王子様より大切な人。映画「アナと雪の女王」 | 忍之閻魔帳

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▼王子様より大切な人。映画「アナと雪の女王」

「美女と野獣」「プリンセスと魔法のキス」と
歴史に残る傑作をいくつも発表してきたディズニーミュージカルの最新作は
アンデルセン童話「雪の女王」をモチーフにした「アナと雪の女王」。
先行公開されたアメリカではディズニーアニメ史上最高の興行成績を叩きだし
先日のアカデミー賞でも長編アニメ賞と歌曲賞(Let It Go)をWで受賞した話題作。

監督は「サーフズ・アップ」のクリス・バックと
「シュガー・ラッシュ」の脚本を手がけたジェニファー・リー。
アナ役には「ヴェロニカ・マーズ」のクリステン・ベル、
エルサ役には舞台「RENT」のモーリーン、「Wicket」のエルファバなどで知られる
実力派のイディナ・メンゼル。
日本語吹き替え版ではアナを神田沙也加が、エルサを松たか子が務める。

ディズニー作品ではお馴染みのおまけ短編は
初期のモノクロミッキーと最新の3D技術が融合した
「ミッキーのミニー救出大作戦」。これがまた素晴らしい出来。



王室で暮らす美しい姉妹エルサとアナ。
しかし、姉のエルサにはある秘密があった。
感情の揺れによってあらゆる物を凍らせてしまう能力を持ったエルサは
ある日仲良く遊んでいる最中に妹のアナを傷つけてしまう。
姉妹の身を案じた王と王妃はドワーフの助けを借りて
アナからエルサの能力に関する記憶だけを消してもらい、二人を隔離してしまう。
エルサが自分を避ける理由の分からないアナと
アナのために我が身を孤独に置くエルサ。
両親の死後、ひとり氷の城に閉じこもってしまったエルサを
アナは救いに行く決意を固める。大好きな姉を助けるために。。。


ヒロインの変遷については「塔の上のラプンツェル」の紹介でも触れたのだが
今作はWヒロイン制ということもあり、古くから愛されてきた
ディズニーアニメの王道を守りつつ、時代を取り入れた性格付けがより鮮明になっている。
強大な力を持て余す孤独な姉と、とりあえず恋がしたい快活な妹。
異なった境遇で暮らすこの姉妹に共通の課題「真実の愛とは」を突きつけて
精神的な成長へと導くのが大まかなストーリー。

出会った日にプロポーズしてくる男に警戒心すら抱かないアナは
言ってみれば世間知らずのドジッ子キャラ。
誰からも好かれる天性の愛嬌を持ってはいるが、女王の器ではない。
一方のエルサは次期女王としての資質を充分に持ちながら
呪われた能力によって事実上幽閉状態の暮らしを送っている。
映画では内へ内へ籠ろうとするエルサと外へ外へ出て行こうとするアナを
交互に描いているのだが、印象に残るのは悲劇のヒロインのエルサではなく
むしろアナの方である。これは私も意外だった。
その原因は、アナの背景がほぼ全て見えているのに対し
エルサの背景には説明不足な点が多いからではないかと思う。



アナは物語の最初から最後まで「お姉ちゃんが大好き!」を貫いていて
だからこそラストでアナの取った選択にも納得がいく。
過去のディズニープリンセスが迷わず選んできた王子様ではなく
もっと大きな意味での「愛する人」を選ぶ姿には感動を覚えた。
しかし、エルサの周囲には謎が多い。
両親も妹も普通に暮らす王家で、何故エルサだけが特殊な能力を持って生まれてきたのか。
ドワーフと面識があるなら、ドワーフ経由で相談するツテは他になかったのか。
生い立ちに関しての言及が全く無いのである。

王子が何故カエルに姿を変えられたのか(プリンセスと魔法のキス)、
ラプンツェルの髪が何故70フィートにも伸びているのか(塔の上のラプンツェル)、
ファンタジーといえども奇異な設定には必ず理由がある。
しかしエルサは「そういう設定」として登場し、一切の説明がないまま終わってしまう。
エルサは両親やアナを恨んでいたのだろうか。
いや、そんなはずはない。
エルサはアナの為を想って不自由な暮らしを受け入れていたはずである。
屋敷を飛び出し国ごと凍り付かせたエルサが
氷の城で高らかに歌う「Let it go」の日本語詞を一部引用してみる。



ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も恐くない 風よ吹け 少しも寒くないわ

ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるよ
二度と涙は 流さないわ

光浴びながら 歩き出そう 少しも寒くないわ


うーむ、やはり解せない。
氷の城に閉じこもるエルサは「ありのままの自分」にはなったのだろうが
これほどポジティブな心境には見えない。
不幸をひとりで背負い込む覚悟を決めてそうしたように見える。
能力をコントロールする鍵が「真実の愛」だと言うなら
エルサは最初から身につけていてもおかしくないほど自己犠牲の女性なのである。

ミュージカル部分のクオリティは申し分ないし
雪だるまのオラフは今後名脇役としてパレードなどでも人気者になるに違いない。
「美女と野獣」以来の大傑作誕生かと興奮した序盤から
若干トーンダウンしてエンドロールを迎えてしまったことに寂しさはあるが、
「風立ちぬ」が競り負けてしまったのも、悔しいが納得せざるを得ない。
春のデートムービーには最適の1本。

映画「アナと雪の女王」は本日(3月14日)より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:アナと雪の女王
    配給:ディズニー
   公開日:2014年3月14日
    監督:クリス・バック/ジェニファー・リー
   出演者:クリステン・ベル、イディナ・メンゼル、他
 公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/anayuki/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



