▼樹里の恩返し。映画「陽だまりの彼女」
「花より男子」の松本潤、「のだめカンタービレ」の上野樹里の共演による
「陽だまりの彼女」が今週末より公開。
中学時代の同級生と偶然再会した一組みのカップルの姿を
「ソラニン」「僕等がいた」の三木孝浩監督が美しい映像で綴る青春ファンタジー。
共演は玉山鉄二、大倉孝二、谷村美月、西田尚美、木内みどり、塩見三省、夏木マリ。
三十路を過ぎても『アイドル』であり続けることが
珍しくなくなった時代を象徴するかのような作品。
原作者の越谷オサムは1971年生まれ。
角川映画の全盛期をリアルタイムで経験している世代だけあって
設定、展開、オチと、そこかしこに「時をかける少女」を頂点とした
80年代ジュブナイルの影響が見える。
同じ鎌倉を舞台にして制作された「江ノ島プリズム」も
本作と同じようなジュブナイルであったが
あちらが青春真っ直中のキャストを起用しているのに対し
こちらの登場人物はやや年齢層が高め。
中学時代の同級生に、就職後に訪問した営業先で再会するのだから
奥田浩介(松本潤)も渡来真緒(上野樹里)も20代半ばのはずだが
展開する物語や交わされる会話は「江ノ島プリズム」と何ら変わらず
そこが私にはちょっとだけ痛々しかった。
ストーリーの組み立ては、中学生ぐらいからの鑑賞(読者)を想定しているのか
序盤でほぼネタバレしており、オチを隠すほどのことはないような気がする。
いわゆる「●●の恩返し」系は「まんが日本昔ばなし」に
似たようなシチュエーションのお話がたくさんあるし
まして鍵を握るのが「千と千尋」以降全ての芝居が湯婆婆化してしまった
夏木マリと来ればピンと来ない方が難しいだろう。
それでも物語は真っ直ぐ「驚きのラスト」へと邁進し
「時をかける少女」にも用意されていた切ない約束事まで踏襲しながらエンドロールを迎える。
アラサー&アラフォーなら「昔こんなタイプの映画あったな」と懐かしく
楽しむことは出来るだろうが、今時の10代がこれを観てどう思うのだろう。
手垢に塗れた王道の物語が受け継がれてゆくのは
その時代の旬のキャストが通過儀礼として演じるからこそ。
松潤と上野樹里ではやはり年齢的に厳しいと思う。
中学時代と現在を両方演じられるぐらいの年齢(20歳~23歳ぐらい)のキャストで
撮ってくれた方が、たかだか10年間のエピソードを行き来するだけで
その都度キャストが変わる慌ただしさや違和感も無かっただろうし
ストーリーが綺麗に1本線に繋がっていたはず。
ただ、中学時代を別のキャストに演じさせたことによる拾いモノもあった。
中学時代の真緒を演じた葵わかなと
同じく松本潤の中学時代を演じた北村匠海が素晴らしく良い。
おそらくはスターダストのセット売り込みだろうが、
これほどの逸材ならば問題なし。
来年以降、二人とも露出が増えてきそうな予感。
映画「陽だまりの彼女」は10月12日より公開。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:陽だまりの彼女
配給:東宝=アスミック・エース
公開日:2013年10月12日
演出:三木孝浩
出演者:松本潤、上野樹里、他
公式サイト:http://www.hidamari-movie.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

10月08日発売■CD:「光と君へのレクイエム / 山下達郎」
オールタイムベストが発売されても、いつもと変わらぬペースで
新譜をリリースし続けてくれる山下達郎の新曲は「陽だまりの彼女」の主題歌。
近年はゆったりとしたメロディに傾いていたのだが
今回は「ポケットミュージック」や「僕の中の少年」の頃を思わせるアップテンポなナンバー。
抜けて欲しいところであと一歩抜け切れないのは、さすがに歳なので仕方ないか。
30歳でティーン向けファンタジーを演じる松本潤主演の主題歌が
還暦を迎えてなおポップスを歌い続ける達郎というのもなかなか良い。
本編映像を使用したこのPVの中にも葵わかなが登場するので要チェック。

12月04日発売■DVD:「江ノ島プリズム」
鎌倉を舞台にしたタイムトラベルもの。
「あまちゃん」で人気沸騰中の福士蒼汰が主演としてクレジットされているが
「梅ちゃん先生」の野村周平と「ショムニ2013」の本田翼による
トリプル主演とも取れる内容。
監督は「キトキト!」「旅立ちの島唄 ~十五の春~」の吉田康弘。
ベースは「時をかける少女」や「ちーちゃんは悠久の向こう」あたりの
ちょっと不思議な青春映画。
親友が亡くなる前日に戻って過去を書き替えたいと願う主人公の物語は
歴史改変モノとしては良くあるお話ではあるのだが
プリズムに影を落とす役回りの未来穂香も含めた若手四人が実に初々しく、
特殊効果を使わなくとも充分にキラキラしている。
「時かけ」の尾道に向こうをはってか、こちらは鎌倉を舞台とし
湘南や江の電といった鎌倉ならではの風景が
ジュブナイルの持つ甘酸っぱさを増幅する良い効果を生んでいる。
大林版の「時をかける少女」を80年代の名作に押し上げたのは
当時16歳だった原田知世の魅力に拠るところが大きいように
「江ノ島プリズム」もまた、来年同じメンバーで撮ってももうこの味は出せまい。
芝居のテクニックとは別の、今しか出せない魅力をそれぞれがちゃんと発揮して
監督はその不完全な美しさを余さず作品に閉じ込める。
目新しさよりも丁寧さに比重を置いた演出は「キトキト!」の吉田監督らしい。
鎌倉を舞台にしたご当地映画としては、「陽だまりの彼女」よりも上かも知れない。
私はかなり好みの映画だった。
DVD「江ノ島プリズム」は12月4日発売。

発売中■Blu-ray:「ソラニン」
発売中■Blu-ray:「僕等がいた 前篇 スタンダード・エディション」
発売中■Blu-ray:「僕等がいた 後篇 スタンダード・エディション」
【紹介記事】夢のタイムリミット。映画「ソラニン」宮﨑あおい 高良健吾
【紹介記事】後篇で知る二部構成の意義。映画「僕等がいた 前篇 / 後篇」
当BLOGで紹介した三木孝浩監督作品。
詳しい内容はそれぞれの過去記事にて。
「ソラニン」は「これだけは観ておきたい、2010年度公開映画まとめ」で
邦画の上位10本に入れさせていただいたフェイバリット作品。
▼悲劇の裏に苦味なし。映画「潔く柔く」
秋は中高生向けの恋愛ドラマが集中するものなのか、
東宝の方針なのか、単に完成時期が被っただけなのか
2週連続で興収ランキング1位をキープしている「陽だまりの彼女」に続いて、
今週末よりいくえみ綾の同名コミックを映画化した「潔く柔く」が公開される。
大切な人を失った者同士が互いの傷を癒し、一歩前進するまでのお話。
主演は「モテキ」の長澤まさみと「宇宙兄弟」「謝罪の王様」の岡田将生。
共演は「男女逆転 大奥」の中村蒼、「100回泣くこと」の波瑠、
「舟を編む」「凶悪」の池脇千鶴、そして「かぐや姫の物語」「武士の献立」と
話題作への出演が目白押しの高良健吾。
監督は「ただ、君を愛してる」「僕の初恋をキミに捧ぐ」の新城毅彦。
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