奇跡のバトン。映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」 | 忍之閻魔帳

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▼奇跡のバトン。映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」

そろそろ上映終了か。
紹介するタイミングが合わなかったな・・・と思いながら公式HPを見返してみると
終了間際なのは都市部の5館ほどで、大半はまだこれからだった。
ならばこれを取り上げないわけにはいかない。
今回は、本年度のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した
映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」を紹介しよう。



音楽ドキュメンタリーを観てこれほど興奮したのは
「THIS IS IT」や「ナニワ・サリバン・ショー」以来だろうか。
本作はマイケル・ジャクソンや忌野清志郎のように
若くして亡くなった天才を偲ぶ作品ではない。
数々の都市伝説が飛び交う中で生死すら不明になっている
伝説のミュージシャン・ロドリゲスが
今どこで何をしているのかに迫ったドキュメンタリーである。

スチール写真だけを見るとみうらじゅんかと見紛うこのロドリゲスは
世界に向けて何かを発信している全ての人間が夢に見る
ひとつの奇跡を体験したミュージシャン。
その数奇な人生は「ベンジャミン・バトン」ですら敵わないほどだ。

1970年のアメリカで、ひとりのミュージシャンがデビューする。
デトロイト出身のロドリゲスは、スカウトから「ボブ・ディランに比肩するほどの才能」と
見初められてデビューするが、発売した2枚のアルバムは全く売れなかった。
ビートルズ、サイモン&ガーファンクル、カーペンターズらが活躍する
華やかな表舞台に登場することなく
クリスマスの2週間前にレーベルから契約を解除された彼は
そのまま元の労働者へと逆戻りする。
ロドリゲスの商業ミュージシャンとしての人生はそこで終わった、はずだった。
しかし、彼の発表したメッセージ性の強い楽曲は
遥か遠く、アパルトヘイト運動をしていた南アフリカの若者の耳に偶然届き
口コミだけで50万枚(現在のミリオンヒットの10倍の影響力とも言われている)の
大ヒットを記録、一度も南アフリカを訪れたことのないロドリゲスが
現地ではプレスリーすら凌ぐほどの知名度と人気を誇っていたのだ。
表舞台を退いていたために、ロドリゲスの消息について数々の都市伝説が生まれた。
「ステージ上で自殺したらしい」「薬物中毒で死んだらしい」
そのどれもが説得力を欠いていると思ったひとりの男が
インターネットを使ってロドリゲスの現在を追い始める。



ミュージシャンとしての幸福とは何だろう。
音楽、絵画、小説、映画、、、そんな高尚なものでなくてもいい。
ブログでもいいし、ネットに上げた日記でもいい。
世の中に向けて何かを発信している人間の大半は
どこかで誰かが自分のメッセージを受け取ってくれていると信じているはずだ。
金銭的な成功で視界が濁ることがあったとしても
メッセージ入りのボトルを大海原に流した最初の気持ちは
「誰かに届け」という一途な想いであったはず。
残念ながら、その願いが成就するのはほんの一握りの人間だけで
多くの者は挫折を経験し、人生を諦観して舞台を降りる。
才能だけで勝ち上がれないのはショービズ界もサラリーマン社会も同じこと。
理不尽さに打ちのめされながら、負けを認めるしかない人々の夢の残骸の上で
スポットライトを浴びる人々が今日も笑っている。

ロドリゲスの歌が、まるでバタフライエフェクトのように
地球の反対側の人々を奮い立たせ、社会を動かす原動力になっていたことは、
「誰かいますか」と問いかけることを止められない全ての発信者にとって希望の光だ。
もちろん、こんなことは滅多に起こらない。
起こらないから映画になっているのだから。
しかし、その可能性が「0(ゼロ)」ではないというだけで
下り階段の踊り場から、もう一度舞台を見上げる人が出てくるかも知れない。

驚きの展開が待つ後半は体が震えっぱなしで、
劇場の入りが少なければボロボロに泣いていたかも知れない。
ロドリゲスの歌が南アフリカに渡り、オスカーを通じて世界中に知られ
こうして今、日本の私の耳に届いた。
人生はつくづく驚きに満ちている。

映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」は現在公開中。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:シュガーマン 奇跡に愛された男
    配給:角川映画
   公開日:2013年3月16日
    監督:マリク・ベンジェルール
   出演者:ロドリゲス、他
 公式サイト:http://www.sugarman.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



