▼ゲーマーの期待を打ち砕く凡作。映画「シュガー・ラッシュ」
普段はそれほどディズニー作品に注目しないゲーマー層からも
熱い視線を集めているのが、23日公開の映画「シュガー・ラッシュ」である。
監督・脚本は「ザ・シンプソンズ」などを手掛けてきたリッチ・ムーア。
主人公ラルフの声には 「シカゴ」「おとなのけんか」のジョン・C・ライリー。
ヒロイン・ヴァネロペには「テイク・ディス・ワルツ」のサラ・シルヴァーマン。
日本語吹き替え版ではラルフを山寺宏一、ヴァペロペは諸星すみれが担当する。
ここは閉店後のゲームセンター。
仕事を終えたキャラクター達にとって憩いの時間の始まりだ。
しかし、30年間愛され続けたロングセラータイトルで悪役を演じてきた
ラルフの我慢は限界に達しようとしていた。
実は心優しいラルフは、常にヒーローの邪魔をして
最後にはやっつけられるだけの毎日にホトホト嫌気がさしていたのである。
「自分だってみんなに愛されるヒーローになりたい」
ある日の朝、ついに仕事を放棄して自分のゲームを飛び出してしまったラルフは
お菓子で作られた国を舞台にしたレースゲーム
「シュガー・ラッシュ」の世界に迷い込む。
そこでラルフは、ひとりの少女ヴァネロペと出会う。
ゲームセンターで30年間稼働し続けているゲームの悪役が
「俺だってたまにはヒーロー役をやりたいよ」とボヤく設定と聞けば
小銭を握りしめた小僧がアップライト筐体の周りに群がり
ワイワイガヤガヤ言いながら順番待ちをしていた世代ど真ん中の私としてはグッとくる。
「ドンキーコングJr.」で悪役経験もあるマリオが今や世界的なヒーローとして
活躍する姿を遠くから眺めながら、ポストマリオを夢見る悪役キャラクターが
他にもいるに違いない。本作のスタート地点はおそらくそこだろう。
では、本作はクラシックゲームに対してのオマージュが満載なのかというと
残念ながらそれほどでも無かったりする。
プロモーションで大々的に使用されている
「日本のゲームキャラが大量に登場」に関しても
序盤に悪役キャラクター達がグループセラピーをする場面があり
そこでひと山ナンボでワンカットずつ登場するぐらいのもので
キャラクター個々に見せ場があるような、いわゆるゲスト扱いではない。
パックマンやクッパが登場するシーンは、時間にして数分といったところ。
その数分すら、プロモーションの一環でYouTubeで公開されているのだから
ジジィゲーマーが歓喜するようなシーンは、もう本編にはほとんど残されていない。
あるとすれば、Qバートに何箇所か美味しい場面があるぐらいか。
「なんで今のゲームはこんなに殺伐としてしまったんだ」とぼやく台詞に
共感はするものの、レトロゲー満載のディズニー映画として捉えていると
その期待は少なからず裏切られることになる。
では何が足りなかったのか。
まずひとつ目は、これだけ多くのキャラクターを登場させていながら
「悪役=現状に不満=不幸せ」「ヒーロー=現状に満足=幸せ」の
2パターンでしか描かれていないこと。
悪役全員が等しく現状を嘆いている姿を見ると
「せめてベガぐらいは胸を張って悪役でいてくれ」と思ってしまう。
ふたつ目は、ゲームをプレイする遊び手との関係が描かれていないこと。
全ての出来事がモニターの内側だけで展開するのは
ビデオゲームの世界が舞台なのだから仕方ないにしても
何十年間も愛され続けた人気タイトルであれば
悪役を演じてきたラルフにも多くのファンがついていたはず。
モニターを覗き込む子ども達の笑顔が、ラルフには一切見えていなかったのだろうか。
例えば、小学生時代にラルフの登場するゲームにハマっていた子どもが
結婚して子どもと一緒にゲームセンターを訪れ
「パパの大好きなゲームなんだ」と話しかける。
そんな時間の経過が盛り込まれていれば、印象は全く違っていたように思う。
残念ながら本作は、ビデオゲーム版の「トイ・ストーリー」には成り得なかった。
ここまで書いておいて何だが、ではつまらない映画なのかと言われるとそうでもない。
可愛らしいキャラクターと美味しそうなスイーツを山のように使った
女児向け・ファミリー向け作品として見ればそこそこ楽しめる。
あくまでも私が勝手に期待し過ぎたのだ。
「まるでジジィゲーマーのためのような作品だ!」と。
最初から「ティンカー・ベル」と「カーズ」(「マリオカート」でも可)をミックスさせ
低年齢向けの「美女と野獣」風に仕上げた作品だと思っていれば
これほどの温度差に戸惑うこともなかったに違いない。
というわけで結論。
いつものディズニー作品で充分ならそこそこお勧め。
「マリオカート」大好きキッズは後半大興奮間違いなし。
ジジィゲーマーは、膨らみきった期待を半分ぐらいまで萎めておくと吉。
映画「シュガー・ラッシュ」は23日より公開。
同時上映の「紙ひこうき」。
既にYouTubeで本編が公開されているのだが、これが実に素晴らしい。
今年のオスカーで「シュガー・ラッシュ」が長編アニメーション賞を逃し、
本作が短編アニメ賞を受賞したのも頷ける。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:シュガー・ラッシュ
配給:ディズニー
公開日:2013年3月23日
監督:リッチ・ムーア
出演者:ジョン・C・ライリー/山寺宏一、他
公式サイト:http://www.disney.co.jp/sugar-rush/
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やはり「トイ・ストーリー」と「Mr.インクレディブル」だな。