言い訳と居直りに終始した映画「R100」は松本人志の最後の悪あがきか | 忍之閻魔帳

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松本人志 R100 映画


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▼言い訳と居直りに終始した映画「R100」は松本人志の最後の悪あがきか

私はダウンタウンも好きだしお笑い芸人としての松本人志も好きだ。
錆び付いてきたとはいえ、フリートークにおける彼のボケは
その引き出しの多さと早さにおいて右に出る者はいないと確信している。
しかし、映画監督としての松本人志には一度も楽しませていただいたことがない。
初監督作の「大日本人」も公開初日の初回を劇場で見てポストカードももらった。

【紹介記事】観客の好意に甘えたヌルい映画。「大日本人」松本人志

かつてテレビ番組やビデオ等で発表して来たコントの残像を
チラつかせるだけで充分映画になると踏んでいる見込みの甘さである。
「映画」という全く別の世界に勇んで飛び込んで来ながら、
結局、「芸人・松本人志」の知名度と普段の交友関係、
観客の松本に対する好感度に依存しているのだ。
笑える部分が無い訳ではないが、台詞や演技が上手いわけではなく
「あの人が怪獣になるとは」というシチュエーションを面白がっているに過ぎない。


松本人志の監督デビュー作という話題で初週こそ健闘したものの
口コミによって動員数が激減し、累計興収は11.6億円

続く「しんぼる」はワンシチュエーション・コメディの変形。
ほぼ松本のひとり芝居で進む思いきったアプローチだったが
後半に込められたメッセージが陳腐な上に表現方法が稚拙で同人の域を出ず。
「大日本人」への酷評と興収の惨敗を意識してか、初日の舞台挨拶で

悪意を持たず、ニュートラルな感じで見てもらえれば楽しめるはず。

などという逃げまで打ち始め、2作目にして早々と
「これはもう駄目かも知れんね」感が漂い始める。
累計興収も「大日本人」から半減し4.7億円に止まった。

2作続けての大赤字で資金調達に黄信号が点ったのか
3作目の「さや侍」は吉本興業&京楽産業により製作。
松本が嫌っていたマスコミ向けの試写も行い、舞台挨拶もこなし
公開前のメディア露出では「笑っていいとも!」にまで出演して
大プロモーションを展開したが結果は6.3億円

【紹介記事】迷いと親バカ。映画「さや侍」

マッチ箱の中にブルーチーズを詰め込んだような前2作から一転し、
今回はとてもメジャー志向な作りで、まるで映画作りの本をどこかで読んできたかのよう。
時代劇のセオリーを踏襲し、父娘モノの「泣き」で落とそうとした
監督・松本人志はどこへ向かおうとしているのか。
前2作のままでは客が入らない。
産まれたばかりの娘が可愛くて仕方がない。
迷いと親バカによって前2作よりも焦点の定まらない作品になってしまった。




コントの拡大版では駄目、奇をてらい過ぎても駄目、真面目にやっても駄目。
行く先々で観客から駄目出しを喰らった松本が
それでもやるさと手掛けた4作目の「R100」は
最後はコントに戻るしか無かった松本の弱音と逃げ腰が鮮明に出た
過去3作と比較しても格段につまらない、最低の1本になっている。

何がそんなにつまらないかと言うと、いちいち言い訳がましいのだ。
格好悪い。
最初から逃げを打ち、滑った時の保険までかけたコントで一体誰が笑うというのか。
キャシィ塚本がこれを見たら、フィルムをぐちゃぐちゃにして
壁に向かってドーーーン!と叩き付けていたに違いない。


大地真央、寺島しのぶ、片桐はいり、冨永愛、佐藤江梨子、渡辺直美という
それぞれにキャラが立ち、バラエティ色も持っていて
出オチに使えるほどの逸材を揃えながら誰ひとり魅力を活かし切れていない。
寿司を次々に平手で潰しまくるサトエリがやや目立っているぐらいで
大地真央、寺島しのぶ、片桐はいりはただの無駄死に。
冨永愛は冒頭の掴みの役回りなのでまだマシとして
渡辺直美に至っては彼女の鉄板ネタであるダンスまで披露して滑りまくっているのだから
これはもう逆の意味で才能と言っていいかも知れない。
SMクラブのCEOとして登場した黒幕が板尾の嫁そっくりの
巨体の外人女だったりするのを見る限り、完璧にネタが尽きたのだろう。
曲者で知られる渡部篤郎や松尾スズキも皆意外なほど普通のキャラクターで拍子抜け。
批判を恐れてか大衆ウケを勘違いしてかは分からないが
SMの世界をテーマにしていながらアブノーマルな魅力は微塵も漂わず
第三者にはうかがい知ることの出来ない、複雑な主従関係の欠片も見えてこない。
足らない覚悟を「大日本人」的なくすぐり笑いで埋めようとする姑息さに腹が立ってくる。

私が一番嫌だったのが、映画本編を劇中劇のようにして
その完成披露試写を見ている映画関係者を登場させたことだ。
「大日本人」や「しんぼる」に対して寄せられたであろう
「訳がわからない」「荒唐無稽過ぎる」「馬鹿らしい」を映画関係者に発言させ
それに対して作品の製作意図を監督の側近に語らせるのである。
寒い、寒過ぎる。
劇中で語られる監督の意図とは紛れも無く松本の意図であり
それが伝わらなかった時の保険として、台詞にして語らせる行為の何と格好悪いことよ。
挙げ句には監督は齢100歳で「あと50年すれば分かるだろう」などと
寝ぼけたことを抜かすのだから開いた口が塞がらない。
(だからタイトルがR100なのだろうが、それにしても下らない)
鈴木清順監督や新藤兼人監督に土下座して詫びを入れろ。

女王様に殴られる度に顔面に波紋を浮かび上がらせて
恍惚の表情を浮かべる主人公の物語は、最後の最後でさらなる大滑りを見せて幕を閉じる。
上映後の監督の顔は、同じように恍惚としている。
他の誰に理解されなくてもいい、映画は監督のエゴの発露であるとでも言いたいのか。
そんな戯言はマトモな作品を1本でも作ってから言え。

本作は思いっきり残虐なC級テイストのホラー映画にしてしまった方が良かったのではないか。
私なら、松尾スズキをもっと残虐な人間にして、女王達を全て松尾の支配下にあるMにする。
渡部篤郎は大森と同じM属性を持ったゲイにして、この奇妙なコンビが
松尾から女王を解放するために奮闘する、エロもグロも満載の救出劇に仕立てる。
監督は園子温か井口昇かロブ・ゾンビに任せたい。あ、松本が不在になってしまった。

つまらない映画を観て腹が立つことはたまにあるが
ここまでプンスカ怒りまくったのは「デビルマン」以来。
大コケの「ガッチャマン」ですら、本作に比べれば可愛いものだ。
こんなモノを海外の映画祭にまで持っていって「日本の映画です」と紹介しないで欲しい。
吉本主催の沖縄映画祭で、大賞でも何でも穫らせておけばいいじゃないか。
これ以上、「芸人・松本人志」の看板を「映画監督・松本人志」で汚さないでくれ。

相方も言ってるじゃないか。



映画「R100」は10月5日より公開。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:R100
    配給:ワーナー
   公開日:2013年10月5日
    監督:松本人志
   出演者:大森南朋、大地真央、寺島しのぶ、片桐はいり、冨永愛、
       佐藤江梨子、渡辺直美、YOU、渡部篤郎、他
 公式サイト:http://www.r-100.com
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