配信中■iTMS:「Searching for Sugar Man (Original Motion Picture Soundtrack)」
発売中■CD:「Searching for Sugar Man(輸入盤)」
発売中■CD:「シュガーマン 奇跡に愛された男」

映画のサントラはiTunes、輸入盤CD、国内盤CDが発売中。
違法コピーや複雑な権利問題でうやむやになってしまった全盛期とは違い
こちらの印税をきっちりロドリゲスの元に入るわけだ。
映画を観た方なら絶対に欲しくなる1枚。




発売中■DVD:「フィッシュストーリー」

「シュガーマン」を観ていてずっと考えていたのが、
中村義洋監督の作品で私は一番好きな映画「フィッシュストーリー」。
逆鱗という名のパンクバンドが発表した「FISH STORY」という曲が
長い長い時を超えて、やがて地球滅亡の危機を救ってしまうというトンデモストーリー。
存命中には評価されなかった画家もいるように、発表してすぐには届かなくても、
いつかどこかの時代では、自分の作品が誰かの心を動かしているかも知れない。
そんな夢物語を描いた伊坂幸太郎原作の映画化である。

伊坂氏は自身の書く小説の中で良く音楽を使うことで知られ、
「アヒルと鴨のコインロッカー」ではボブ・ディランを、
「ゴールデンスランバー」ではビートルズを取り上げている。
ロドリゲスとは年代的にもジャンル的にも非常に近いミュージシャンばかりなので
もしかすると伊坂氏はロドリゲス(とそのエピソード)を知っていて
そこからインスパイアされてこの物語を書き上げたのではと
そんなことをふと考えた。もちろん、全ては私の妄想である。




発売中■DVD:「ソウル・パワー」

音楽が社会を動かしたドキュメンタリーということでこちらも紹介。

1974年のザイールで開催された「ザイール'74」。
アフリカ系のアメリカ人ミュージシャンと、アフリカン・ミュージシャンが共演を果たした
この歴史的なイベントは「ブラック・ウッドストック」と呼ばれ、語り種となっていた。
映画「ソウルパワー」は、監督のジェフリー・レヴィ=ヒントが
34年間保存していた約125時間にも及ぶ映像資料をまとめた貴重な映像ドキュメンタリーで、
ジェームス・ブラウン、B.B.キング、セリア・クルース、ミリアム・マケバ、
ザ・スピナーズ、ザ・クルセイダーズら大物ミュージシャンが次々に登場する。




発売中■DVD:「カート・コバーン アバウト・ア・サン」
発売中■Blu-ray:「ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド」



▼映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」全国上映館リスト

最後に、全国の上映館と開始日を紹介。
場所によっては1週間のみの限定上映なども多いようだが
お近くにやってくる是非とも劇場でご覧いただきたい。

<北海道>
シネマ・トーラス/07/13~
シネマアイリス/06/08~

<青森県>
フォーラム八戸/06/22~

<岩手県>
フォーラム盛岡/06/15~

<宮城県>
チネ・ラヴィータ/05/31で終了

<山形県>
フォーラム山形/06/01~
フォーラム東根/06/08~

<福島県>
フォーラム福島/06/29~

<東京都>
角川シネマ有楽町/上映中
渋谷シネパレス/05/31で終了
シネマカリテ/05/24で終了

<神奈川県>
シネマ・ジャック/06/08~

<千葉県>
シネマイクスピアリ/05/24で終了

<栃木県>
109シネマズ佐野/05/25~
フォーラム那須塩原/07/06~

<新潟県>
ユナイテッド新潟/05/25~

<石川県>
ユナイテッド金沢/05/25~

<三重県>
109シネマズ四日市/06/22~

<静岡県>
CINEMAe_ra/08/10~

<大阪府>
梅田ガーデンシネマ/05/17で終了

<兵庫県>
109シネマズHAT神戸/05/25~
塚口サンサン劇場/06/08~

<岡山県>
シネマ・クレール/05/25~

<広島県>
シネツイン本通り/05/18~

<香川県>
高松ソレイユ・2/05/18~

<愛媛県>
シネマ大街道/06/08~

<熊本県>
Denkikan/06/01~

<大分県>
シネマ5/05/18~