては光る部分もあり、

3作目も観たいと思わせるだけの可能性は感じる。

映画「轢き逃げ -最高で最悪な日-」は現在公開中。