発売中■CD:「Frozen Deluxe Edition」(輸入盤)
発売中■CD:「アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック」
配信中■iTMS:「アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック」
配信中■iTMS:「レット・イット・ゴー / イディナ・メンゼル」

名スコアの並ぶサウンドトラック。
輸入盤の「Deluxe Edition」は国内盤に比べて1000円ほど安く、
デモ&主題歌のインストなどを収録したボーナスディスクの付いた2枚組。
iTMS版は間をとって1800円。
イディナ・メンゼルの歌う「レット・イット・ゴー」の個別購入も可能。
日本盤にはMay J.の歌う「レット・イット・ゴー~ありのままで」が
ボーナスとして収録されているが、これが驚くほどの棒歌唱で名曲も台無し。
それぐらいなら神田沙也加や松たか子の歌唱で構成された
日本語バージョンのサントラを出して欲しい。



アナと雪の女王 iOS Free Fall
配信中■iOS:「アナと雪の女王: Free Fall」(ユニバーサル)

ツムツムも好調なディズニーがiOSで公式アプリを配信中。
基本無料+課金制だが、パズルなのでスタミナ回復を
我慢することが出来るなら無料でちゃんと遊べる。
システムは今や目新しさが皆無の3マッチパズル。
グラフィックやステージごとのルールは
「Call of Atlantis」の丸パクりではないかと疑うレベルだが
ここまで似ているなら公式に許諾をとっていたりは・・・どうだろう。

雪の女王 iOS
配信中■iOS:「雪の女王」(iPad専用)

こちらはアンデルセン童話の「雪の女王」をベースにしたインタラクティブ絵本。
読み上げやミニゲームを収録していて作りは丁寧。
ただしiPad専用なのでその点だけご注意を。




発売中■Blu-ray:「塔の上のラプンツェル デジタルコピー & e-move付き」
発売中■Blu-ray+DVD:「塔の上のラプンツェル」

製作総指揮はお馴染みのジョン・ラセター。
監督は、これが初の長編作品とネイサン・グレノと、「ボルト」のバイロン・ハワード。

時代の移り変わりと共に、どんどん活発になるディズニーのプリンセス達。
本作の主人公ラプンツェルは、靴さえも過ぎ捨てて裸足で密林を駆け回り、
「インディ・ジョーンズ」ばりのアクションをこなすスーパー・プリンセスである。
「カリオストロの城」のクラリスにイメージを重ねたジジィは多いのではないか。
昔のディズニーなら、盗人のフリン・ライダーに少しの勇気を分けてもらうお姫様で
終わっていたはずだが、ラプンツェルはフリンをリードするだけでなく
身を挺して守ろうとする。
それでいて少女の可憐さは残しているのだから、
現代女性から多くの共感を得て大ヒットしたのも頷ける。

ミュージカル・シーンに関しては「I See The Light」だけが
飛び抜けている印象があり、そこだけは残念。
スコアが充実していれば、「美女と野獣」に匹敵する傑作にもなり得たと思う。
音楽担当のアラン・メンケンは、「リトル・マーメイド」「美女と野獣」
「アラジン」といったオスカー連続受賞時代のディズニー音楽を全て手掛け、
その後も「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」「ヘラクレス」
「魔法にかけられて」と定期的にディズニー作品に楽曲を提供してきたので
期待が大き過ぎたのかも知れない。
その代わりというか、「I See The Light」の流れるシーンは、
ディズニー映画史上に残る名シーンに仕上がっていて
ここだけは「アナと雪の女王」も敵わなかった。




発売中■Blu-ray+DVD:「プリンセスと魔法のキス」

久しぶりの手描きセルアニメーションで描くファンタジック・ミュージカル。
監督は「リトル・マーメイド」「アラジン」を発表し、
当時低迷していたディズニーを再び盛り上げた功労者である
ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ。製作はジョン・ラセター。

物語は、魔法のキスによりカエルになってしまったプリンセスと王子が
再び人間に戻るまでの過程を描いたもので、プリンセス物の王道。
舞台がニューオリンズになっているからか、音楽はジャズを基調にした
大人向けのスコアが並び、ミュージカルシーンの魅せ方もアートっぽいものが多い。
ターゲットは明らかに大人だ。
プリンセスが「夢」か「愛」かの二択を迫られた時のシーンは、
なかなか身につまされるものがあった。愛する人が夢を追っているのなら、
そしてその夢に手が届きそうなところまで来ているなら、
男はやはり、例え自分が身を退いてでも、それを応援したいものなのだ。

ちなみに、主人公の声を担当しているアニカ・ノニ・ローズは
ビヨンセ、ジェニファー・ハドソンと共に「ドリームガールズ」で
ユニットを組んでいた女性。彼女が抜群に上手い。
エンディングのNe-Yoも含め、曲のクオリティは総じて高く、
サントラが欲しくなること請け合い。




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03月19日発売■Blu-ray:「MovieNEX ジャングル・ブック ダイヤモンド・コレクション」
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04月23日発売■Blu-ray:「MovieNEX カーズ 2」
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ディズニーの掲げるオール・イン・ワン方式の
パッケージ「MovieNEX」のラインナップが拡大中。
全ての作品がBlu-ray、DVD、デジタルコピー(クラウド対応)、
追加のデジタルコンテンツが楽しめる仕掛け付き。

新作の「プレーンズ」を始め、旧作も続々と対応が発表され
7月には「眠れる森の美女」も発売予定。
アンジェリーナ・ジョリーが「眠れる森の美女」の魔女を演じる
「マレフィセント」は7月5日公開が決定している。