少年の成長物語としては秀逸。映画「鉄人28号」 | 忍之閻魔帳

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それにしても去年は酷い目に遭った。
監督のナルシズムが空回りした「キャシャーン」
邦画の底辺を見た思いの「デビルマン」
今ひとつ垢抜けない「キューティーハニー」と、
思い入れの強い原作が次々に映画化され、次々に陵辱されていった。
特に、ドラマ版の「漂流教室」以下の物はこの世にないだろうと
思っていた私にとって「デビルマン」は忘れられない1本だ。
「デビルマン」を観た2日ぐらい後、
「銀河鉄道999」が実写で映画化される夢を見た。
帽子もコートも衣装はそのままだったが、メーテル役は叶恭子であった。
目覚めた時、私の掌は汗でびっしょりであった(実話)。

懐かしの名作の映画化が半ばトラウマになりかけている私に、
ようやく希望を取り戻させてくれそうな映画がやってきた。
それが、今回紹介する「鉄人28号」である。
監督は、「非・バランス」「ごめん。」など、
地味ながら味わい深い青春映画を撮る冨樫森。
12歳~15歳あたりを主人公にして映画を撮るのが非常に上手い監督だ。

今回の「鉄人28号」は、「ウルトラマン」で言うところの
ウルトラマン登場後にしか興味がなかった数十年前の私なら
あまり好きな映画ではなかったかも知れない。
物語の主題が、主人公・正太郎の成長に置かれているためだ。
視覚効果を「ガメラ」「ゴジラ」などの怪獣モノから
「リング」「呪怨」「感染」などのホラーまで
幅広く手掛ける松本肇氏に任せることで、
それぞれが得意分野で分担作業をしたような印象を受ける。
富樫監督は富樫監督の、松本氏は松本氏の、
それぞれの持ち味を発揮した仕上がりになっているが、
両者がうまく噛み合っていないあたりは
「ゴジラ FINAL WARS」に似ている。

撮影したのはもう1年半ほど前ということで、
正太郎を演じた池松壮亮は現在では身長も大幅に伸び、
声変わりもしてすっかり大人の面持ちになっている。
そんな彼の成長と重なるように撮影された本作は、
少年期に誰もが通る「通過点」を
「鉄人28号」というフィルターを通して描いているのだ。
本作における池松壮亮は、この時だからこその輝きを放っており、
「誰も知らない」の柳楽優弥を思い起こさせる。
正太郎の両親を演じた薬師丸ひろ子、阿部寛などの実力派から
名も知らぬエキストラまで、
全ての登場人物が「正太郎の物語」を包み込むように存在している。
この辺は富樫監督ならではだろう。

突っ込みどころの多い脚本や
香川照之と川原亜矢子が演じる悪役側の存在感が薄いこと、
13歳とは思えない演技を見せる池松壮亮に対し
あまりにもお粗末な中澤裕子の演技など、
正太郎にスポットを当て過ぎた弊害もいくつか見受けられるが、
後半の盛り上がりに免じて今回は全てチャラにしたい。

殴り合うだけの鉄人がカッコ良かった。

薬師丸&阿部の両親に泣かされた。

勝ち気な蒼井優がキュートだった。

千住明氏の音楽も素晴らしかった。

ただし、設定の緻密さやCGのクオリティが
映画の出来・不出来に直結する若者は他をあたった方がいい。
技術力で比較されたらはっきり言って相当不利だ。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:鉄人28号
    配給:松竹
   公開日:2005年3月19日
    監督:富樫森(「ごめん。」)
    出演:池松壮亮、蒼井優、薬師丸ひろ子、阿部寛、他
 公式サイト:http://www.tetsujin28.jp/
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