▼実体験なのに嘘臭い。映画「だいじょうぶ3組」
「五体不満足」の作者・乙武洋匡氏の実体験を基にした同名小説が
「余命1カ月の花嫁」の廣木隆一監督によって映画化。
主人公を乙武氏本人が演じ、共演にはTOKIOの国分太一、榮倉奈々、余貴美子など。
主題歌はTOKIOの歌う「手紙」で、作詞:YUKI、作曲:蔦谷好位置。
本作について「映画」単体で評価を下すことはとても難しい。
高評価にしろ低評価にしろ、原作者であり主演俳優でもある
乙武氏への私情がどうしても入ってしまうからだ。
3年間の教員経験をベースにした、表向き『小説』であるはずの本作は
主人公を乙武氏本人が演じることでドキュメンタリーと化し
この時点で、本作に対して正当な評価が下されることは難しくなってしまった。
映画を紹介するにあたり、役所広司に敬称を付ける必要など考えたこともないのに
乙武氏にはどうしても「氏」か「さん」と付けずにいられない。
そんな周囲の気遣いを取っ払うためなのか、乙武氏は率先して公の場に出てゆき
意図的に差別的な表現を使って自らを貶めてみせる。
僕は何を言われても大丈夫ですよ。障がいは特徴ですから、と。
それでも私は、やはり乙武氏から「氏」を外すことははばかられる。
そんなモヤモヤした状態で鑑賞した「だいじょうぶ3組」は
分け隔てなく生徒と接し、屈託なく笑う乙武氏の逞しさに感心する一方で、
本当にこんなにスムーズに、全てが上手く回ったのかという疑問も捨て切れない。
うす気味悪いほど物分かりの良い子どもしか居ない、無菌室のようなクラス。
簡単に解決するトラブルしか起こらない綺麗事に終始したストーリー。
これらが本当に実体験なのであれば、それは生徒も含めた周囲が
たくさんの苦労を背負ってくれたからだろう。
3年間(映画では1年間)赤尾先生(=乙武氏)をサポートし続けた
白石先生(国分太一)は、資料作成から何まで全ての雑用を一手に引き受けているのに
全くと言っていいほど報われず、美味しいところだけ全て赤尾先生の総取りでは
赤尾先生の障がいを差し引いても白石先生が不憫過ぎる。
赤尾先生の教育方針が明らかにぐらついているのも気になる。
運動会でのかけっこではひとりカッカと盛り上がり
「みんな本当は1番を穫りたいはずだ!」と猛特訓を強いたかと思えば
ダウン症の姉を持つ女生徒を慰めるシーンでは
「私は○○は苦手ですが、●●は得意です」と書かれたプリントを配り
生徒ひとりずつに発表させた後、金子みすゞの詩集から引用した
「みんなちがって、みんないい」で〆るのである。
「みんなちがって、みんないい」なら、かけっこがビリでも構わんだろう。
他に得意なことがあればそれでいいはずだ。
乙武氏が大変な苦労をして現在のポジションまで上り詰めたことは
素直に尊敬するが、この映画は駄目だ。
ノンフィクションにしては嘘臭過ぎるし、フィクションとしても脚本がなっていない。
善意も悪意も人並み以上に受けてきたであろう乙武氏だからこそ
綺麗事で終わらない、リアルな人間ドラマを見せて欲しかった。
映画「だいじょうぶ3組」は23日より公開。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:だいじょうぶ3組
配給:東宝
公開日:2013年3月23日
監督:廣木隆一
出演者:国分太一、乙武洋匡、他
公式サイト:http://daijyobu-3.com/
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発売中■CD:「だいじょうぶ3組 OST / 世武裕子」
本作で唯一光っていたのが音楽。
本作をきっかけにして、映画やドラマからの依頼が多数舞い込む予感。
ゲームやアニメ系との相性も良さそう。今後要注目。

発売中■Blu-ray:「最強のふたりコレクターズエディション」
発売中■Blu-ray:「ソウル・サーファー」
発売中■Blu-ray:「海洋天堂」
ストーリーは異なるのだが、近いコンセプトの作品を3本ほど。
製作国もフランス、アメリカ、中国とバラバラで、それぞれに考えさせられる秀作ばかり。